藤本章子+村部塁 / farmが設計した、神奈川・相模原市の住宅「光が丘の建替」です。1960年代開発の郊外住宅地で既存の要素踏襲の要望に、記憶継承と新環境創造を意図し文脈の解釈と再構築を実践、2つの庭・ポーチ・隙間空間によって“個-家族-地域”をしなやかに結びます。
敷地は1960年代に宅地開発された郊外住宅地である。
施主は元々あった一軒家を建て替えて、親と子の2世帯のための家を求めた。
既存建物の位置、庭と駐車場の位置、和室の位置、部屋数を保ち、かつ既存樹を残すといった多くの条件が求められたことから、既存家屋の文脈を下敷きに設計を進めた。土地や家屋の記憶を引き継ぎながら新しい環境の器を創造するために、住人によって身体化された環境を紐解き、再構築する必要があると考えた。
まず、奥まった建物配置に対して、敷地外からの人、物、車を迎え入れる硬い仕上げの石庭と、植物が自生する柔らかい仕上げの草庭という2つの庭を定義した。
そして建物と2つの庭、道路を結ぶように大きな東屋のようなポーチを設けた。これを、カーポートが前景化する郊外の街並みに対して、人の居場所のためのガーデンポートと名付けた。ガーデンポートは外部を引き込むように建物を穿ち、そこから建物全体に光や風を導くようにした。
引き継いだ建ち方、アドホックに分節されたボリューム感など、外観は郊外住宅的なる姿を保ちながら、肥大化したポーチ、個室群に重ね合わさるスケールと肌理が異なる隙間空間は住空間に重層性を与える。そして、それらを介して自己から他者、より遠くの外部へ意識がつながることで、かつての家-外部の関係は個-家族-地域をしなやかに結ぶものに更新される。