藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto

藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポートです。“雲”にインスパイアされた建築が、見る人に様々な感覚を呼び起こす建築となっています。“パビリオン・トウキョウ2021”の一環として制作された作品です。作品の設置場所はこちら(Google Map)(このパヴィリオンのみ同じものが高輪ゲートウェイ駅改札内にも展示されています)。開催期間は2021年9月5日(日)まで。

こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート

藤本壮介によるパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」の設置場所は、代々木公園パノラマ広場付近。
公園の中ということもあり、植栽に囲まれ遠くからでも眺めることができる。藤本はこのパヴィリオンを「世界中の様々な国や地域や状況の上に浮かぶ『世界の大屋根』のような存在である雲にインスピレーションを受けて、『全ての人のための場所』というコンセプトのもと、多様性と寛容性を象徴する場所として考案」したのだという。

実際にこの作品を眺めてみると、その選ばれた色彩や形状によって藤本が構想する「多様性と寛容性を象徴」という意図も感じられるが、同時に雲をスタート地点として実際に素材や寸法が与えられた作品としての面白さも浮かび上がってくる。

その形態はユニークな形状の風船と言ってもいいように思うが、それが3本の細い棒で支えられているようにも見えるし、浮かび上がらないように地面につなぎ留められているようにも見える。建築をつくるという行為においては重力をどう扱うかということが避けられないことであり、それが構造をどう構想し表現するのかという視点に繋がるのであるが、本パヴィリオンではこの重力と構造の関係が視覚的に揺らぐような感覚を与えている。それがこの建築の面白さのひとつだろう。

また、このパヴィリオンは、置かれた環境の中で、使用されている白い色と素材が、見る角度や天気によっていろいろな表情を見せる。筆者が訪問した当日は、曇り空であったが、パヴィリオンを下からのぞくと、空の色とパヴィリオンの色が同化し境界が曖昧に見えた。逆に遠くから眺めてみると周囲の植栽を背景として、その形状がパキッとして見えたりもする。高輪ゲートウェイ駅改札内での本作品は観覧できていないが、また異なる印象を与えるのだろう。

雲を構想し、象徴として設計されたものであるが、そのスケールと公園の中という立地によって、ぼんやりと機能が想起されたの興味深く思えた。芝生の上ということもあり休憩用の小さな東屋のようにも感じられるのである。

このように色々なインスピレーションを湧き起こさせるのも藤本の緻密な構想によるものだろうか。

藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポート。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室
藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポート。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室 photo©architecturephoto
藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポート。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室 photo©architecturephoto
藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポート。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室 photo©architecturephoto

藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポートです。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室です。“パビリオン・トウキョウ2021”の一環として制作された作品です。作品の設置場所はこちら(Google Map)。開催期間は2021年9月5日(日)まで(※内部に入るには事前予約が必要です)。

こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート

藤森照信が設計したパヴィリオンが設置されているのは東京・渋谷区のビクタースタジオ前。斜向かいには国立競技場がある敷地だ。藤森によるパヴィリオンは「パビリオン・トウキョウ2021」の中で唯一明確に内部空間をつくっている。最も建築物に近いパヴィリオンと言える。

周辺環境の取り扱い方も極めて建築的だ。2階の4帖半の茶室には開口部が設けられており、それは隈研吾らが設計した国立競技場を望むことができる。また上層の茶室部分の外壁には焼杉が使用されるなど、過去の建築の中で確立された藤森建築の言語がこのパヴィリオンでも踏襲されているのも印象的である。明確に藤森の刻印がなされたパヴィリオンだと言えるだろう。

主たる機能である茶室部分に上がるには、まず緑化された壁面に開けられた歪んだ穴から待合に入る。内部は下地材があらわしとなっているのだがこれは、構造形式の正直さではなく表面の素材の効果を優先し建築を作り続けてきた藤森ならではの合理性と言えるだろうか。その待合の角に梯子が設置されており、ここを上ることで茶室に入ることができる。この梯子はにじり口の再解釈なのだそうだ。

その外観のデザインや茶室という用途も、藤森建築においてはお馴染みと言えるものだ。規模は小さいが藤森建築のエッセンスが詰め込まれた建築であり、実際に訪問する価値があるパヴィリオンである。

平田晃久による、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポート。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品
平田晃久による、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポート。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品 photo©architecturephoto
平田晃久による、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポート。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品 photo©architecturephoto
平田晃久による、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポート。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品 photo©architecturephoto

平田晃久が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポートです。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品となっています。“パビリオン・トウキョウ2021”の一環として制作された作品です。作品の設置場所はこちら(Google Map)。開催期間は2021年9月5日(日)まで。

こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート

平田晃久によるパヴィリオン「Global Bowl」の敷地は、東京・渋谷区の国際連合大学前の広場だ。藤原徹平によるパヴィリオンと位置は近いが条件は大きく異なる。平田のパヴィリオンは歩道に面するのではなく、誰もが通過できるからっぽの広場に置かれているという方が印象に近い(この広場は休日にはマーケットなどのイベントに活用されたりもするが、平日は写真のような状態だ)。

歩道に面するような敷地にパヴィリオンを設計した藤原が、明確な形を持たないデザインを採用したことに対し、平田は一見すると巨大なオブジェにも見えるパヴィリオンを設計しているのだが、それはこの広場が敷地であったことが大きいだろう。実際に訪れてみるとそれがよく分かる。端から端までが見通せるこの場所において、明確な形を持っていることは作品の見え方としてメリットが大きいのだ。

離れた場所でも、この形態は特徴的でアイキャッチとなり目に入る。そして歩いていく先の目印としても機能しているように思える。そして実際に近づいてみるとその巨大さは、見る人に驚きを与えるだろう。

このパヴィリオンは、木材を三次元カットして組み合わせる、日本の最新技術をつかい制作されているのだという。鑑賞する対象としても興味深いが、このパヴィリオンは中に入ることが可能で、そこに入ってみるとまた違う感想が生まれる。今まで鑑賞していたものが、内部を伴う建築のように感じられるようになり、ちょうどよい高さの場所に座ってみたり、またいでみたり、のってみたりという行動が促されるのである。

彫刻と建築の違いは、内部空間があるかどうか、というように表現したのはフランク・ゲーリーであるが、平田のパヴィリオンは、その目に見えない境界を行き来することで、その存在が、彫刻であったり、建築であったりと、その意味が入れ替わる存在のように思える。是非この感覚を実際に体験してほしいと思う。

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