古谷誠章+NASCAが設計した、徳島・板野郡の、幹線道路沿いの医療施設「こうのINRクリニック」です。施設の公式ページはこちら。
吉野川沿いの藍の産地として知られる徳島市藍住、徳島自動車道藍住インターに通じる幹線道路沿いに新設された内科・脳神経外科・整形外科・リハビリテーション科を統合的に診療するクリニック、および併設される薬局のための一棟の建築である。
通常は薬事法上の規定によりクリニックと経営者の異なる院外薬局は別棟とすることが多いが、ここでは患者の利便性を考慮して、まったく独立したエントランスを持ちながら、庇下でつながっており、雨天時にもスムーズに行き来できるようにしている。
クリニック側では前面のガラス面が薬局側の出口に向かって次第に狭まっており、これに沿って構造アーチが斜めにずれていくため、薬局側から奥のリハビリスペース方向を見ると、逆パースペクティブの効果が出て全体の奥行きが実際より縮まって見えて親近感があり、反対にリハビリスペース側から見返すとパースペクティブが強調されて、診察ゾーンやエントランスゾーンからは離れた感じが出て落ち着いて療法に取り組めるように配慮されている。
構造計画はシンプルなワンスパン構造の繰り返しによっており、そのアーチ材は芯材を厚さ28mmの鉄板とし、柱との接合部には斜めの方杖の成分を包含するようなアーチ形状が与えられている。鉄板の両側をそれぞれ厚さ28mmのLVL材でサンドイッチして、鉄板部分の座屈防止の役割を持たせた。X軸方向前面の耐震壁は一箇所に集約し、同時に大きく張り出した庇部分の荷重を支えている。