中本尋之 / FATHOMが設計した、広島・東広島市の「金光酒造 蔵元販売所」です。
隣接の登録有形文化財である酒蔵の水平ラインを意識し踏襲しつつ、一部を隆起させたラインが特徴的な外観となっています。店舗の公式サイトはこちら。
広島県東広島市黒瀬町にある創業明治13年から続く金光酒造の直売所の改修工事。
国道沿いから見える登録有形文化財である酒蔵の大きな壁面を初めて見たときに酒造りの歴史が積み重なった地層を見ているように感じた。
焼杉の羽目板貼りに漆喰と街の特徴の一つである赤煉瓦の屋根。
三つの素材が重なっていくことでその境界に現れる二本の線。伝統を長い間守り積み重ねることで生まれた美しい水平ライン。隣接する直売所は酒蔵から続く水平ラインを意識しつつ、一部分が有機的に隆起する新しいラインを作り上げた。
既存建物の少し飛び出ていた庇部分を下方向によりボリュームを持たせラインを作っている。日本酒は神のために造られ始めたといわれている事から、神社や仏閣を連想させるように漆喰で仕上げた。この空間内に接する起点であるエントランスの部分のラインを隆起させる事で、これから直売所に訪れるすべての人々が蔵の伝統や歴史に新たな1ページを加える起点になるようにと思いを込めた。
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以下、建築家によるテキストです。
広島県東広島市黒瀬町にある創業明治13年から続く金光酒造の直売所の改修工事。
国道沿いから見える登録有形文化財である酒蔵の大きな壁面を初めて見たときに酒造りの歴史が積み重なった地層を見ているように感じた。
焼杉の羽目板貼りに漆喰と街の特徴の一つである赤煉瓦の屋根。
三つの素材が重なっていくことでその境界に現れる二本の線。伝統を長い間守り積み重ねることで生まれた美しい水平ライン。隣接する直売所は酒蔵から続く水平ラインを意識しつつ、一部分が有機的に隆起する新しいラインを作り上げた。
既存建物の少し飛び出ていた庇部分を下方向によりボリュームを持たせラインを作っている。日本酒は神のために造られ始めたといわれている事から、神社や仏閣を連想させるように漆喰で仕上げた。この空間内に接する起点であるエントランスの部分のラインを隆起させる事で、これから直売所に訪れるすべての人々が蔵の伝統や歴史に新たな1ページを加える起点になるようにと思いを込めた。
もう一つのラインはエントランスを中心に左右で機能を分けている。向かって右側は明治初期の酒屋が道に隣接して縁側から直接上がれるようなつくりだった文献を目にして、同じように縁側の機能を持たせたベンチをL型に作っている。
入り口左側は窓台を人研ぎで仕上げ、廃棄予定の日本酒のガラス瓶を砕いて混ぜて研ぐことによって近代の技術であるガラスを化石のように歴史の地層に封じ込めた。
内部空間は異なる素材を有機的なRラインで形成することで、発酵タンク内において泡が重なり合い増殖していく姿を目にした時に感じた透明な液体の持つ目には見えない生への躍動感を空間に表現している。素材は煙突の煉瓦や杜氏が着ける藍色の前掛け、銅板や亀甲金網など酒蔵において自然と取り入れられているマテリアルをそれとは異なるの使用用途として転換させている。
畑に囲まれた穏やかな水平ラインに生まれた小さな“ふくらみ”。
これは受け継がれてきた長い歴史を守りながらまだ見ぬ新しい景色に挑戦し続けている杜氏への思いの現れだと思う。
この想いが新しくできた隆起を起点にアンテナのように波紋状に広がってくれればと願っている。
■建築概要
クライアント:金光酒造 合資会社
計画地:広島県東広島市黒瀬町乃美尾1364-2
用途:酒屋
設計:FATHOM 中本尋之
SIGN & LOGO:久保章(guide)
GREEN:大塩健三郎(GREEN UNION)
特注金物:賀茂クラフト
塗装:Shono paint works
施工:松原ハウジング
竣工年:2021年7月
計画面積:32.2㎡
撮影:足袋井竜也(足袋井写真事務所)
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・壁 | 外壁 | ラスカット下地漆喰金コテ押さえ
ラスカット下地補修材金コテ押さえ一部エイジング塗装
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外装・屋根 | 庇 | 亜鉛メッキ鋼板2mm曲げ ウレタン塗装
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内装・床 | 床 | 既存フローリング 藍色染色
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内装・壁 | 壁 | ラスカット下地泥壁仕上げ一部亀甲金網貼り
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内装・造作家具 | タイル | モザイクタイル ラティスボーダー(Tile Life)
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内装・造作家具 | バックカウンター | 木下地パーティクルボード組
天板:フレキシブルボードt=8mmクリア塗装
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内装・造作家具 | ベンチシート | ウレタン下地ファブリック巻き込み(ニート)
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