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山﨑健太郎デザインワークショップによる、静岡の「熱海の茶房」
山﨑健太郎デザインワークショップによる、静岡の「熱海の茶房」 photo©黒住直臣
山﨑健太郎デザインワークショップによる、静岡の「熱海の茶房」 photo©黒住直臣
山﨑健太郎デザインワークショップによる、静岡の「熱海の茶房」 photo©黒住直臣

山﨑健太郎デザインワークショップが設計した、静岡の「熱海の茶房」です。店舗のウェブサイトはこちら

計画は60平米ほどの小さな建築で、仕事をリタイアしたご夫婦が営む茶房である。

敷地は、来宮神社から急な坂を登ってしばらくのところにある。斜面地を敷地分だけ削り取られ、その環境は暴力的に感じられた。しかしながら、奥行きの長い敷地には、奥に向かってわずかに勾配があったり、敷地に沿って、心地よいせせらぎの音が聞こえる。このように暴力的な環境から客を守り、周辺に見えがくれする小さな魅力を存分に味わえる建築をイメージした。

細長い敷地の長手方向に崖条例のため、崖上からの土砂崩れに対してコンクリート擁壁、一方崖下からからは安息角の下までの基礎を下げた深基礎になっている。この地面から持ち上げられたL字型のRC造の上に、軽やかな木造の架構をかけた。

建築家によるテキストより
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIによる、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIによる、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」 photo©luz images
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIによる、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」 photo©luz images
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIによる、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」
庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIによる、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」 photo©luz images

庄司光宏 / UCHIDA SHANGHAIが設計した、中国の、既存工場をリノベーションした「浙江省にある麻のギャラリー」です。

中国浙江省嘉興市海塩県にある1980年台後半に麻糸を生成する工場として建てられた建築のリノベーションである。

元々は一般的なラーメン構造の工場建築であり、ごく一般的な換気用の開口と採光のための窓が並ぶ建築であった。15年以上放置されていたこの建築に麻の生産を営む施主は思い入れがあり今回麻をテーマにした展示を行なうギャラリーを計画することにした。
この建物のコンセプトは時間の変化による光の体験である。その為、複数の建築言語を工場建築に追加し豊かな環境を構成することを目指した。

東立面に新規で挿入された黒い鉄板でできたBOXは室内へのアプローチ空間であり。幅2.5m高さ4.1mの大型回転ドアを開け進んでいくとまず曲面鉄板の緩やかな階段のある展示空間に進む。
そこを抜けると10mmの鉄板による螺旋階段と吹き抜けの展示空間が訪れこの施設のメイン空間へと導かれる。室内はランダムな開口からの採光とトップライト、光庭の影響で古材のタイル、鉄板、竹圧縮材などの素材の表情変化はとても美しいものになっている。

建築家によるテキストより
【ap job更新】 資金計画や不動産等の知識にも明るい井上亮と、公共建築の経験豊富な吉村明が共同主宰する「Inoue Yoshimura studio Inc.」が、設計スタッフ(正社員・アルバイト)を募集中
【ap job更新】 資金計画や不動産等の知識にも明るい井上亮と、公共建築の経験豊富な吉村明が共同主宰する「Inoue Yoshimura studio Inc.」が、設計スタッフ(正社員・アルバイト)を募集中
【ap job更新】 資金計画や不動産等の知識にも明るい井上亮と、公共建築の経験豊富な吉村明が共同主宰する「Inoue Yoshimura studio Inc.」が、設計スタッフ(正社員・アルバイト)を募集中

資金計画や不動産等の知識にも明るい井上亮と、公共建築の経験豊富な吉村明が共同主宰する「Inoue Yoshimura studio Inc.」の、設計スタッフ(正社員・アルバイト)募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください

【スタッフ募集のお知らせ】
事業拡大に伴い新しいスタッフを募集することになりました。現在井上と吉村2名のため新しいスタッフはこれから事務所を拡大していくメンバーとして、1から種々の案件を経験することができます。実務未経験でも1からサポートし教えていきます。ワクワクするような未知の空間を一緒に創造したい方、是非ご応募ください。

【事務所の業務方針・考え方】
・決まった時間内での業務の遂行に力を入れています。効率よい仕事の進行で決まった時間の中で業務を行えるようにしています。
・新しい発案はどんどん取り入れ変化を楽しんでいます。時代と共に常に変化していく空間をつくりたいと考えています。
・楽しい雰囲気と良い人間関係が新しい発想の建築を生み出すと考えています。リラックスした空間の中で新しい現代的な建築デザインを発見したいと思っています。

【IYsで学べるスキル】
・主宰する井上、吉村は、小規模住宅から大規模な公共建築まで、幅広い経験値があります。井上は、住宅系のディベロッパーにて管理職をしていた経験から、デザインだけではなく、建築に必要な資金計算やローンの計算、不動産の知識に明るく大学で学ばないプロジェクトをまとめるスキルがあり、吉村は公共建築を多数経験しています。

ザハ・ハディド・アーキテクツが計画している、香港の36階建ての高層ビル「2 Murray Road」。香港蘭のつぼみを再解釈した有機的な外観は、隣接する公園との調和を意図し、環境性能も考慮
ザハ・ハディド・アーキテクツが計画している、香港の36階建ての高層ビル「2 Murray Road」。香港蘭のつぼみを再解釈した有機的な外観は、隣接する公園との調和を意図し、環境性能も考慮 image©Arqui9
ザハ・ハディド・アーキテクツが計画している、香港の36階建ての高層ビル「2 Murray Road」。香港蘭のつぼみを再解釈した有機的な外観は、隣接する公園との調和を意図し、環境性能も考慮 image©MIR
ザハ・ハディド・アーキテクツが計画している、香港の36階建ての高層ビル「2 Murray Road」。香港蘭のつぼみを再解釈した有機的な外観は、隣接する公園との調和を意図し、環境性能も考慮 image©PixelFlakes

ザハ・ハディド・アーキテクツが計画している、香港の36階建ての高層ビル「2 Murray Road」です。写真の末尾には動画も掲載します。

香港の金融街の中心部に位置するこのプロジェクトは、香港の高架歩道ネットワークの東西南北の分岐点に位置していて、周辺の庭園やショップ、レストラン、大手金融機関や市民機関のオフィスと直接つながっています。
この特徴的な形態は、バウヒニア(香港蘭)のつぼみを再解釈し考案されたそうで、敷地が隣接する公園の自然との連続性・調和を意図しているとの事。
ファサードは、この地域の強力な夏の台風にも耐えられるように設計されていて、香港では初となる4層構造のガラスユニットで構成され、建物を効果的に断熱し、冷房負荷を軽減するのだそう。
また、構造的には、高張力鉄骨構造(high-tensile steel structure)により、階高が5m、スパン26mの柱のないオフィス空間が実現していると言います。
そして、環境へも配慮した建築とのことで、ヘンダーソンランドとアラップのビルサステナビリティチームとの協力により、この設計はLEEDプラチナとWELLプラチナの事前認証を取得し、中国のグリーンビルディング評価プログラムで最高の3つ星評価を受けています。更に、スマート管理システムを導入し、道路からオフィスまでを非接触でアクセスできるようになっているのだそう。

ライトの弟子としても知られる遠藤新が手掛けた葉山の「加地邸」が、神谷修平らの設計で改修。民泊事業も開始されるとの事

『建築家・遠藤新が手掛けた葉山の「加地邸」で民泊事業 建物を残すために』という記事が、逗子葉山経済新聞に掲載されています。民泊の開始についてはこちらが伝えています。

加地邸は、フランク・ロイド・ライトの弟子として知られる遠藤新の設計で1928年竣工した建築です。事業開始にあたり修繕が行われたようで、それを手掛けたのは、隈研吾建築都市設計事務所やBIGの事務所を経験した神谷修平と戸井田設計です。こちらのページに改修後の写真が5枚掲載されています。
また修繕にあたってはクラウドファウンディングが行われており、そちらのページには改修前の写真や建物の背景が掲載されています。

改修後の様子はこちらの動画でも紹介されています。

【葉山加地邸】
フランクロイドライトの弟子・遠藤新が設計し、1928年に建設。国登録有形文化財のプレーリースタイルの建築です。
カミヤアーキテクツがCD・インテリアデザインを担当し、ホテルへと改修されました。

※本体改修設計:カミヤアーキテクツ+戸井田設計

【KA IDEAS-葉山加地邸】
企画・監修:神谷修平/KAMIYA ARCHITECTS
映像ディレクション:小野友資 /映像制作:studio horizont/写真:太田拓実

ネット上には加地邸のfacebookページがあるので、民泊についての情報は今後こちらなどでリリースされると思われます。

沖津雄司 / YUJI OKITSUによる、企業の本社エントランスに設置された常設インスタレーション作品「lightflakes for Star Micronics」
沖津雄司 / YUJI OKITSUによる、企業の本社エントランスに設置された常設インスタレーション作品「lightflakes for Star Micronics」 photo©山根朋子
沖津雄司 / YUJI OKITSUによる、企業の本社エントランスに設置された常設インスタレーション作品「lightflakes for Star Micronics」 photo©YUJI OKITSU
沖津雄司 / YUJI OKITSUによる、企業の本社エントランスに設置された常設インスタレーション作品「lightflakes for Star Micronics」 photo©山根朋子

沖津雄司 / YUJI OKITSUによる、企業の本社エントランスに設置された常設インスタレーション作品「lightflakes for Star Micronics」です。

「lightflakes for Star Micronics」はスター精密株式会社の本社エントランスに設計した常設のインスタレーションです。

このフロシェクトは、電子機器・工作機械・精密部品のグローバル企業であるスター精密のコーポレートステートメント「小さな技術で大きな世界を作る」を、薄く精巧な「lightflakes」を秩序立てて組むことで細やかに光を拾い上げ、大きな光のオブジェを作り上げることで体現しています。

建築家によるテキストより

lightflakesとは光の再構築をコンセプトにデザインしたアートピースです。
直径40mm、薄さ0.3mm のレンズを細工した繊細なパーツlightflakesを室内に精緻に組上げると、光はレンズの効果で幾重に 透過、反射し、風景と共に複製され具象していきます。

建築家によるテキストより

エントランスロビーに吊り下げられた2体のスクリーン状のオブジェは、レンズである 53,900枚のlightflakesを水平鉛直に組み合わすことで構築しており、エントランス正面の壁に投影されている映像の反射光と、ガラスファサードから室内に入る自然光を受け、形の無かった光は再構築して空間を演出します。

建築家によるテキストより
ロシアの公園の国際設計コンペの結果が公開。最終候補にはH&deM、BIG、隈研吾などのチームが名を連ねる

ロシアの公園「tuchkov buyan」の国際設計コンペの結果が公開されています。最終候補にはH&deMのチーム、BIGのチーム、隈研吾のチームなどが名を連ねていました。一等に選出されたのは、スタジオ44ウエスト8のチームでした。2等に選出されたのは、フォーグトヘルツォーグ&ド・ムーロンのチームでした。コンペの公式サイトはこちら

以下は、それぞれの計画案の動画です。

1等に選出された、スタジオ44+ウエスト8の提案の動画

2等に選出された、フォーグトとヘルツォーグ&ド・ムーロンのチームの提案の動画

大分を拠点とする「塩塚隆生アトリエ」のウェブサイトがリニューアル。「竹田市立図書館」などで全国的にも注目を集める建築家
大分を拠点とする「塩塚隆生アトリエ」のウェブサイトがリニューアル。「竹田市立図書館」などで全国的にも注目を集める建築家新ウェブサイトの作品ページのスクリーンショット。

大分を拠点とする「塩塚隆生アトリエ」のウェブサイトがリニューアルされています。最新作品や過去作品の写真を大きい画像で閲覧できるようになっています。アーキテクチャーフォトでも紹介した「竹田市立図書館」などで全国的にも注目を集める建築家です。

菊竹清訓・妹島和世・坂茂らとの協働でも知られる構造家 松井源吾のアーカイブサイトが公開。作品集や論考もPDFで閲覧可能
菊竹清訓・妹島和世・坂茂らとの協働でも知られる構造家 松井源吾のアーカイブサイトが公開。作品集や論考もPDFで閲覧可能アーカイブサイトのスクリーンショット。

菊竹清訓・妹島和世・坂茂らとの協働でも知られる構造家 松井源吾のアーカイブサイトが公開されています。作品集や論考もPDFで閲覧可能です。運営は松井源吾に学び、事務所のOBでもあるムーサ研究所の磐田正晴が手掛けています。

今年(2020年)は松井源吾先生の御誕生百年に当たる。先生がご逝去されてはや24年の歳月が過ぎ、次第にその御人柄や御業績も遠い記憶となって忘れ去られようとしている。
生前から「死んだあとに、弟子たちの手を煩わせない様、論文や作品集などを取りまとめておく。また遺言の代わりではないけれど、毎年その年の出来事を随筆集として記録しておく」と言っておられた。その影響もあって、7回忌や13回忌などの追悼の機会も失われて今日に至っている。
しかしながらその資料も自費出版であることから、その存在を知る人は門下生や建築関係の方々に限られていて、広く世間に行き渡っていないのが現状である。これらの貴重な資料を公開し建築に携わる方々だけでなく、これからこの分野を目指す若い方々のために伝えることが使命であると思い、ホ-ムぺ-ジ(HP)を開設するものである。
またこのHPに対するご意見や情報提供などを頂くことでより内容の充実を図って行きたいと考えている。
尚、開設に際し政枝夫人と松井家を代表して丸山昭夫氏の御了解を頂くと共に、プライバシ-保護に留意して作成した。

松井源吾教授は1920(大正9)年6月3日に佐渡に誕生され、1996(平成8)年1月11日に慶応病院で75歳の生涯を閉じられました。
その間に建築構造に於いて研究と設計の両分野で 多大の功績を納められ、また早稲田大学教授として多数の技術者育成に貢献されました。
私は大学院の2年間を松井研究室、更に引き続きORS事務所に7年間在籍した合計9年と、独立した後も公私に亘って終生ご指導を頂きました。
先生が早稲田大学を定年退職される際に、授業で使用されていた教材の全てを、専門学校で私が担当していた講座の教材として引き継ぐように託されました。更にその後も研究資料や出版書籍の原稿やスライドなど数多くの資料をお預かりしたままとなっていました。
この御生誕百周年を丁度良い機会ととらえ、その資料を用いてホ-ムぺ-ジを開設する事と致しました。本来であれば先輩諸兄の方々にご意見を頂いてからと思いましたが、もろもろの制約を踏まえ敢えて私個人の責任において作成いたしました。従いまして不備な点、過不足な内容など多々あるかと思いますが、閲覧者の御投稿や御叱責を頂き、より精度の高いものとしたいと考えております。

中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」
中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」 photo©足袋井竜也(足袋井写真事務所)
中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」 photo©足袋井竜也(足袋井写真事務所)
中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」 photo©足袋井竜也(足袋井写真事務所)
中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」 photo©足袋井竜也(足袋井写真事務所)

中本尋之 / FATHOMが設計した、広島市のヘアーサロン「créde hair’s inokuchi」です。

現在井口は周辺にマンションが乱立していて新たなファミリー層など新規顧客の獲得への改装としてクライアントより依頼を受けた。

建物の形状は線路と並行の方向で奥に向かう細長い空間。
人通りは多いが、ファサードが少し奥まって間口も狭いため存在感が感じられず。
既存店舗は店頭に大きな縦型の赤い箱を看板として取付ることで調和ではなく違和感として悪目立ちしていたように感じる。
この特殊な環境因子を上手く空間に落とし込む事はできないだろうかと考えた。

人通りの視線は流れるような動的、人だまりの視線は踏切で待つ静的である。
この二つの視線に対応するためにファサードには二つのギミックを考えた。

動的視線に対しては人工的な変化
静的視線に対しては自然的な変化が

産まれるようにファサードをデザインしている。

奥に細長い空間の特性をポジティブにとらえ、それをより強調するためにエントランスから奥まで細長い道を作るプランを考えた。
その道から人々は様々なサロンの機能的な空間へと進んでいく。

建築家によるテキストより
塩塚隆生アトリエによる、大分の事務所「柳井電機工業中津オフィス」の写真と図面

塩塚隆生アトリエのウェブサイトに、大分の事務所「柳井電機工業中津オフィス」の写真と図面が掲載されています。

社会インフラ関連事業を営む企業の支店オフィスの改装計画。鉄骨造2階建ての1階部分をワンルームのオフィスとして改装し、2階は既存のまま会議室や更衣室として利用する。15Mx11Mのコンパクトな平面形状を活かして、まわりの環境と連動した執務空間をつくろうとした。敷地は、田園風景の中に溜め池やクリークが巡らされた瀬戸内海に面した平野にあり、そうした穏やかで開かれた自然環境が空間の質として感じられるようにしようとした。まず、これまでは会議室でふさがれていた、南西方向にある大きな桜の木への眺望を取り込むことで、全方向に開口された明るく風通しの良い状態をつくろうとした。水回りの位置は変えずに既存の内装材を撤去し、現れた鉄骨の躯体・天井のデッキプレートはシルバーペイント、外周まわりの壁面はグレーで塗装、接客エリアの床は既存土間コンクリートのまま、執務エリアはOAフロア現しとするなど、床・壁・天井が窓で切り取られた風景や持ち込まれる家具や人の背景となるような色調・素材を選んだ。また、水回りを囲む壁面はホワイトボードシート仕上げ、2階への階段まわりは中空ポリカーボネート板の可動壁とし、空間を分節する新たな設えには機能を付加することで空間にアクティブな影響をもたらすようにした。受付・打ち合わせを兼ねたハイカウンターや水回りのユニット、デスクやスタッフラウンジを囲うバンク、これらは室内を巡る光や風の流れを促すように、流動的で有機的な並置・形状としている。それによって人の動きが促され、部署を超えた情報の交換や業務への対応、来客との交流、執務と休憩のオン/オフのスムースな切り替えなど、オフィスにポジティブな変化をもたらすと考えた。現しになった柱・梁に沿って設けたラワン合板によるモールディングは、その流動的な執務空間の秩序、活動のための補助線となっている。

森田悠紀 / 森田悠紀建築設計事務所による、東日本の住宅「L-house」
森田悠紀 / 森田悠紀建築設計事務所による、東日本の住宅「L-house」 photo©西川公朗
森田悠紀 / 森田悠紀建築設計事務所による、東日本の住宅「L-house」 photo©西川公朗
森田悠紀 / 森田悠紀建築設計事務所による、東日本の住宅「L-house」 photo©西川公朗

森田悠紀 / 森田悠紀建築設計事務所が設計した、東日本の住宅「L-house」です。

とある郊外に建つ住宅である。周辺には僅かに畑が残り、長閑な雰囲気が感じられる環境であった。

2台分の駐車場を確保するという条件と、解体を行なった既存家屋の半地下駐車場の範囲について、地盤を考慮し庭として計画することにより、コンパクトな庭を囲むL字型の配置・平面計画となった。

1階では庭を囲む様にダイニング、リビング・和室を配置し、アプローチを含めて庭を3方向から眺めることが出来る。また、高度斜線による高さ方向の制限に対して、キッチン及びリビング・和室の床の高さを下げることで天井高さの確保と、スケールの変化を生み出した。このことにより、それぞれの場所がL字型のワンルームの一部でありながらも、異なるスケールと庭への眺めを持つ居場所となる。

建築家によるテキストより
日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第2回 藤原徹平・前編 「まずモノクロームから考えてみる」
日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第2回 藤原徹平・前編 「まずモノクロームから考えてみる」

本記事は学生国際コンペ「AYDA2020」を主催する「日本ペイント」と建築ウェブメディア「architecturephoto」のコラボレーションによる特別連載企画です。4人の建築家・デザイナー・色彩計画家による、「色」についてのエッセイを読者の皆様にお届けします。第2回目は建築家の藤原徹平氏に色彩をめぐる思考について綴っていただきました。

 
まずモノクロームから考えてみる

text:藤原徹平

 
 
両親が映画好きだったから、家のテレビではよく小津安二郎や黒澤明といった巨匠のモノクロームの映画がかかっていた。モノクロームの映画は、水墨画を見るような面白さがあって、ドラマを追うというよりも画面をボウっと見ること自体に気持ちよさがあった。
 
モノクロームの映像では色の情報がなくなり、明度だけの表現になるため、人間の認識は光の濃淡、粒度、速度などに集中していく。光は波であり粒子でもある。人間にとって、色とは光の波を認識する信号だから、色のないモノクロームで見ることとは、光の粒子としての性質だけを見るラディカルな方法となる。

実際に小津安二郎や黒澤明のモノクローム映画を見ると、画面に映るものが非常に大胆だが、それはモノクロームのラディカルさ故かもしれない。
例えば小津の『東京物語』(1953年)では、タイトルバックで麻布のようなものを映している。これがカラー映画であればあまりにも貧相で成り立たないだろう。しかしモノクロームでは、麻のテクスチュアが美しい光の濃淡を生み出す道具として機能しており、どこか現代美術のようでもあるし、本の装丁のような上品さも感じる。文学作品のような静かさにごまかされてなかなか気づかないが、小津の構図やカット割は、いつも思い切りがよい。小津の大胆さはあれこれ迷わないところにあると言えるが、自分で決めたカメラの原理を徹底して貫いていくことと、モノクロームであることとが相まって俳句のような形式美が生まれている。
 
光のテクスチュアという視点で見ると、黒澤明のモノクロームの扱いは小津とは対照的で、形式美というよりも現象的な面白さがある。黒澤映画はなんといっても雨のシーンの迫力が抜きん出て凄い。その代表的なものに『七人の侍』(1954年)があるが、モノクロームの暗い画面では、光を反射する雨粒は白い輪郭を持つため、画面全体が雨によって白く靄がかかる感じになる。膨大な量の水をつかって撮影しているが、雨の形や速度が白い輪郭の波として映り込んでおり、それらの光の粒の動きに見惚れているといつのまにか画面に引き込まれてしまう。
 
カラーの映画が当たり前になってからも、あえてモノクロームで、光の粒の動きを撮ろうという映画監督もいる。最近では三宅唱監督が2010年公開の長編デビュー作『やくたたず』をモノクロームで撮っている。この映画は冬の札幌を舞台にしているのだが、わざわざモノクロームで撮ろうというだけあって、画面の美しさは際立っている。高校生の真っ黒な学ラン、冬景色の札幌、吹雪、冬の北海道の海景色、ドラム缶のたき火、それらすべてが光のテクスチュアとして記録されている。

麻生征太郎建築設計による、愛知・岡崎市の、木造平屋住宅の改修「岡崎の住宅」
麻生征太郎建築設計による、愛知・岡崎市の、木造平屋住宅の改修「岡崎の住宅」 photo©朴の木写真室(木村昴貴)
麻生征太郎建築設計による、愛知・岡崎市の、木造平屋住宅の改修「岡崎の住宅」 photo©朴の木写真室(木村昴貴)
麻生征太郎建築設計による、愛知・岡崎市の、木造平屋住宅の改修「岡崎の住宅」 photo©朴の木写真室(木村昴貴)

麻生征太郎建築設計が設計した、愛知・岡崎市の、木造平屋住宅の改修「岡崎の住宅」です。

木造平屋住宅の改修計画である。

施主は70代の夫婦。
40年前にこの住宅を建てたが、現在は別の住まいで暮らし、この場所は夫婦が営む、近所の子供達を対象としたピアノ教室、書道教室として使っている。

教室を続けながら、再びこの家で暮らすことを考え、部分的な間取りの変更、仕上げ・住設機器の一新を要望された。玄関から直接つながる西側の2室は、既存のまま書道教室として使い、東半分が今回の計画対象となった。躯体の状態が良かったこともあり、そこには手を入れず、間仕切り・仕上げの位置を調整することでプランをつくっていくことになった。

敷地周辺は住宅が建ち並んでいるが、都心ほど建て詰まっている訳ではなく、既存住宅が持つ開口部は、どの立面においても有効に機能しているように思われた。それら開口部からの光や風が、開口を持つ部屋だけでなく、隣り合う部屋、建物全体で感じられるように、部屋の出入り口や壁の位置を調整していった。

建築家によるテキストより
園田慎二 / SSAによる、群馬・高崎市の、既存ビルを改修したアートギャラリー「rin art association」
園田慎二 / SSAによる、群馬・高崎市の、既存ビルを改修したアートギャラリー「rin art association」 photo©Shinya Kigure
園田慎二 / SSAによる、群馬・高崎市の、既存ビルを改修したアートギャラリー「rin art association」 photo©SSA
園田慎二 / SSAによる、群馬・高崎市の、既存ビルを改修したアートギャラリー「rin art association」 photo©Anna Nagai

園田慎二 / SSAが設計した、群馬・高崎市の、既存ビルを改修したアートギャラリー「rin art association」です。

群馬県高崎市の現代美術を扱うアートギャラリーの計画である。もとは3階建てのほぼ立方体ヴォリュームで、周辺に向けて均等に窓のある綺麗な立面の事務所ビルである。それを全面的に改修し、3つの異なる空間をもったギャラリーへと変容させた。

展示スペースへ至る出入口には、白い塗装で一様に仕上げられた空間に対して、硬く冷たい人工大理石の三方枠を結界として設けた。また、外壁サッシの額縁には、ガルバリウム鋼板の額縁を設けることで、ブラインドの隙間から漏れる外光は、結晶粒による模様に反射し室内に滲み出る。枠の奥行や素材が、壁の厚みを示し、更には部屋とその外側との「距離」を示す。そのようにして、展示スペースと、その外側との距離を、建具枠を通して推し量ることができる。

最上階では、屋根の一部をくりぬき、塔屋を設け、ハイサイドからの明かりを取り込むようにした。塔屋内の曲面天井を通じて、光は柔らかく拡散する。展示壁に向き合う際に、視線からほんの少し遠い頭上から、明かりが静かに部屋に注ぐ。感じられる外部と部屋とのあいだに一定の距離を保つような採光とした。

建築家によるテキストより
萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studioによる、東京・世田谷区の、集合住宅の住戸改修「北沢のリノベーション」
萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studioによる、東京・世田谷区の、集合住宅の住戸改修「北沢のリノベーション」アトリエ photo©黒坂明美
萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studioによる、東京・世田谷区の、集合住宅の住戸改修「北沢のリノベーション」三方枠。 photo©中村絵
萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studioによる、東京・世田谷区の、集合住宅の住戸改修「北沢のリノベーション」寝室。 photo©中村絵

萬玉直子+鎌谷潤 / b-side studioが設計した、東京・世田谷区の、集合住宅の住戸改修「北沢のリノベーション」です。

世田谷の閑静な住宅街にある築 50 年の自邸マンションのリノベーションである。

標準の住戸スパンに合わせて耐力壁があるラーメン構造で、この住戸では全体の空間を 1:2 で分割するように耐力壁が位置している。その両空間をつなぐのは 幅900 mmの開口のみという特殊な構成であった。50㎡の西の空間は、バルコニーに面して南面にのみ開口がある一方、30㎡の東の空間は南・東・北面に開口があり、東に隣接してテラスがある。その両空間の光、風、熱環境の強いコントラストが印象的であった。

そこで、そのコンテクストをもとに、西の空間に LDK・水回り・寝室等の生活する上での最低限の機能をすべて集約し、東の空間は棚と机だけを用意した。

それぞれの空間を〈A 面〉〈B 面〉と呼ぶこととした。

仕上げも対比的で〈A 面〉は床をウールカーペット、壁・天井は躯体を白色に塗り上げ、一部タイルを施し解像度の高いインテリアとしたのに比べ、〈B 面〉は床にフレキ、壁は既存プラスターをサンダー掛けするにとどめ、天井はクロスを剥がしたままであっけらかんとしている。

両空間をつなぐ開口部には奥行き850mmのゲートを施し、空間として連続させながら、体験的、視覚的に緩やかに分節した。

建築家によるテキストより

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