SHARE 杉本博司と榊田倫之による新素材研究所のモノグラフ『Old Is New 新素材研究所の仕事』をプレビュー
現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之による新素材研究所のモノグラフ『Old Is New 新素材研究所の仕事』がamazonで発売されています。本記事では書籍の中身をプレビューします。
こちらは杉本が本書籍に寄せたテキスト。
表紙の絵柄について
この本のジャケットには抽象画が採用された。しかしこの絵は初めから抽象画として描かれたものではない。それは偶然に絵となったものだ。私は熱海にあるMOA美術館全面改修にあたって、全長17メートル、高さ4メートルの壁を6面、日本の伝統工法である黒漆喰でおおうことにした。漆喰は土だ、そしてコテで塗られる。現代建築は乾いた材料を好む。しかし伝統工法は湿式工法が多い。この巨大な壁面を目地なしで仕上げるには1面を1日で終わらせなければならない。熟達の職人が3人集められた。1人ひとりコテの運びが違う。伝統工法を用いてこれだけの巨大面を仕上げたことは、日本建築史上ないのではないかと自負している。漆喰そのものが稀になった現在、普通は白の漆喰に炭の粉を混ぜて黒にするのはさらに稀だ。乾くのに時間がかかる。数日後、その面に立ち現れたのはほぼ無意識のコテの痕跡だ。私はそこに意識を超えた美しさを見出すのだ。大昔、人が意識と無意識の狭間で描きはじめた洞窟壁画もこのようにはじまったのに違いない。
Old Is New、忘れられた古代の魂、私は現代にあって、その魂の姿をもう一度見てみたいのだ。
(杉本博司)
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こちらは書籍の目次です。
プロローグ:新素材研究所創業記
イントロダクション:杉本博司・榊田倫之
ポートフォリオ:杉本撮影による写真とともに作品を紹介
素材と工法:石・木・壁・屋根・窓・庭をテーマに
作品解説:作品図面とともに詳細に解説
参考資料:用語解説ほか
◎主な掲載作品
究竟頂/ 茶洒 金田中
ゲストハウス「 和心」
個人邸「浮き壺」
茶室「遠山居」
MOA美術館
硝子の茶室「聞鳥庵」 ヴェネチア / ヴェルサイユ / 京都
きよ田 離れ
茶室「今冥途」
ロンドンギャラリー 白金 / 六本木
茶室「うちはそと」
Izu Photo Museum
ハーシュホーン・ミュージアム:ロビー改修
江之浦測候所
杉本博司
1948年東京生まれ。現代美術作家。1970年渡米、1974年よりニューヨーク在住。活動分野は、写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐にわたり、世界のアートシーンにおいて地位を確立。作品は世界有数の美術館各所で収蔵されている。2008年榊田倫之と建築設計事務所「新素材研究所」設立。2009年高松宮殿下記念世界文化賞、2010年紫綬褒章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ、2017年文化功労者など受賞受章多数。榊田倫之
1976年滋賀県生まれ。建築家。2001年京都工芸繊維大学大学院建築学専攻博士前期課程修了後、株式会社日本設計入社。2003年榊田倫之建築設計事務所設立。2008年現代美術作家・杉本博司と新素材研究所を設立。現在、榊田倫之建築設計事務所主宰、京都芸術大学非常勤講師、宇都宮市公認大谷石大使。杉本博司のパートナー・アーキテクトとして数多くの設計を手がける。2019年第28回BELCA賞受賞。
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■書籍概要
出版社:平凡社 (2021/3/5)
発売日:2021/3/5
言語:日本語
単行本:400ページ
制作協力:株式会社 LIXIL
ISBN-10:4582544703
ISBN-13:978-4582544701
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※日英同時発売
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英語版
Lars Mueller Publishers
ISBN:978-3-03778-646-8