Atelier Tsuyoshi Tane Architects+NTTファシリティーズ(ミュージアム棟設計統括)+スターツCAM(カフェ・ショップ棟設計統括)による、青森の「弘前れんが倉庫美術館」です。施設の公式サイトはこちら。また本建築は2021年度フランス国外建築賞グランプリ(AFEX Grand Prix)を受賞しています
明治時代に建てられた弘前の煉瓦倉庫を改修し現代アートの美術館をつくるプロジェクトである。
弘前市吉野町の煉瓦倉庫群は、日本で初めて大々的にシードル(りんご酒)工場として長年この街の風景を支えてきた。厳しい雪国の中で、独自に煉瓦を開発してつくった煉瓦倉庫群は増築や改築を繰り返しながら、そのほとんどはすでに解体され時代とともに失われた。
国内では近代文化遺産を保存だけでなく、現代文化として積極的に活用するような事例はまだ数少なく、大半は「古さ」を理由に取り壊される。国内では煉瓦造りによる建築は二度とつくられることのない貴重な建築の系譜であり、壊してはならない文化遺産でもある。一方、古い建物の改修とは直すことが目的ではない。建物の歴史性や再現不可能性を検証し、その建築の尊厳と可能性を知ることから設計が始まる。
この煉瓦建築の「記憶の継承」を目的としていくために、あらゆる場所で煉瓦を多用し尽くして改修を行う現代煉瓦建築とした。また屋根は日本初のシードル工場にちなんでチタンによる「シードル・ゴールド」にすることにより新たな文化施設として未来の風景を映し出す。内部空間においては、倉庫がもつ大らかな空間を最大限活かすように、既存の床を抜き、耐震補強を行いながら、サイトスペシフィックとタイムスペシフィックをコンセプトとした現代アートと対峙する空間をつくった。