SHARE 佐々木夕介+関口聡美 / glによる”ライクの部屋”
以下、建築家によるテキストです。
ライクの部屋
改修前に初めてこの部屋にお邪魔したとき、ひとつひとつの部屋は狭くはないのに、なぜか不自由な感じがしました。それは、住人の持ち物である冬靴や夏靴、自転車やキャンプ道具、ポータブルストーブなど、部屋中に置かれた様々な物に居場所がなくて、ただ雑然とした印象があったからだと思います。せっかく広い部屋に住んでいるのに、その広さが逆に生活を間延びさせていました。
そこで、ローコストの計画でもあったため、まず部屋全体を1枚の壁で2つに分けて土間の場とフローリングの場をつくり、なんとなく持ち物に居場所を与えてあげました。土間は、床や天井を剥がして躯体を現し、自転車や植木鉢などを置いて庭のように使えるスペースとし、残りのフローリングの部分は、靴を脱いで床でごろごろとリラックスできるスペースとしました。設計はそれで終わりです。
住人は楽しそうに暮らしています。土間にキャンプ用の椅子などを置いてわいわいと鍋パーティーをしたり、朝の光の中で本を読んだり。冬はフローリングの上で編み物や読書などをしているようです。気積を小さくするために壁の開口部にカーテンを掛けようか、なんてことも言っていました。
この部屋はもともと、日本中どこにでもありそうな普通の集合住宅の一室だったのですが、壁を立てて2つの場所をつくるだけで、様々な季節を楽しみながら生活することが出来ます。あえて外気温に近い土間のような場所を室内につくることで、季節の変化を感じながら暮らす。住人の持ち物にヒントを得ながら、土間という新しい場所の良さを見つけ出し、住み手自身が新たな日常を描く楽しさを感じられる部屋を目指しました。