SHARE STA土屋辰之助アトリエによる、神奈川・川崎市の「桐光学園 アップコート棟」
STA土屋辰之助アトリエが設計した、神奈川・川崎市の「桐光学園 アップコート棟」です。
2018年に40周年を迎えた神奈川県川崎市の私立桐光学園の屋根付きアップコートの設計である。
学園40周年の記念事業として新たなメイングラウンドを整備、これまでメイングラウンドとして使用されてきたグラウンドを人工芝化し本格的なサッカー場として整備すると同時にプールを新たなメイングラウンドに附設するため、既存プールの敷地をサッカー場のアップコートの役割をもった屋根付きの空間とすることで大小のスポーツ空間が連携して配置されると共に、学園全体にとっての屋根付き広場として更なる活気を生み出す場を創出することが出来た。
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以下、建築家によるテキストです。
学園の新たな中心となる屋根付き広場と全体で支え合う構造フレーム
2018年に40周年を迎えた神奈川県川崎市の私立桐光学園の屋根付きアップコートの設計である。
学園40周年の記念事業として新たなメイングラウンドを整備、これまでメイングラウンドとして使用されてきたグラウンドを人工芝化し本格的なサッカー場として整備すると同時にプールを新たなメイングラウンドに附設するため、既存プールの敷地をサッカー場のアップコートの役割をもった屋根付きの空間とすることで大小のスポーツ空間が連携して配置されると共に、学園全体にとっての屋根付き広場として更なる活気を生み出す場を創出することが出来た。
アップコートの空間は法的な条件と既存建物に隣接している配置から、一旦高く弧を描きつつ道路に向かって四分円に近い曲線で着地する屋根の形状とした。スポーツ空間としては珍しいアシンメトリーな断面形状であるが、単なるスポーツ施設ではない、既存の建物外壁を半内部化して取り込んだ都市的な半屋外広場としてキャンパス空間と風景に多様性を生み出している。
設計は主に模型と3Dで進行し、鉄骨による様々な構造フレームの形状をスタディした結果、メンテナンス性から塗装ではなく溶融亜鉛めっきを採用したことによるジョイントの特性、既存キャンパスの中心である複数の中庭広場に続く、新たな中心としての屋根のある広場として、またキャンパスへのメインアクセス道路であるY字路に位置するというシンボル性の高さから、特徴ある、短い部材と多数のピンジョイントにより接合され、組み上がった全体で支え合い成立する構造フレームを採用した。
「次世代の新たなリーダー、真の人格者を育成する」教育を目指し、ひとりひとりが活躍し、学園全体をつくりあげている本学を象徴するようなデザインとなったのではないだろうか。
(土屋辰之助)
以下は、構造家によるテキストです。
すべての継手をピンジョイントとして成立可能なレシプロカル構造
既存の部室棟に寄り添うように配置されており、部室棟側は垂直にカットされ、反対側はなだらかな弧を描きながら前面道路に向かって降りていく、四分円状の断面を持つ鉄骨屋根架構である。
断面形状は着地位置、柱位置、既存部室棟へのオーバーハングと離隔距離、最高高さ、球技上の必要高さ、水上となる頂部への節点配置など複数の条件を満たしながら、部材形状の種類を最小限に抑えるよう2心円で定義している。
軽量で透光性のある膜構造を支持する、シングルレイヤーからなるこの鉄骨屋根フレームを、部室棟側に配置され、方杖を併用した3本の鋼管柱が支持している。
半屋外であることから防錆には溶融亜鉛メッキ処理を選んだ。この場合、剛接合の継手に溶接を用いるとその部分のメッキがはがれてしまうため、一般的には高力ボルト継手が用いられるが、鋼管継手のもつボリュームと存在感はとても許容できない。そこですべての継手をピンジョイントで成立させることが可能な、レシプロカル構造を採用した。
面外に対しては互助的に部材が働き、面内に対しては大局的に成立するトラスが水平剛性を付与している。
必然的に増えてしまう接合部は、全体に馴染むよう最小限の奥行きに抑えつつ、ガセット幅を鋼管断面にそろえている。逆に言えば、接合部寸法から鋼管部材断面とその全体配置密度が決められている。
(萩生田秀之・濱野友徳)
■建築概要
建物名称:桐光学園 アップコート棟
所在地:神奈川県川崎市
主要用途:中学校および高等学校
建築主:学校法人 桐光学園
設計・監理
建築・設備 STA土屋辰之助アトリエ
担当者名:土屋辰之助 寺岡克子 小西光樹 山﨑朋哉
構造 KAP
担当者名:萩生田秀之 濱野友徳
照明計画 LightingM
担当者名:森秀人 江越充
施工
建築 鹿島・北島共同企業体
担当者名:今井宏卓 岩崎貴博
設備 新菱冷熱工業 横浜支店
担当者名:八木務 松野幸夫
敷地面積:16,091.86㎡
建築面積:729.43㎡
延床面積:729.43㎡
構造・規模:S造、地上1階
最高高さ:11.32m
地域地区 市街化調整区域、宅地造成工事規制区域、法第22条による区域
設計期間 2016年 6月〜 2017年12月
工事期間 2018年 4月〜 2018年 9月
主な外部仕上げ
屋根 膜屋根 酸化チタン光触媒コーテイング 構造体:スチール製溶融亜鉛めっき
外壁(外構立ち上がり)コンクリート化粧打放し
外構 コート部:複合弾性舗装 他:コンクリート舗装、緑化ブロック敷、タイル貼(階段)
外部スクリーン(既存部室棟改修) フレーム:スチール製溶融亜鉛めっき、スクリーン:有孔折板
撮影:小川重雄
※印撮影:STA