山田誠一建築設計事務所が設計した、静岡の住宅「沼津の家」です。
計画地は静岡県沼津市の中心部、周囲には住宅が建て込み、高等学校が見下ろすように建っている.
隣接する住宅郡は、新旧含めておおよそ工業製品に覆われたつくりであり、高等学校はRC造で、塀越しにCB造+折板屋根のガスボンベ庫、金属ゴミ置場、駐車場が隣接している.見える範囲の近隣地にはコンテナが無造作に置かれ、周囲に緑はほとんどない.
これら周辺環境からマテリアルを選定したり、空間構成を導き出していくことは間違ってはいない.だが、コンテクストへの応答という思考の流れだけに終始してしまうと、いつのまにかクライアントを置き去りにしたり、何より建築の奥行きのようなものが失われてしまうと常々感じている.コンテクストを読み解くことと同時に、人の感情に作用するような建築のつくられ方を考えたい.
ここで試みたのは、周辺のコンテクストから空間構成や架構などを読み解くと同時に、この場所において直接的なコンテクストにはなりにくく、また人の触覚に作用する素材ーここでは木材を選定ーから寸法体系やディテールを検討し、その両方が融合する状態を求めていった.安価で耐久性のある樹種、手に入りやすい歩掛かりの良い寸法、表情あるテクスチャーなど木材単体のコンテクストを抽出・検証し、30mm×60mm×900mm赤身杉材を環境を読み解く為のひとつの単位とした.