SHARE 高橋一平建築事務所による岡山の”新LRT駅デザインコンペティション”の最優秀賞案
高橋一平建築事務所による岡山の”新LRT駅デザインコンペティション“の最優秀賞案です。
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以下に、作品についてのテキストを掲載します。
以下、建築家によるテキストです。
路面電車のターミナルをつくるコンペ案である。郊外の鉄道路線を 路面電車(LRT)に転換する計画の一端となっており、そうな ればこれまでのように線路が街を分断せず、駅も街の広場に変わる ことが期待される。コンペでは、さらに都市におけるシンボルとし ての駅の姿が求められた。
小都市では人工的になり過ぎるきらいのある大きな建築物よりも自然に存在できるものを考えた。提案したことは、緑の建築状のボリュームである。駅前に木を植えてエッジを刈り込んだ、複数の中庭をもつ大きな茂みである。茂みが浮かび、たくさんの木立がピロティを生み出す。これがこの街のターミナルとなる。小さな路面電車が、まるで鳥が巣のある木に突っ込むように、ばさっと梢をかすめ、葉を散らしながらすべりこむ。電車の音や、大人や子どもの話し声、足音、鳥の鳴く声などが交ざり合って聞こえてくる一つの生態系のような駅。都市化が進む街の中心で、鎮守の森のように、静的で強い存在感を持つと考えた。ピロティ空間には券売機やサインが並ぶだけで壁が無く、透明な広場で、人や車が自由に行き交う。
いっぽう、待合室や託児所、商店といった実際の建築は宙に浮き、茂みボリュームと一体化している。一つだけタワーがあって、上ると茂みを突き破り視界が晴れ、ふだん行き急ぐ街をたまに見下ろす。電車や出迎えを待つ人がいるほか、何となく集まって話をして
いたり、散歩がてら通り抜けてその雰囲気を楽しんだり、茂みに入り込んで鳥と戯れる人などがたたずむ、生命が息づくターミナル。
この輪郭は、四季による変化を経て乱れていくが、ある時に一気に刈り込まれ定期的に整えられる。冬が近づくと葉がどっさりと地面に落ち、ボリュームは消え、広場は日光に照らされる。
こうした茂みが線路を伝い、隣り町へと、またその隣りへと点在し、新しい風景が生まれるのではないかと思っている。