稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐 / Eureka(建築)と山田裕貴+山本良太 / Tetor(土木景観)が設計した、岡山・奈義町のバス待合所+観光案内所「奈義町多世代交流広場 ナギテラス」です。
町は、北に象徴的な那岐山が聳え、南へ緩やかに傾斜する土地にはため池が無数に点在する。ナギテラスは、移りゆく自然風景と鮮やかに出会い、多世代が思い思いに過ごす小さな居場所の集合だ。
町役場前、国道に沿った敷地は、公共交通の要であるバスの待合や観光案内を核として、町の新しい交通・交流の拠点となる.テナントが誘致され、町内での起業サポートを行う「まちの営業部」の運営も計画されており、小商いが段階的に実践される。
設計に先立ち,グランドデザインでは,町民ワークショップと並行し,町の歴史・過去を知る手がかりとして,古地図や風景写真をリサーチした.かつてため池は,農業の共同利用によって保たれ,暮らしの傍にある美しいコモンズであったと知った.ナギテラスを敷地東の市場池へ沿う配置とし,ため池を景観要素としてあらわにした.加えてスロープを池へのプロムナードとした.これは本プロジェクトの特質である,土木景観・建築の一気通貫した共同による.人々が屋外に佇み,池が暮らしと溶け合う風景が,町の日常を映し出す新たなランドスケープとなる.
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以下、建築家によるテキストです。
小さな拠点が育むライフスケープ
町は、北に象徴的な那岐山が聳え、南へ緩やかに傾斜する土地にはため池が無数に点在する。ナギテラスは、移りゆく自然風景と鮮やかに出会い、多世代が思い思いに過ごす小さな居場所の集合だ。
町役場前、国道に沿った敷地は、公共交通の要であるバスの待合や観光案内を核として、町の新しい交通・交流の拠点となる.テナントが誘致され、町内での起業サポートを行う「まちの営業部」の運営も計画されており、小商いが段階的に実践される。
設計に先立ち,グランドデザインでは,町民ワークショップと並行し,町の歴史・過去を知る手がかりとして,古地図や風景写真をリサーチした.かつてため池は,農業の共同利用によって保たれ,暮らしの傍にある美しいコモンズであったと知った.ナギテラスを敷地東の市場池へ沿う配置とし,ため池を景観要素としてあらわにした.加えてスロープを池へのプロムナードとした.これは本プロジェクトの特質である,土木景観・建築の一気通貫した共同による.人々が屋外に佇み,池が暮らしと溶け合う風景が,町の日常を映し出す新たなランドスケープとなる.
地域に応答する土着的なカタチ
小さな3つの棟が連なるこの木造建築は,各棟へ斜めに渡るLVL集成材の母屋梁が,町の景観要素とナギテラスを結ぶ多方向性を持ち,室内から屋外,町へと来訪者の意識を促す.分割され,傾き,仕上げの切り替わる屋根は,山並みや家々と呼応し,池へ映り込むシルエットと共に,有機的に環境へ溶けていく. 一方,広戸風と言われる局地突風に対しての懸念が強いため,風に耐え得る構造・環境計画としながら,準ずるようにエントランスや開口,下庇や雨戸,外壁仕上げ等を設計した.これらは須く求められる地域らしさを,自然環境,気候変動や災害との柔軟な関係に見出す試みだ.
波及する包摂型のパブリックスペース
町の中心エリアには,様々な場所の相互連携を図るため,歩行回遊路を見出した.町がひとつのエコミュージアムとなることを目指し,そのコアとしてナギテラスを位置づけた.テラスやスロープなどの開放性は,回遊路に沿って町へ波及していく. 計画のプロセスより,町民が各々主体的に関わり,愛着を育むことができる機会を組み込んできた.竣工以前のワークショップから,メンテナンスまで断続的な関わりを仕立てるものである.一過性の行事から,フィジカルな設えにまで,多角的なアクセシビリティを高めることが,公共空間の重要な質であると考えた.
■建築概要
奈義町多世代交流広場 ナギテラス
設計:Eureka(建築)+ Tetor(土木景観)
所在地:岡山県勝田郡奈義町
用途:バス待合所+観光案内所
構造:木造
規模:地上2階建
敷地面積:1,959.84m²
床面積:263.87m²(屋外空間を除く)
竣工:2018年3 月(第1期・建築工事) 、2019年3月(第2期・土木景観工事)