元木大輔 / DDAA LABによる、展覧会「Belt Furniture」の会場写真とレポートです。加工したアクリル板等をトラックの荷台などに使われるラッシングベルトで締めるだけで固定されている家具のシリーズが公開されています。会期は2021年6月27日12時~19時まで。会場は東京・中目黒の「happa」です。また、これらの作品は実際に購入も可能。
こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート
東京・中目黒のスペース「happa」にて、元木大輔 / DDAA LABによる展覧会「ベルトファニチャー展」が行われている。
元木は様々な一般的には建築に使われることがないようなマテリアルを見出し、それを建築に組み込むことでアイデアあふれる印象的な作品を発表してきた建築家だ。今回の展覧会で公開されているのは「トラックの荷台などに使われるラッシングベルトで締めるだけで固定されている家具のシリーズ」である。
具体的には、20mm厚の透明アクリル板を相欠きし、組み合わせた上でベルトで固定することで使用できるようにデザインされている。実用性の側面を見れば、組み立て分解が容易で誰にでも出来ることがあげられるが、そのような実用性だけではない元木の美学が詰め込まれた作品だと言える。透明なアクリルは視線を透過すると同時に周囲の景色を映しこむ。そこに元木によって見出された黒色のベルトと固定用のパーツが組み合わされることで、非常に引き締まった印象を与える。
このベルトと固定パーツは実際には同様の機能を果たす製品はかなりの数が存在し、その中からこの製品が選ばれているのだそうだ。完全にオリジナルなもの製作するという手法はもちろんあると思うが、これらの作品を見ていると、すでに世の中に無数にあるものから探し出し、組み合わせることにもオリジナリティが宿るということが分かる。
会場にいた元木と話していて印象的だったのは「特別な技術を必要としないつくりかたに興味がある」という趣旨の発言だった。建築とは違い量産の側面のあるプロダクトを構想する際に、その視点は実利的なメリットもあるように思う。しかし、ここに展示され5つの作品をぐるぐると歩きながら見ていて気づいたのは、制作における技術が特別ではないからこそ、元木のアイデアと美学がダイレクトに表れているのではないか、ということであった。
このSNS時代においては、瞬時にその凄さが把握できるような、技巧的な作品が注目を集めやすい傾向があるように思う。ただ、そのような作品においては、作品に込められた思想や視点ではなく、本来はそれを表現するためにある「技巧」のみが注目されてしまう状況とも言える。そんな現代において、建築家がとるべきアプローチを、元木がこの作品で提示しているようにも思える。
建築家は基本的に自身の手で作品を作らない。そのアイデアや構想を図面に託し制作者に依頼する。このようなプロセスの中で、建築家の構想したアイデアや美学を最大化して伝える方法の答えのひとつを垣間見たような気がした。