塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONによる、北海道・札幌市の「maison y maison」。代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築。終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案。地域の活動が入り込み新たな交流も生まれる外観、南側の道路より見る。 photo©田中克昌
塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONによる、北海道・札幌市の「maison y maison」。代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築。終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案。地域の活動が入り込み新たな交流も生まれる1階、住戸、手前:リビング、左奥:ダイニング、右奥:趣味室(北) photo©田中克昌
塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONによる、北海道・札幌市の「maison y maison」。代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築。終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案。地域の活動が入り込み新たな交流も生まれる1階、「共用スペース」、テナント側を見る。 photo©田中克昌
塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONによる、北海道・札幌市の「maison y maison」。代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築。終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案。地域の活動が入り込み新たな交流も生まれる2階、貸事務所、「室(南)」 photo©田中克昌
塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONが設計した、北海道・札幌市の「maison y maison」です。
代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築のプロジェクトです。建築家は、終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案しました。そして、地域の活動が入り込み新たな交流も生まれています。
これは老後を迎える設計者の両親が暮らした築33年の住宅の増改築である。
計画地は札幌の開拓期から建主の一族が代々受け継いできた。
そのため、場所への愛着と家族と暮らした家への愛着が共存している。約140年にわたって育まれた場所への愛着が、この地域のこれからの可能性と、夫婦の老後の生活とを結ぶように展開し、終の棲家としての役目を終えた、さらにその先まで持続していく計画を考えたいと思った。
さらに、両親の豊かな老後として私たちが想像したのは、大らかな空間に包まれながら、隣人と挨拶を交わす程度でも、地域の交流に巻き込まれるような暮らしだった。そこで、かつての記憶を残した家の半分を共同住宅として保存し、その隣に寄り添うように暮らす、増改築の提案を行った。
既存と一体増築を行うため、外壁を残したまま内部はフルスケルトンにして、新設の基礎と構造壁を追加した。増築側は4本柱のトラス架構を作り、既存のパラペットより高く持ち上げた伽藍堂のようなボリュームを既存に覆いかぶせる。すると既存外壁がそのまま室内に現れることになる。
両親の住居は1階のみで生活が完結するように、既存に片足を残したまま増築側にスライドさせ、洗面などの水廻りは再利用した。元リビングなど、家の中心だった残りの部分は、共同住宅として用途を整え、地域の活動が入り込む余白として、小さなテナントと大きな共用部を設けた。
テナントや共用部には両親も実際に入ることができる。そこでは新たに迎え入れた地域の活動と家族の記憶がオーバーラップする。現在テナントには50代の夫婦が営む生活用品店が入り、コーヒーを淹れて地域の人たちと談笑している。その中には両親の姿を見ることもあり、元リビングである共用部に再び人が集まってきた。