


畠山文聡 / NTTファシリティーズが設計した、大阪・関西万博の「NTTパビリオン -感情を纏う建築-」です。
建築家は、多様性を育む“パラコンシステント”の思想の表現を求め、“建物や素材を細分化”して“体験や振舞を粒子化”する存在を志向しました。そして、布やカーボンファイバーを主要素材とする建築を考案しました。施設の公式サイトはこちら。
2025年万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、人とのつながりや、心地よい未来社会を描いていくことをめざしている。生命科学やAI、ゲノム研究によるサイエンスが進歩し続ける時代において、生命倫理や原点回帰の思想に今一度立ち帰り、考え続けることが重要だ。
NTTパビリオンの建築において、異なる事象が同じ場と同じ時間に共に在る関係性「パラコンシステント」の思想を表現することに取り組んだ。内と外、自分と他者、人間と自然、などあらゆる二項対立をなくし、どこまでもひとつにつながっていくような多種同在的な関係性をパビリオンで実現することをめざした。
半年という期間に適したテントのような設置・解体が容易にできる膜構造とし、独特な柔らかさをもつ空間を生み出す「布」を使用した。どちらの素材も会期後の循環性を意識し、建物が消えた後にも体験や感動が残り続けるように計画を行った。
人・自然・デジタルが溶け合う多種同在的な関係性を実現する為に体験やふるまいを粒子化し、建物や素材を細分化した。
細分化により生まれた隙間が場となり、布や構造体となるカーボンファイバー(糸)により多様なふるまいが生まれる。古来より人と環境の間に衣服が介在しているように衣服(布)を建築にまとわせ、風や動きによってゆらめく自然の機微を可視化し環境を調律する手段とした。次に、布は生分解性を有した素材を使用し、来館者の子どもたちが布を結びつけていくことで、会期を通してパビリオンを一緒につくりながら、会期後は自然に還るような循環性を意識した計画とした。またNTT技術により建物内の人の表情を読み取り、布を振幅させることで物理的な壁を越えた拡張性を表現した。