松井大佑 / Atelier komaが設計した、福岡市の集合住宅「mansion of nude」です。
郊外に位置し法規が厳しく収益化が難しい敷地に計画されました。建築家は、事業を成立させる様々な与件を考慮し、“戸建て”が並ぶ“長屋”の様な“共同住宅”を志向しました。そして、住戸を隣地境界に寄せて“広場の様な”駐車場から直接アクセスよう設計しました。
建主は土地を持て余したまま有効活用を模索していた。
しかしエリアは福岡市の「戸建住環境形成地区」に位置し、建蔽率40%、容積率60%。加えて、敷地は3mを越す築山をもつなど、収益化しにくい土地だった。管理会社と協働し、月極駐車場、売り払って宅地分譲など多方面に検討していくなか、木造賃貸の集合住宅を11世帯つくることに事業性が見込まれた。
事業性を充足させるための計画を左右する与件として、辺鄙な土地柄への付加価値としてペット可の庭付きメゾネット、自家用車必須の土地であることからの戸数分の駐車場、差のない販売方法を促すための同一プラン同一形状、などがあった。
長屋形式が順当にはまったが、長屋では福岡市の条例上、各玄関から道路まで、各出入口から幅員4mの避難経路が必要となってしまい、収益化できない面積が大きくなる。それを建築基準法上の「共同住宅」とすることによって、玄関ではなく「共用廊下の終わり」から幅員4m以上の避難経路として回避できる。
共同住宅はマンションのように専有部 / 共用廊下 / 外部環境がそれぞれ断片的で、敷地面積に対して住み手が専有できる面積は非常に小さい。反対に長屋は共用廊下の概念がなく専有部 / 外部環境が地続きで、戸建の感覚に近い環境が成り立つ。そこで、戸建てが並んでいる長屋のような様相をとりながらも条例上の「共用廊下」を確保し、専有部と外部環境のみで「共用廊下のような場所」をつくることを考えた。