元木大輔 / DDAAが設計した、東京・台東区の、ショールーム兼オフィス「Hender Scheme Kuramae」です。
服飾ブランド運営企業の為に計画、“韻を踏む様な作り方”を目指してブランドの姿勢から導いた“切りっぱなし”等の3つのルールを徹底して設計、白でも黒でもないグレーの諧調の中にある価値観を探求が試みられました。施主企業の公式サイトはこちら。
蔵前駅からほど近いコンクリート造のビルをまるごと1棟エンダースキーマやポリプロイドなどを運営するlaicoS(ライコス)のショールームとオフィスに改修するプロジェクトだ。
このスペースにはいくつかの簡潔で明確なルールがある。1つは素材のバリ取りなどはするが、大幅な端部処理をせず、切りっぱなしで使うこと。2つめは色合わせをできるだけせずに、素材の色をできるだけそのまま使うこと。3つめは、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、チープ/ラグジュアリーといった対極の存在を、できるだけ等価に扱う、ということだ。
最初の2つの「切りっぱなし」と「素材の色」はエンダースキーマが用いるベジタブルタンニンレザーをDDAAなりに翻訳した特徴で、3つめは、彼らのクリエーションから感じることのできる「作り方」から着想したルールだ。
ところで、プロジェクトが終わったあとにライコスが出版した書籍「principle(プリンシプル)」に、このような一文があった。
黒か白もしくは、エキストリームな意見でないと人に届きづらい今だからこそ、ひっくり返したり角度を変えたりしながら、グレーのグラデーションの中にあるまだ見ぬ揺れ方向を提示していきたい。
星付きレストランと赤ちょうちんはどちらが良いという訳ではなく、両方とも美味しいし、楽しい。そこにはコンセプト、つまり、楽しみ方や視点の違いがあるだけだ。ハイ/ロー、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、両方の良さがあって、どちらかに偏ることなく無数のグレーのグラデーションの中にある新しい視点や価値観を考え続けたい。
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以下、建築家によるテキストです。
蔵前駅からほど近いコンクリート造のビルをまるごと1棟エンダースキーマやポリプロイドなどを運営するlaicoS(ライコス)のショールームとオフィスに改修するプロジェクトだ。
このスペースにはいくつかの簡潔で明確なルールがある。1つは素材のバリ取りなどはするが、大幅な端部処理をせず、切りっぱなしで使うこと。2つめは色合わせをできるだけせずに、素材の色をできるだけそのまま使うこと。3つめは、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、チープ/ラグジュアリーといった対極の存在を、できるだけ等価に扱う、ということだ。
最初の2つの「切りっぱなし」と「素材の色」はエンダースキーマが用いるベジタブルタンニンレザーをDDAAなりに翻訳した特徴で、3つめは、彼らのクリエーションから感じることのできる「作り方」から着想したルールだ。変哲もない箱や封筒、簡易的な包装など、日常的で見慣れたプロダクトを、丁寧な技術とレザーでデザインするエンダースキーマのクリエーションと韻を踏むような作り方をしたいと考えた。もちろんルールの設定だけではなく、その作り方や姿勢に共感しているからだ、ということも大きい。
なので、もともとスケルトン状態だった壁は、できるだけそのままにする。壁際にぐるりと回っている棚板やパーテーションはグレーのポリランバーを切りっぱなしで使い、小口が印象的になるようにしている。事務室とミーティングルームを仕切っているパーテーションのガラスのうちの一枚は、実は鏡になっていて、事務室から見えるグレーの面は、鏡の裏面をそのまま仕上げとして使っている。
鏡とガラスは同じ厚みになっているので、ガラスと同様に切りっぱなしで端部にシールをせずに納める。ガラスと鏡は、レザーをワッシャー代わりに使うことでビスを直接押さえて固定している。コンクリートの壁の露出の電気配線も同様に、丁寧に配線してもらったFケーブルを切りっぱなしのレザーで固定している。ミーティングルームの家具は、足場用の単管パイプで組んだ脚にガラスを乗せたテーブルと、エンダースキーマによるレザー張りのパイプ椅子だ。
外壁側の棚は普段は書類用のオープン棚として使い、年に2回ある展示会の時に目隠しができるようになっている。建具のように複雑な加工をせず、やはり切りっぱなしのポリカーボネート板をマグネットで取外しできる作りだ。軽く、半透明なので圧迫感もなく、なにより元々あまり大きくない窓からの光を遮ることもない。
レイアウトを変えることでデスクとしてもミーティングテーブルとして大きなテーブルは、長手が3m以上ある大きなサイズの構造用合板を使用している。主に建築の構造材として使われることが素材のため、接合部も木造住宅の在来工法用の金物で固定した。材のサイズ故にデスクの奥行きが700mmしかとれないので、中央部にスリットを設けて電源配線用のスペースとしている。コンセントまでの配線は、やはり切りっぱなしのスチールの角パイプを使って、長手方向の梁と配線用のスペースとして機能させている。
ところで、プロジェクトが終わったあとにライコスが出版した書籍「principle(プリンシプル)」に、このような一文があった。
黒か白もしくは、エキストリームな意見でないと人に届きづらい今だからこそ、ひっくり返したり角度を変えたりしながら、グレーのグラデーションの中にあるまだ見ぬ揺れ方向を提示していきたい。
星付きレストランと赤ちょうちんはどちらが良いという訳ではなく、両方とも美味しいし、楽しい。そこにはコンセプト、つまり、楽しみ方や視点の違いがあるだけだ。ハイ/ロー、クラフト/インダストリアル、表/裏、人工/自然、両方の良さがあって、どちらかに偏ることなく無数のグレーのグラデーションの中にある新しい視点や価値観を考え続けたい。
■建築概要
施主:laicoS
所在地:東京都台東区
用途:オフィス、ショールーム
設計:DDAA
プロジェクトチーム:元木大輔 / 角田和也
施工:プランテック
延床面積:498.45m²
完成:2021年5月
撮影:長谷川健太