熊木英雄+眞木励 / オーガニックデザインが設計した、埼玉・戸田市の「くぼみアパートメント / 街のポケット」です。
コロナ禍に設計された単身者用集合住宅です。建築家は、“孤立”の回避に貢献する建築を目指し、住人が交流できて街とも繋がる“くぼみ”の様な庭を中心とした構成を考案しました。また、住戸部分では衛生面と地域性に応える仕様も追求されています。
設計依頼を受けたアパートの計画地は、ベッドタウンの最寄駅から程よい距離の住宅地に位置し、東西南と住宅や集合住宅に囲われ、北側が道路に面した敷地であった。近くには大きな病院や看護学校があるため、そこで働くスタッフや都内の大学に通う学生向けワンルームのニーズがあると考えていた。しかし、すでに近隣にアパートメーカーが建設した数多くのワンルームアパートが点在していた。
設計で目指したことは「単身者同士が同じ屋根の下でお互いを気遣いながら生活ができる」。また、「住人同士でコミュニケーションが取れ、孤立しないような住戸の関係づくり」とした。
その設計主旨については、コロナ禍に設計をしていたこともあり、孤独死や助けを呼べない無関心な近隣関係などの問題、また昨今のやるせない事件などでは「孤立してしまう」ことで、妄想などの一人歩きなどが起因し事件を起こしてしまうことなど、だれかに相談できていれば、話し相手がいれば回避できている事も、期せずして「孤立してしまう」ことが起因する。このような社会問題を考慮し、街の住環境にも、他人と挨拶ができたり、話すきっかけができる場を持つ計画に至った。
そこで、オーソドックスではあるが、住人同士が語らえる場として中庭を中央に囲う形を提案した。この中庭が、住人だけでなく街の人とも繋がり合える、「単身の孤立」から「繋がり」へと変換できるような空間となることを目指して模索した。
本計画がコロナ禍の2020年8月から始まったこともあり、単身者の暮らしのあり方や生活習慣、そして「シェアすること」について考えを巡らせ、シェアの仕方にも配慮した。