遠野未来建築事務所が設計した、長野市の「OYAKI FARM BY IROHADO」です。
遺跡のある街に建つ郷土料理の工場と店舗の計画です。建築家は、数万年の時間軸の中で“自然と一体となる生命力のある”建築を求め、地域素材と伝統技術を“編み上げる”作り方を実践しました。また、設計と施工の協同も主題とし完成までの過程を重視して完成しました。施設の公式サイトはこちら。
縄文時代から信州に根付く「おやき」の老舗「いろは堂」の新たな展開として長野市の市街地につくられた新工場とカフェ・直売所である。
長野盆地はかつて海の中にあり、約2万年前に人が住み始め針葉樹森が広がっていたという。
敷地は弥生中期の「赤い土器」と環濠遺跡が多く残る地域にありこの建築も数万年という長い時間軸の中で「大地から生まれ大地に還る」「自然と一体となる生命力のある」建築を目指し、「1大地の記憶、2地域の自然素材と技術、3運動・変化・成長、4大地の隆起、5設計と施工の共同」を考慮し県産の製材と現場の工事残土を用い時間と空間、素材、技術を「編み上げ」てつくられた。
「工場・地域」と「店舗・社会」を表す「2つの円」が重なり連動しながら、孤を描く屋根が周囲の山並と共振している。
本棟は杉とヒノキの製材を構造とする約1500m2の木造45分準耐火建築物で、手刻みと燃え代設計による柱梁表しの円弧状の「ホール」とプレカットによる最大スパン10.4mの矩形の「工場」から成り、ホールに円形土器と森の記憶を、トイレ棟・休憩所を含む全体配置に集落の記憶を重ねた。地域の自然素材と技術を生かし伝承するためホールは手刻みの木組と版築・左官の伝統的技術を現代の意匠・技術と組合せて使用し、円弧状に変化する木の柱と方杖は太陽と月の運行に呼応した森と麦穂の運動と成長を示している。