奥田晃輔+堀井達也+吉田裕樹 / OHArchitectureが設計した、京都市の、町家を改修した宿泊施設「松原町のホテル」です。既存解体時に京町家の特徴とされる“火袋”を発見、この炊事の煙等を逃がす為の空間を現代生活の視点で解釈し活動の場として再生、過去を受け入れることによる歴史的継承も意図されました。
八坂神社にほど近い京町家を、一棟貸しのホテルとして改修するプロジェクトです。
解体してみるとそこには当時の古い躯体が現れ、京町家の特徴でもある火袋に入る光が、暗い空間を穏やかに照らしていました。しかし、ただそれを呼び起こすのではなく、変わりゆく現代に合った形で、この火袋を「再生」できないかと考えたのです。
玄関から奥に続く土間を通り庭といい、一番奥に炊事場があります。この炊事場で起こる火事の火や、煙を閉じ込めるために作られた吹き抜けが、火袋です。しかし現代では、これらの機能は機械が取って代わるようになり、さらに生活スタイルの変化によって、オープンな活動はほとんどがLDKに集約され、プライベートな活動のみが各部屋に閉じ込められるようになりました。
そのため私たちはこの火袋を、LDKとして現代の解釈で「再生」することにしました。
そこはゲストたちが時間を共有する空間であり、高い吹き抜けは穏やかな自然光を取り込みます。そして同時に、各諸室は障子で覆うように区切ることで、LDKと完全に分断するのではなく、光や音でその気配を感じられるようになりました。