長坂常 / スキーマ建築計画がHyundaiの為にデザインしたモバイルハウス「旅する住まい」をレポートします。自動車の蓄電池から都市生活を持ちだすアイデアを構想、木と布を素材とし出来るだけ軽くつくり、気楽に出かけられる事も意図されました。東京・原宿のHyundai House Harajukuにて展示されています。長坂の展示の会期は2022年3月8日まで(同企画は別の建築家やデザイナー達により2022年5月28日まで続く)。
こちらは会場レポートです
建築家でスキーマ建築計画を主宰する長坂常と自動車メーカーHyundaiとコラボレーションしたモバイルハウス「旅する住まい」が公開中だ。この展示で、長坂はHyundaiのIONIQ 5で牽引するモバイルハウスをデザインした。
長坂は、Hyundai のバッテリー式電気自動車IONIQ 5の特徴である2日分の蓄電池を保有していることが構想の出発点になっているのだと言う。蓄電池があれば、週末に都市生活をそのまま持ちだす事が出来ると考えこの作品を構想したのだ。
そして、会場でも公開されているインタビューで語られているのだが、このモバイルハウスは、木で骨格をつくりナイロンの布地を張り、そこに薄く樹脂を塗布することで出来ている。より詳しく構法について聞くと、木製の骨格に、ナイロンの布地を水に浸透させて骨組みに張り、乾燥すると布地が縮んでピンと張れる水張りという方法を採用しているとのこと。それによって、たわみないが布の特徴でもある光の透過性、柔らかさ、軽さを実現させたのだそうだ。
長坂は、出かけることの気軽さを実現するために、物理的な“軽さ”にもこだわったのだと説明する。
実際にこのモバイルハウスを目の前にしても、非常に軽い構築物と言った印象を覚える。
筆者が、この会場を訪れて実物を見て気づいたことは、このモバイルハウス「旅する住まい」がキャンプにおけるテントとキャンピングカーの中間に位置するような存在であるということだ。テントは折り畳みが出来てコンパクトに持ち運びが可能であるが、「旅する住まい」のような環境から守られている感覚はないだろう。またキャンピングカーには様々な設備が整っているが、「旅する住まい」のような軽さは持ち合わせていない。