SHARE 矢野寿洋+青山えり子 / 矢野青山建築設計事務所による、愛媛・新居浜市のカーディーラー「J.spot新居浜」
矢野寿洋+青山えり子 / 矢野青山建築設計事務所が設計した、愛媛・新居浜市のカーディーラー「J.spot新居浜」です。
既存店舗を調査すると、多くの店舗で大空間の中に衝立やポップが多数配置され雑然としていた。スタッフや通行者と目が合って落ち着かないという声からそのようにしていると分かった。私達は、『居心地のよい場所=他の人と視線は交錯しないが視線の抜けが確保された場所』という仮説をたて、複数のレベルの屋根スラブの下に高低差のある敷地の地形を活かしたスキップフロアを設け、お互いに視線が交錯せずに視線の抜ける様々な居場所を全部で22か所設けた。各場所から何が見えて誰から見られるかを検討し、視線の抜け具合を県産木材や地元の和紙を用いて微細に調整した。
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以下、建築家によるテキストです。
「居心地がよく立ち寄りやすい店舗をつくりたい」とクライアントから要望があった。
既存店舗を調査すると、多くの店舗で大空間の中に衝立やポップが多数配置され雑然としていた。スタッフや通行者と目が合って落ち着かないという声からそのようにしていると分かった。私達は、『居心地のよい場所=他の人と視線は交錯しないが視線の抜けが確保された場所』という仮説をたて、複数のレベルの屋根スラブの下に高低差のある敷地の地形を活かしたスキップフロアを設け、お互いに視線が交錯せずに視線の抜ける様々な居場所を全部で22か所設けた。各場所から何が見えて誰から見られるかを検討し、視線の抜け具合を県産木材や地元の和紙を用いて微細に調整した。
もう一つの立ち寄りやすさという課題に対して、店舗と車の魅力を来店者と通行者にPRすることを考えた。
来店者には、多様な居場所を体験し、多様な角度から展示車を眺めてもらいたいと考えた。入口から屋外展示場へつながるメインの軸と、ラウンジや整備工場を通り抜ける軸の15度のずれを利用して、多様な利用者を引き寄せる情報コーナーとキッズスペースという場を中心に2つの回遊動線を設けることで、自然と立体的に店内を見て回れるようにした。引戸を閉じることで情報コーナー周りの一部を納車スペースとして活用できるように工夫している。
通行者に対しては、ロードサイド店舗に多い大きな看板で目立つのではなく、景観に配慮しながら、建物と展示車をPRすることを考えた。雁行配置された多様な屋根スラブとファサードが、個性的で遊び心のあるイメージのネッツブランドを体現し、道路より約1m上がった床レベルに展示された車両とあわせ、人目を引くように計画した。
カーディーラーという慣習化された用途の建物でも、丁寧に地形や利用者の行動を分析し再構成することで、地域性をもった商業用途の『居心地のよい場所』をつくることができた。
■建築概要
J.spot新居浜
所在地:愛媛県新居浜市国領1丁目甲1799-4
敷地面積:3981.32 ㎡ 延床面積:2026.92 ㎡ 構造:S造 2階建て 最高高さ:8.3m
建築主:ネッツトヨタ愛媛株式会社
設計監理:矢野青山建築設計事務所 矢野寿洋 青山えり子
構造:平岩構造計画 平岩良之
機械・衛生:comodo設備計画 山下直久 上野詩織
電気:設備設計 桜組 小宅武尊
施工:株式会社トライアル
竣工:2019年12月