SHARE ピークスタジオ 一級建築士事務所による、兵庫・神戸市の賃貸住宅「誰かのための家」
ピークスタジオ 一級建築士事務所が設計した、兵庫・神戸市の賃貸住宅「誰かのための家」です。
神戸市六甲の閑静な住宅街に建つ一戸建て賃貸住宅の計画である.
通常、一戸建ての住宅であれば住み手の個性やライフスタイルが反映されることが多いが、 まだ見ぬ「誰か」のために設計する時、どういう手法が考えられるだろうか.
ペルソナをたてて、仮想の住人を設定することできるが、多くの人にとって心地よく、しかしアレンジや使い方次第でその家族固有の暮らしを形作れる様な、そんな作り方は考えられないだろうか. 例えば、多くの人が心地よいと感じる木陰を用意することは、ある家族が木陰でピクニックをするきっかけになるのではないか.
そういう、住み手が場所を探しアレンジしていけるような、心地良さのランドスケープをつくりたいと思った.
手始めに、約1200件への戸建て住宅への調査結果* をもとに心地良さをもたらす内容を分析することからはじめた.
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以下、建築家によるテキストです。
神戸市六甲の閑静な住宅街に建つ一戸建て賃貸住宅の計画である.
通常、一戸建ての住宅であれば住み手の個性やライフスタイルが反映されることが多いが、 まだ見ぬ「誰か」のために設計する時、どういう手法が考えられるだろうか.
ペルソナをたてて、仮想の住人を設定することできるが、多くの人にとって心地よく、しかしアレンジや使い方次第でその家族固有の暮らしを形作れる様な、そんな作り方は考えられないだろうか. 例えば、多くの人が心地よいと感じる木陰を用意することは、ある家族が木陰でピクニックをするきっかけになるのではないか.
そういう、住み手が場所を探しアレンジしていけるような、心地良さのランドスケープをつくりたいと思った.
手始めに、約1200件への戸建て住宅への調査結果* をもとに心地良さをもたらす内容を分析することからはじめた. 居心地良いと感じた光景に関する自由記述の分析より、103種の心地良さをもたらす内容**があることがわかっていたが、これらを分類していくことで大きく二つの領域がみえてきた. ひとつは予想していたことだが、外部環境からの影響であり、「陽・風・光を感じる」「季節・自然を感じる」などに現れる. もうひとつは、「家族への愛情を感じる」や「穏やかな気持ち」といった心的状況である. これらふたつを満たす計画をすればよいわけだが、外部環境を取り込むデザインはともかく、 住まい手の心的状況をデザインすることは容易くはない.
人はどういう時、「家族への愛情を感じる」のか. ここで、前述の調査による自由記述に戻って、描かれた光景をみていく. そこには住まい手が家族への愛情を感じた膨大なシーンがある. これらひとつひとつを記述し、そういった状況や行為が可能となる場をつくっていけばよいのではないか. そして、それは外部環境を感じることができる窓際と絡めて設えるといいかもしれない.
具体的には、外部環境を取り込む計画とすべく、一般的な南面配置とはせず、建物の東に空地をとり 南北に長い七間×二間の長方形平面で建てることで採光面を広くとる配置とし、その採光面に沿って、様々な生活のシーンが描けるような居場所を窓際に配置していった.
窓際の居場所は、コーナーベンチ付きの出窓であったり、出窓とセットになったアルコーブであったり、 空に開けたベンチだったり、光が入る明るい土間であったりする. 多くの暮らしのシーンによって紡ぎ出されたこれらの居場所は、新たな住まい手に対しても柔軟に対応しつつ、 個性ある暮らしのきっかけとなるのではないか.
*2011年住宅メーカーAによる調査
**『戸建住宅における心地よさの居住後評価』その1-4 日本建築学会大会梗概集
■建築概要
企画:株式会社W
設計・監理:ピークスタジオ 一級建築士事務所
構造設計:Graph Studio
施工:株式会社伊田工務店
協力:旭化成ホームズ株式会社
竣工:2019年9月
敷地面積:114.31㎡
建築面積:47.20㎡
延べ床面積:91.91㎡
場所:神戸市灘区
写真:田中克昌