



秋山怜史 / 秋山立花が設計した、群馬・嬬恋村の「嬬恋の別荘 G-Spiral」です。
かつて栄えた別荘地での計画です。建築家は、火山活動で森が焼かれた火成岩の大地に、こちらの世界とそちらの世界の境界を超える“舞台装置”としての建築を志向しました。そして、“虚空の空間”と“風呂の空間”を線対称に配置する構成を考案しました。
こちらの世界とは異なるそちらの世界。同じようでいて、違う世界。
偶発的であれ、意図的であれ、時に人はその境界を跨いでしまうことがある。日常的には決して混じり合うことがない世界が、ふとした瞬間に近づき、触れ合い、その境界が曖昧になることによって。
そうした現象が出現するためには一定の条件が必要になる。そして、いわば舞台装置のようなものが必要だ。それは暗く湿った井戸の底であったり、あるいは形而上的な壁であったりする。
タイミングや状況など複数の要因が揃った時、その場所は意味を帯び、異なる世界を橋渡しする役割を与えられ、そこに訪れた人を導く。そして否応なく、異なる世界へ足を踏み入れることになる。私たちが目指したのは、井戸であり壁である。
こちらの世界とそちらの世界が交差し、その境界を超えるための舞台装置。別荘というと、日常と非日常という対比が行われることが多いが、日常と非日常という言葉以上に、何かが決定的に違うもの。成り立ちであったり立ち振る舞いであったり、その世界を構成する要素が異なるようなもの。そうした世界観を現出させたい。
私たちが目指したのは、井戸であり壁である。
こちらの世界とそちらの世界が交差し、その境界を超えるための舞台装置。別荘というと、日常と非日常という対比が行われることが多いが、日常と非日常という言葉以上に、何かが決定的に違うもの。成り立ちであったり立ち振る舞いであったり、その世界を構成する要素が異なるようなもの。そうした世界観を現出させたい。
この建物–あるいは舞台装置−は浅間石に覆われた大地に建つ。
浅間山の噴火によって堆積した浅間石。その力強い自然の活動によって産まれた景色を再生させる。別荘というと木々に囲まれているイメージが強く想起されるかもしれない。それこそが「自然」であると。しかし、自然は多様であり、火山活動によって木々が消失し、火成岩に覆われた状況もまた、自然である。そこに、火山活動によって森が焼かれ、生き延びた木々が炭化し佇んでいる様を現すように小屋を建てる。
小屋にはふたつの空間があり、線対称に存在している。
同じ大きさであり、同じ高さであり、同じ構造を持つ。一方の空間は床一面に絨毯がひかれている。そのほかには何もない、機能もない、いわば虚空である。
もう一方の空間は下へ下へと降りていく井戸のように風呂が掘られている。
同じであると同時に、異なっている。こちらの世界とそちらの世界。