渡辺隆建築設計事務所が設計した、静岡・磐田市のスポーツ施設「磐田市卓球場ラリーナ」です。
渡辺は磐田市を拠点に活動し、「豊岡中央交流センター(2016年)」「磐田市北部地域包括支援センター(2014年)」などを設計しており、入札制度の中でクオリティの高い建築物をつくろうとする試みでも知られています。施設の公式ページはこちら。
「ラリーナ」は、かぶと塚公園という磐田の中心に位置する運動公園の中の移転したテニスコート跡地に建設された卓球専用のアリーナです(かぶと塚公園は5世紀頃に築造された古墳を中心にジョギングコース・総合屋内運動場・ソフトボール場・陸上競技場・弓道場などがある緑豊かな運動公園です)。
磐田市にはプロのサッカーやラグビーのチームの本拠地があり、卓球では世界の第一線で活躍している水谷隼選手や伊藤美誠選手を輩出するなど、スポーツが身近であり盛んな地域です。
このプロジェクトは、磐田ならではのアリーナの建設によって、テニスコートが移転し少し寂れてしまっていた公園の一角の再生、古墳の森の豊かさの再発見、市民の生涯スポーツやコミュニケーションの推進、スポーツのまち・卓球のまち磐田のアピールなどを実現することを目的として進められました。
<入札による公共建築>
このプロジェクトは、「豊岡中央交流センター」と同じく入札によって発注されたものです。入札はクリエイティブな設計業務の委託の仕方としては合わない面もありますが、現在も公共事業の中でも最も多い設計業者選定方式であるのも事実です。より多くのコンペやプロポーザルの開催を働きかけることも大切ですが、私たちは日々淡々と発注され、立ち上がっていく保守的な名もなき公共建築を少しでも良いものにできたらと入札案件にも継続的に取り組んでいます。
「ラリーナ」のシンプルな門型フレームによる木造、棟部だけを曲面としたシームレスな屋根は、特殊なメーカーや特殊な加工を必要とせず、外装材やサッシも既製品、仕上げ材の種類もかなり少なくして、コストや工期を行政側が想定している平均的な範囲に収めています。その設計行為は行政の担当者や施工者がある程度理解しやすい、または慣れた手続きや技術の範疇を少しだけ広げるような感覚です。
こうした手法による公共建築事例を徐々に街の中に増やしていくことによって、緩やかで穏やかな影響を、他の公共プロジェクトにも及ぼしていくことができたらと考えています。