久米貴大+チャンヴィタン・ワタンヤ / Bangkok Tokyo Architectureが設計した、タイ・バンコクの「House K」です。
イメージ先行ではない“家”を追求する計画です。建築家は、自然発生的な状態を求め、地域の一般構法を採用した上で“諸室”と“余白”の均衡を見極める設計を志向しました。また、“内部構造を変形”して表に出す構成は“公共性”の導入も意図しています。
住宅地に建つ親子ふたりのための住宅。
この場所で生まれ育った建主は、家族構成の変化、既存の家の老朽化などの状況から、家の建て替えを考えていた。
私たちはこのプロジェクトが始まった時から、どうしたら家をイメージや欲望が先行した完結したものではなく、住まい手が変わっても、また家という用途を失っても、いつ誰が主体として参加してもいい場所ができるのかについて考えていた。
そして、そのためにはこの場所から自然に発生してきたような、同時にその始まりも終わりも判然としない建築のあり方が必要だと思っていた。
そこでまず、コンクリートのグリッドフレームを立ち上げ、そのフレームを外周に張り出すように変形して全体のかたちをつくる。フレームの間にレンガを積み壁をつくり、壁とフレームの隙間に窓、トップライト、階段、カーテン、水回りなどを少しずつずらしながら取り付けていく。
それぞれの階には母の部屋、リビング・ダイニング、息子の部屋が割り当てられ、張り出した部分はアプローチ、廊下、バルコニーなどの共用の場所として使われる。それぞれの階はこれらの半外部空間を介して独立している。これはまち、光、風などの環境とそれぞれの部屋を直接繋げるものであり、将来的な機能の入れ替えや変更のための余白でもある。