竹口健太郎+山本麻子 / アルファヴィルが設計した、京都・宇治市の「TEA SQUARE MORIHAN 第二期工事」です。
増築が繰り返された茶問屋を改修してカフェ等の機能を加えた施設です。建築家は、新旧の構法が入り混じる既存に対し、新設の中庭と回廊で既存の構造とプログラムを整理する計画を考案しました。また、伝統的な場所への更なる歴史の重層も意図されました。店舗の場所はこちら(Google Map)。
一期二期工事のコンストラクション・マネジメントを手掛けたのは、阪急コンストラクション・マネジメントです。一期工事の伝統構法の設計監修は京町家再生研究会で、設計は内田康博建築研究所が手掛けています。
江戸時代から六代にわたって宇治茶の問屋業を営んできた森半。
時代の移り変わりに伴い、大阪でのビジネス展開、近代的な工場の設立そして海外との取引と業態を変えながらも、宇治市小倉地区にある創業の地では街道に面した築100年以上の母家に創業家が住まい、奥の加工場で茶師によるお茶の審査や合組(ブレンド)が行われてきた。
この創業の地にたつ建物の全面改修を通じて、伝統的な職と住の場を、加工から消費まで広さと厚みのある茶文化を総合的に体験できる場へと変容させ、TEA SQUARE MORIHANとして開かれることとなった。
私たちは、まず解体調査から始めて、特に伝統的な様式でつくられた街道側の母家、店舗、蔵を一期工事として江戸時代の茶問屋建築の形式を取り戻すことを目指す一方で、木造トラスなど比較的新しい構法の見られる部分を二期工事として、カフェや抹茶を使ったスイーツの開発・販売といった新たな業態の場とするために、加工場の一部を減築し、シンボルとなる中庭を新しく設けることとした。
中庭部分を減築するにあたって、幾重にも重なりあって増築された建物群を切り離す必要があったため、中庭に面する継ぎはぎの多い既存構造体は一旦撤去し、新しく基礎、耐力壁、梁を中庭側にまわした。そして中庭側に新たな窓や出入口が設けられ、ガラスの庇がかけられたことで、様々な構法の既存建物が、構造的にも、プログラム的にも、この回廊によって整理され、繋ぎあわされることになった。
このようなスパンの長い改修を行うにあたって、一期二期工事を通じて阪急コンストラクション・マネジメントがCM(コンストラクション・マネジメント)を、京町家再生研究会が一期工事の伝統構法の設計監修を、内田康博建築研究所が一期工事の、株式会社アルファヴィルが二期工事の設計を担当するというように、伝統的なものに、新しいものを対比させるだけでない、常に革新が重ねられてきたこの場所の歴史を、再び重ねるようなリノベーションとなった。