中川エリカの、TOTOギャラリー・間での建築展「JOY in Architecture」の会場写真 photo©architecturephoto
中川エリカの、TOTOギャラリー・間での建築展「JOY in Architecture」の会場写真 photo©architecturephoto
中川エリカの、TOTOギャラリー・間での建築展「JOY in Architecture」の会場写真 photo©architecturephoto
中川エリカ の、TOTOギャラリー・間 での建築展「JOY in Architecture 」の会場写真です。展覧会の会期は2021年1月21日~3月21日。こちらのページからの事前予約制 で開催 されます。
以下に、本展をレポートします
本展ではギャラリー・間の3つのスペース(下階・中庭・上階)毎に異なるコンセプトでの展示が行われていてる。下階のGallery1では「設計の現場 2014年以降、設計の現場で活用されてきた模型・ドローイング群」が展示されている。中川によれば、これらの模型は展示用に制作されたものではなく、実際の建築設計の現場で使われたものを運び展示したのだという。
中川にとって模型はプレゼンテーションの為のものだけではなく、設計そのものに必須なツールだと言う。筆者との対話の中で語られたのは、設計に取り組む際に、図面を描く以前に、模型を作り始め、そこで検討したものを図面化するというプロセスであった。またそのマテリアルはプロジェクトごとに変わるのだという。そこでポイントになるべき事柄に合わせて模型の材料やスケールが決定するのだそうだ。
また、いわゆるヴォリューム模型がないことも印象的であった。中川によれば、外部と内部を分けるのではなく、同時に思考していくためにヴォリューム模型での検討はあまり行わないのだと言う。確かにそう聞いて桃山ハウスの模型を目にすると、ヴォリュームでありながらも柱等の要素が独立しつつ内外をつないでいる空間の特質は、このようなスタディから生まれているのだと納得感がある。
実際に、そのような背景を聞いたうえで、Gallery1に展示されている模型群を眺めてみると、その多様さに驚かされる。非常に作りこまれているが、精度高く作られているというよりも、模型を眺めていて思いついたアイデアをその場で反映できるようなラフさを持った模型のように見える。それは、展示物として見ていても、その背景にある設計の思考やプロセスを閲覧者に伝える余白を持った模型のように感じられた。
展示されている模型の中には、本展示の配置をスタディした模型も展示されており、自身が現在いる空間、展示がどのように構想されたのかを想像することもできる。
中庭、COURTYARDでは「冬の庭 風・光をコントロールする縄屋根と、スケール・材料を統一した模型群が作る居場所」と銘打った展示が展開されている。
縄屋根によって、開放性の高い中庭の空間が、内部化したようにも感じられる。また展示されている模型は、先のGallery1とは異なり、今回の展示の為に素材とスケールを統一し新たに作られたものだそう。中川事務所のスタッフとの対話の中で語られたのは、過去のプロジェクトを新たに模型化する作業の中で、それぞれのプロジェクトを読み込む必要があり、改めて自社のプロジェクトを理解する手掛かりにもなったとの事。
上階のGallery2では、中川エリカの今後の展望や思考を表明するような展示がなされている。
「都市スタディのオルタナティブ 南米チリの6都市で行った、野外什器を手掛かりに居場所を見い出す人々のリサーチと、その後の設計への展開」と説明されている。
具体的には、事務所全体で行ったチリでのリサーチトリップの成果と、そのリサーチをから得られたものをアウトプットしているという現在進行中の国内でのプロジェクト(クリニック)の模型が展示されている。リサーチと銘打ってはいるが、大きなスケールでの模型が制作展示されており、空間採集のようにも感じられる内容となっている。
本展のタイトルが「JOY in Architecture」となっているように、ここでみられる模型群からは確かに「喜び」が感じられる。我々がみているのは展示物としての模型だけれど、じっくりと眺めていると、これらが、中川らの手によって試行錯誤され、アイデアが発展していくプロセスや、その時の事務所内でのテンションの高いやり取りが、頭に浮かんでくるようだった。
多様なマテリアルで作られた模型から、建築を設計することの根源にある、つくる喜びを思い起こさせてくれる展覧会であり、是非実際に足を運んでほしいと思う。