齋藤隆太郎 / DOGが設計した、東京・世田谷区の「代田の屏風長屋」です。
施主邸を含む4戸の木造長屋計画、住戸間遮音を考慮し境界沿いに建物を配置した上で南側を平屋とし中庭への採光を確保、中庭を規定する“ジグザグ屏風壁”は公私の調整・景観向上・構造安定の役割も担います。
本計画は、世田谷区代田に建つ、オーナー邸を含む4戸の長屋計画である。元々北側隣地を含めて200坪の土地に建っていた幼稚園を解体し、分割相続したことで100坪のまとまった比較的整形の敷地を手に入れ、自宅兼賃貸住宅を建てることとなった。
容積率を食い切る必要がなかったことと、木造長屋の弱点ともいえる住戸間遮音の観点から、敷地ペリメータに建物を配置し、かつ建物南側を平屋建てとすることで、各戸へのアプローチ空間でもある中庭空間に十分な光が差し込む構成とした。
また敷地に自生している金木犀や銀木犀、枇杷や柿の木などを避けながら、各戸のボリュームを一筆描きのジグザグ屏風壁でなぞることで、構造的な安定を付与しながらも、ジグザグ屏風型による中庭への開閉操作が、住戸のパブリック・プライベートと同期する。さらにグリッド的ではなく、角度のついた配置が中庭の景観に味わいを与えるとともに、延焼線に掛からないよう開口部位置を調整しつつ(防火設備回避)、東京都安全条例による「2m以上の有効避難通路幅」を確保し、「3戸を超えて避難経路(今回は中庭)を共有すると準耐火建築」を回避するなど、法条例的側面にも一役買っている。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地ペリメータの配置計画による住戸間遮音と中庭
本計画は、世田谷区代田に建つ、オーナー邸を含む4戸の長屋計画である。元々北側隣地を含めて200坪の土地に建っていた幼稚園を解体し、分割相続したことで100坪のまとまった比較的整形の敷地を手に入れ、自宅兼賃貸住宅を建てることとなった。
容積率を食い切る必要がなかったことと、木造長屋の弱点ともいえる住戸間遮音の観点から、敷地ペリメータに建物を配置し、かつ建物南側を平屋建てとすることで、各戸へのアプローチ空間でもある中庭空間に十分な光が差し込む構成とした。
また敷地に自生している金木犀や銀木犀、枇杷や柿の木などを避けながら、各戸のボリュームを一筆描きのジグザグ屏風壁でなぞることで、構造的な安定を付与しながらも、ジグザグ屏風型による中庭への開閉操作が、住戸のパブリック・プライベートと同期する。さらにグリッド的ではなく、角度のついた配置が中庭の景観に味わいを与えるとともに、延焼線に掛からないよう開口部位置を調整しつつ(防火設備回避)、東京都安全条例による「2m以上の有効避難通路幅」を確保し、「3戸を超えて避難経路(今回は中庭)を共有すると準耐火建築」を回避するなど、法条例的側面にも一役買っている。
こうした囲まれながらも明るく不思議なスケールを持つ中庭から連続するように各戸の玄関を設け、「住戸C」は特に広い玄関土間とすることで、中庭に開いた店舗として利用できる構成とし、多様性のある住戸と中庭の関係性をつくり出している。
賃貸コーポラティブという手法
オーナー邸以外は通常の賃貸住宅として設計していた矢先、計画段階で「住戸D」に入居したいという申し出を受けたことから、賃貸コーポラティブという特殊な設計が始まった。筆者HPに計画案を公開していたことから、それを見た入居希望者とオーナーをつなぎ合わせ、設計変更に関わる部分は入居希望者が金額を負担し、5年は住み続けることを条件に賃貸借契約を結ぶとする覚書を締結した。
結果的に、躯体に関わる部分は不変として、雑壁や内装に加え、水廻りの位置や階段も変更したため申請上計画変更となったが、賃貸ならではの汎用性のあるデザインに落とし込み、かつ全体の統一感を損なうことなく設計をまとめた。
東京都心の地価は高止まり状況にあり、若年層が戸建て住宅を所有しにくい中で、都心の高立地に「一時金」という形で工事金額を一部負担し、長期にわたって借りて住み続けるという賃貸コーポラティブというあり方に、都心居住の新しい可能性を感じた。
■建築概要
建物名称:代田の屏風長屋
用途:長屋
敷地:東京都世田谷区
設計:齋藤隆太郎/DOG
構造:田中哲也建築構造計画
施工:ダブルボックス
構造規模:木造/地上2階
敷地面積:297.13㎡
建築面積:146.32㎡
延床面積:236.44㎡
設計期間:2018年12月~2020年10月
工期:2020年10月~2021年3月
写真:中山保寛