隈研吾による論考「建築は、ひどい目にあってはじめて変わることができる――建築家・隈研吾がコロナ禍に考えたこと」が、bookbang.jpに掲載されています。
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ICADA / 岩元真明+千種成顕が設計した、広島・福山市の、アトリエ付き住宅(離れ)「節穴の家」です。
瀬戸内海を見渡す高台にある小さな住宅である。
施主は画家とその妻であり、生活と創作の場に多様性を求めて木造平屋の「離れ」の建設を思い立った。施主の希望を積み重ねると「離れ」の必要面積は30坪をこえたが、予算は800万円である。
この風変わりな条件から、大きな空間を最小限の材料でつくり、徹底的にローコストな住宅をめざすというコンセプトが生まれた。平面計画・構造・温熱環境・内装などの側面に関して原理に立ち戻り、麻ロープの引張材、節穴だらけの薄板、布製の外壁といった型破りの材料が見いだされた。1960年代後半、イタリアの芸術家たちは一般的な画材を放棄し、生のままの工業製品や自然素材を用いた「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)」によって物と空間の本質に迫った。
同様に、この「貧しい建築」は批評的な視座を提供し、現代における豊かさの意味を問い直す試みである。
平川フミオ+トプノワ・マリナ / 24d-studioによる、兵庫・神戸市の、築35年の木造住居兼事務所の改修「House of Many Arches(アーチだらけの家)」です。
House of Many Arches (アーチだらけの家)は神戸市にある築35年の木造住居兼事務所の改修計画。もともとは賃貸アパートを含む事務所兼住居として建てられたこの建物は、阪神・淡路大震災後に住居と事務所だけにの職住融合住宅に改築した。その後、建主の事情により業務を解散する運びとなり空家となってしまい、24d-studioは今後の職住融合住宅の在り方を再定義する方向性をとり更新することを図った。
調査の結果で耐震補強は勿論のこと、断熱、採光、通風などの環境設備面で不備があり、部屋の区分化が息苦しい雰囲気を与えた。開放的で快適な職住融合の生活スタイルに合わせるため、プロジェクトの課題はレイアウト全体を再構成して広々としたワークスペース、最大限の採光と通風を与え、耐震補強と断熱性能をアップグレードすることであった。
プロジェクトの重要なエレメントはアーチ開口耐力壁の導入となった。各アーチ開口部は計画的に配分されており、構造的な補強を可能にしつつ各部屋に空間的流動性を提供した。壁は一般的に各部屋の分割するものとして認識されているが、アーチ開口壁ではスペースが互いに溢れあうように仕組んだ。日常タスクの機能に応じて各部屋の収縮と拡張、スペース同士の折衝が発生する。
『西浦教授が語る「新型コロナ」に強い街づくり』という記事が、東洋経済ONLINEに掲載されています。
代官山 蔦屋書店にて、書籍『“山”と“谷”を楽しむ建築家の人生』の選書フェア「建築家が人生の山と谷をともに歩んだ1冊」が開催されています。会期は2020年8月14日まで。選書しているのは、永山祐子・鈴野浩一・佐久間悠・谷尻誠・五十嵐淳・森田一弥・小堀哲夫・山﨑健太郎・西田司・後藤連平。
社会とともに変わっていく価値観や経済状況に振り回されず、創造的な生き方を実践している建築家たちの姿を描き出した『”山”と”谷”を楽しむ建築家の人生』。
インタビューを受けた建築家7名・編集者3名の計10名の皆様に「人生の山と谷をともに歩んだ1冊」をテーマに、選書頂きました書籍フェアを開催致します。
■書籍『“山”と“谷”を楽しむ建築家の人生』の関連記事
建築家・栗田祥弘がヨックモックとクライアントである株式会社ヨックモックホールディングス取締役会長・藤縄利康と5年の歳月をかけた、南青山のピカソのセラミック作品を展示する“家のような”美術館「ヨックモックミュージアム」が竣工した(建築は竣工しているが展示作品は2020年10月の開館に向け準備している状態)。
建築設計と展示計画を担当した栗田祥弘建築都市研究所を主宰する栗田祥弘は、隈研吾建築都市設計事務所出身の建築家。本美術館の計画には、敷地選定から関わり、クライアントとの週一回の打ち合わせを続けて計画を練り上げたのだという。当初は、都市を離れた静謐な森の中などの敷地も候補に挙がったそうだが、計画が進む中で明確になった「家に友人を招くようにお迎えしたい」という建築コンセプトを体現できる敷地として、東京・南青山のこの地が選ばれた。
長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、東京・六本木の店舗「DESCENTE BLANC 六本木」です。店舗の公式ページはこちら。
DESCENTE BLANCが六本木ヒルズ内森タワー4階の比較的小さい区画にインショップとしてオープンした.
小さい区画ながら高密度に店舗を計画した。具体的には可動ハンガーバーを前後左右いっぱいに詰め、昇降することによっての変化が目まぐるしく、落ち着いた近隣のお店の中で異彩を放ち際立たせることを考えた。
長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、東京・港区の、カレッタ汐留内にあるソロワーキングスペース「Think Lab 汐留」です。
仕事の機会やコラボレーションを期待して集うコワーキングスペースに対して、すでにやることが決まっていて短時間で集中して仕事するソロワーキングスペースの提案です。
一日の中で働く場所を変えて仕事のスピードを切り替えたり、そもそも移動しながら働く人に対し、カフェ以外にもう少し集中できる場所を提案できないだろうか。そんな新しいライフスタイルに欠かせない場として、個人が仕事に集中できる適度に狭く適度にクローズされた環境を追及した、個人のための空間です。
御手洗龍建築設計事務所が設計した、東京・世田谷区の集合住宅の一住戸「Rib」です。
部屋のある4階まで上がると、窓の外に庭の緑が頭を覗かせ、その先には遠くまで景色が広がっているのが印象的であった。そしてL字型の平面をしたこの部屋には沢山の窓があり、その窓辺で陽の光や涼やかな風、緑の葉擦れを日々感じられたらどんなに幸せだろうと想像した。
そこで既存の間仕切り壁と天井を取り去り、躯体の中、一から窓辺に居場所を紡ぎ出していこうと考えた。窓辺を囲むように45mm角のツガ材をリブ状に並べ、そこに13mm 厚の合板を回していく。合板は仕上げと構造を兼ねて二枚張り合わせ、窓側にラワン材、反対側には限りなく白に近いグレー色の塗装面が現れるものとした。そしてここで用いたラワン材は、穏やかな木目に沿って自然オイルを染み込ませていくと、息を吹き返したかのように赤味を帯びてくる。窓から溢れ込む陽の光の束に、肌理の荒いその木面を差し延べると、光の粒がやわらかな濃淡として現れ、得も言われぬあたたかみと落ち着きを感じさせてくれた。
中村拓志 & NAP建築設計事務所のデザイン監修による、東日本の既存建物を改修したヴィラ「Loggia on the Shore」です。
100フィートの大型クルーザーが停留可能な海沿いのヴィラである。RC造の既存建物を改修し、宿泊機能やプール、ジム等を付帯させた迎賓館として再生させた。メインエントランスは海側にある。船から訪れたゲストをまず迎え入れるのは、プールやテラス、そして半屋外空間としてのロッジアである。
ロッジアとは涼しい風と眺めを楽しむ開放的な半屋外空間のことであるが、ここでは幅5mの特注昇降式サッシを設けることで、開放時は内外がつながり、心地よい涼風が山側の高窓へと抜けていく空間となっている。
長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、東京・多摩市の、住宅・治療院「取口さんち」です。
“取口さんち”は多摩ニュータウンの中でも最近開発された地域で新し目の建物が周りに建つ。
それは地域の相場に沿った建売住宅であることから、だいたい同じような艶の同じような色の外壁材でできた、そして同じような建具に覆われた建物が周りに建つ。そんな中に外壁をモルタルを塗りたくり、内装を柱梁をむき出しにしてその間をラワンベニヤで覆い、用途に構わず“取口さんち”は建つ。用途は1階を取口さんが営む整体する場で、2階をご自宅として利用している。
取口さんは計画の段階から、細かいところにも関わり、施工会社を探し、そして最後には自ら施工にまで参加するという施主参加型のプロジェクトとなった。もちろん、理由は予算が限られていたからだが、それはいい口実でそのシチュエーションを取口さんは確実に楽しんでいた。
そもそも予算がないのでそこまで欲張らずに今のライフスタイルを全うする場を考えれば良いのだが、やはりそこは強い未来への希望があり絶対に譲って来なかった。よっていずれ新たな構成員を迎え入れることを考えそれぞれに余裕のあるスペースをとって計画した。
そこで我々は実際に手を加えて行く時もどうせならわざわざ我々が出て行かずとも自ら考え、自分で環境を変えていく生きた建築になることを期待し計画してきた。
また、中は敷地目一杯に建てているので単調なプランなはずだが、そのランダムに開いた窓から見える風景がまちまちで繋がらずそこでの体験が抑揚満ちたものとなっている。
つまり、構成するものはいたって単調でも、それらの組み回せ、寸法によって期待を裏切る空間はできるということになる。
中村拓志 & NAP建築設計事務所と大和ハウス工業が設計した、広島市の「畑の下のラボラトリー(IROHA village)」です。施設の公式サイトはこちら。
広島の銘菓「もみじまんじゅう」を製造する老舗和菓子屋、「藤い屋」の新工場である。宮島口の店舗に引き続いて企画から設計、監理までを担当した。敷地は海を埋立てた工業地域でスケールオーバーした無味乾燥な場所であった。そこで我々は単なる工場ではなく、材料生産、研究、加工と消費がひとつながりとなった有機的な場を提案した。このブランドが地元に密着して、人の生活や自然を大切にしながら続けてきたお菓子作りを表現しようと考えた。
まずは菓子の製造と工場見学にとどまらず、つくる人の顔や材料の確かさ、企業哲学を広く伝える場所となるよう、工場と同じ面積の農園「畑LABO」を設けた。畑には小豆や小麦、レモンなどの果樹、アーモンド、オリーブなどのお菓子の材料となる樹木を植えて、食材の研究や食育の場とした。
西沢立衛の設計で2019年に完成した、チリの海岸沿いに建つ週末住宅「House in Los Vilos」の写真と図面が10枚、dezeenに掲載されています。オチョアルクーボと名付けられた建築プロジェクトの一環として建てられたもので、プロジェクトの公式サイトにも写真が28枚掲載されています。2019年1月時点での現場の様子を弊サイトでも紹介していました。
プロジェクトのfbアカウントにも写真が投稿されています。
広島にも事務所を開設した、堤由匡建築設計工作室が設計した、中国・杭州市の店舗「松子快餐」です。先に特集記事として掲載した「料亭松子」と同じ建物内の1階に位置する店舗です。
杭州西湖湖畔の三階建古民家全体を日本食の飲食店へと改修した。観光客の人通りが多い一階路面には、客単価が低く回転数の多いファストフード店を計画した。
天井高の低い古民家であるため、大きく天井を変化させることはできない。また機能要求を満たしていくと、不規則な平面となり外部の観光客を奥まで惹きつける設計も難しいなものになっていた。そこで日本の伝統建築でしばしば用いられる、船底天井を応用することにした。緩い勾配をつけることで、低い中にも空間の広がりが感じられる。さらに太めの天井パネルを上下交互に配置し、頂部を奥へと誘うように曲線でつないでいった。天井パネルが壁にぶつかる箇所はそのまま降ろし、壁のデザインとしている。
日本では細長い長屋のことを鰻の寝床と呼ぶが、この食堂ではのちに鰻を主商品として売り出すことになり、「鰻の寝床」のような空間デザインと商品が図らずも一致することになった。
小嶋伸也+小嶋綾香 / 小大建築設計事務所が設計した、上海当代芸術博物館での期間限定のカフェ「PSA×Blacksheep Pop-up Café」です。2018年に設置された店舗です。
大きなルーフトップテラスに面した窓ガラスに、見る角度や光の角度によって色が変化し、さらに透過性も備えているタマムシフィルムを手でくしゃくしゃに揉んでから接着した。通常のフラットなフィルムよりも多角に曲がったフィルムからは、オープンしてから日没までの日光による色彩の変化、日が落ちてから室内の照明をつけてからの色彩の変化まで、時間経過と人の動きに合わせて刻々と変化する色彩のインパクトを作り出した。
また、既存の窓ガラスを支えている支柱を両側から鏡貼りにし合わせ鏡とすることで、切れ目の無いシームレスな大色彩空間を演出すると共に、窓際のスタンド席にインした際に視覚的反復の現象で遊びのある体験に一役買っている。
限られた材料で造作物のみを設計するのではなく、限られた材料に手間をかけて、1つでも多くの「現象」を副産物として生み出すという視点で設計をすることで、コスト制約の厳しいポップアップストアにおいても多様な体験を創り出すことができたのではないだろうか。