SHARE 春日琢磨建築設計事務所による”高須の家”
photo©坂下智広
春日琢磨建築設計事務所が設計した広島の住宅”高須の家”です。
以下、建築家によるテキストです。
広島市内の山裾を走るバイパス沿いに建つ、夫婦と子供一人の為の専用住宅である。
敷地は急な坂道に寄り添う雛壇状の造成地にあり、4mを超す石積みの基壇を持つ。
施主からは、2台分の駐車スペースと庭のほかに、みんなが明るく楽しく生活できる空間と、月に数度の仏壇を中心とした大人数の集まりに対応すること、玄関に隣接した衣装室、そして予算が非常に限られている旨が伝えられた。
がけ条例などの諸条件とコストバランスを考慮し、敷地北側に2台分の駐車スペース、南側にささやかな庭、他は既存の石垣を避け杭が打てる最小の空きを残して、4間×5間の矩形の平面計画とした。その限られた面積の中に、各空間をコンパクトかつ相互的に関係性を持つ構成とすることで、豊かな住環境をつくり出すことを考えた。
平面のほぼ半分を庭に面した大きな吹抜けとし、畳の間・ダイニング・キッチンを連続して配置した。間口いっぱいに設けた開口部は、庭との繋がりを強め互いの狭さを補完する。畳の間は、1階レベルより400mm高くし上階と近づけることにより、上下階の空間の親密さを強めた。このレベル差をダイニングでは座面としても利用し、吹抜け全体を普段はリビング、人が集まった時は仏事の空間、仏事が終わった後にはそのまま宴会の空間へと、かつての民家にあった包容力ある空間としている。
玄関から洗面・浴室、さらにキッチンまでつながる1階北側の衣装室と、天井高や色彩による変化を持たせた2階の諸室は、吹抜けを介して他の部屋と互いに補完し合いながら成り立たせている。
生活の中心の畳の間とそれを取り巻く諸室は、視界の抜けや互いが補いながら成立するという相互的な空間構成により、狭いながらも広がりと奥行きの感じられる、豊かな住環境をつくり出せたと思っている。