小林一行+樫村芙実 / テレインアーキテクツが設計した、神奈川・川崎市の「かしまだ保育園」です。
幹線道路と緑道に面する敷地に計画されました。建築家は、園の活動や子供の身体寸法から発想し、“8畳間”の空間を複数組み合わせ“風車状”にした保育室を持つ建築を考案しました。また、生活道路に開いた配置は“地域の人々の中で共に育つ”施設が意図されました。
本計画は、川崎市の公立保育園民営化事業である。車通りの多い府中街道と、緑豊かな平間緑道とに挟まれ、消防署や水道局、団地など公営の施設に隣接している。敷地はもともと配水所で、地中に円形の基礎が残置された調圧塔跡地を避け木造2階建てとした。
敷地北側に位置する地域の生活動線でもある平間緑道へは園庭からもアクセスでき、園児の散歩動線として日常的に使われる。大きな落葉樹やベンチのある平間緑道からは園庭で遊ぶ園児の様子や、テラスでの活動、登園降園時の親子の様子も感じられ、園内からは散歩中のお年寄りや他園の子どもの散歩の様子を感じることができる。これまでの歴史を引き継ぎつつ、地域の人々の中でともに育っていく保育園となるような配置計画を目指した。
保育園での活動を紐解く中で、私たちがウガンダの材料寸法から導き出した小さな柱割(3m,4.5m,5m)がここでも有効であると考えた。実際に小さな子どもと長時間対峙してみても、彼らの身体の大きさや床に限りなく近い動き、2間(3,640mm)という寸法が柱間に生み出す8畳間とよく合致していた。
ひとつの保育室は、中央の丸太柱に4つの8畳間が寄り添う32畳のまとまりとし、それらが2間ずつずれながら互いに接し、風車状の保育室をつくる。この緩やかな空間をつくる2間の連なりが、保育の現場の体感とも繋がる重要な寸法に感じられた。