玉木浩太+ジュリア・リ・カ・イー+林盛 / HUNE Architectsが、共用部の内装設計を手掛けた、東京・北区の集合住宅「HAUN TABATA」です。建物自体の設計は一級建築士事務所エスが担当しています(詳細なクレジットは末尾に掲載)。
居住と作業空間を併せ持つ“コリビング賃貸”の計画です。建築家は、様々な行為が重なる場として、箇所毎に異なる役割を果たす“センターテーブル”を据えた空間を考案しました。また、再生材料の特徴を活かして家具類に“鉱物”の様な質感も与えました。施設の公式サイトはこちら。
現代社会では「住む」ことの多様化によりホテルやシェアハウス、マンスリー賃貸、サービスアパートメントなど住むための形やサービスも多様化しています。
その中で、「コリビング賃貸」は、家具を設けた専有部と、リビングとワーキングスペースが一体となった共用部からなるサービス賃貸の形式です。住まうためのレジデンスと仕事や作業をするためのワークスペースの二つの特徴を併せ持った住居形態として、コロナ以降、自宅で仕事をする機会が増えた人たちに注目されています。
田端のコリビングは、各約15㎡・61住戸の専有個室と共用のリビング「コリビング空間」、ランドリー、パントリー、1階共用部からなります。備え付けのベッド、デスク、洗面カウンター、シャワーユニットが備え付けられた専有部個室の面積を最小限に抑え、キッチンとリビング、ワーキングスペースからなるコリビング空間を充実させることが施設のコンセプトになっています。
4階建ての建築を10mの高さ制限に収めるため、1階のコリビング空間は地盤面よりやや下がっています。
リビングの入り口から少し下がることで、落ち着いた場所性が生まれると考え、この高低差を生かした計画にしたいと考えました。限られたスペースの中で、南側に開いた間取りであることと、様々なアクティビティが共存することを活かすために、できるだけ共用部を区切ることのない1室空間としています。
このシンプルで小さな一室空間の中で、リラックスできる場所、料理を作る場所、くつろぐ場所、明るく話が弾む場所、集中する場所、様々な行為が重なる場所を作りました。
西側をくつろぐための小上がり空間とし、東側を4か所同時に使えるキッチンカウンターとして、これらの二つの場所をつなぐように空間の中央にセンターテーブルを配置しました。センターテーブルは小上がりのローテーブルとなり、中央ではダイニングテーブルであり、キッチンのための作業台でもあります。様々な行為が同時多発的に発生する場所です。
空間の中心となるセンターテーブルや、窓際のワーキングデスク、プランター等の家具は、産廃パーチクルボードを使用して製作しました。パーチクルボードは使用済みのパレット、廃棄される梱包用資材、型枠合板などの木質系の素材を、木片やカンナくずにまで砕き、接着剤によって固めることでボードとする再生材料です。建築の現場では家具や建築用の床などの下地材として広く使われており、廃棄木材から作られていることから建設業における資材の再資源化にも大きく貢献しています。