SHARE 第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示が、大西麻貴がキュレーターを務める「愛される建築を目指して」に決定。キュレーターのステートメントに加え提案書の内容も紹介
第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示が、大西麻貴がキュレーターを務める「愛される建築を目指して」に決定しています。キュレーターのステートメントに加え提案書の内容も紹介します。
国際交流基金は、2023年5月20日(土)から11月26日(日)にかけて、イタリア・ヴェネチアにおいて開催される「第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」の日本館展示を主催します。このたび、展覧会概要が決定しましたので、 お知らせいたします。つきましては、貴媒体でのご紹介やご取材を何卒よろしくお願い申し上げます。
第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館 概要
タイトル:愛される建築を目指して(英題:Architecture, a place of mind)
主催/コミッショナー: 国際交流基金
キュレーター:大西麻貴(建築家、一級建築士事務所 大西麻貴+百田有希 / o+h 共同主宰)
副キュレーター:百田有希(建築家、一級建築士事務所 大西麻貴+百田有希 / o+h 共同主宰)
出展メンバー:
森山茜(テキスタイルデザイナー・アーティスト)
水野太史(建築家、水野製陶園ラボ代表)
dot architects(建築家)
高野ユリカ(写真家)
原田祐馬(デザイナー、UMA/design farm代表)
多田智美(編集者、MUESUM代表)
指名コンペに参加していた6名と展覧会テーマはこちら。
- 大西麻貴による「愛される建築を目指して」
- 腰原幹雄による「大工と構造家」
- 杉本博司による「白井晟一 原爆堂」
- 田根剛による「LOST MODERN:近代の喪失 ―建築はこの先、生き残れるかー」
- 西牧厚子による「アーカイブを駆動せよ 建築雑誌100年から浮かび上がるコンステレーション」
- 原田真宏 / 原田麻魚による「大きさについて | m3:kg」
以下に、提案書の内容と計画案の画像、キュレーターステートメントを掲載します。
提案書の内容
以下の写真はクリックで拡大します
計画案の画像
以下の写真はクリックで拡大します
キュレーターステートメント
東日本大震災以降、地域におけるつながりや、ともにつくる大切さが見直されている現在もなお、都市では新たな開発が進み、均質で管理された空間が再生産され続けています。発注者や設計者の顔は見えず、施工は複雑・分業化し、誰も知らないところで建設が進んでいくことで、建築はますます人々から遠ざかり人々を孤立させているように感じられます。現代において、果たして建築は愛されているでしょうか。
一方で、互いの違いを認め、違いを大切にするインクルーシブな考えが芽生えてきたことで、一つの価値観が全体を覆うのではなく「個」から出発した小さな共感の輪が重なりあいながら、全体を包摂していく社会へと変化していく兆しが見られます。そのような社会では、均質化や効率化から離れた、個性的で寛容な建築が必要となるはずです。それらを仮に「愛される建築」と名付けたいと思います。
建築は通常、人や自然から離れた人工物だと思われていますが、ふとした瞬間、それらに生命が宿るように感じることがあります。例えば縄文時代の竪穴式住居や、茅葺き屋根の民家を見ていると、どこか毛むくじゃらの動物がうずくまっているような、あるいは蓑を来た旅人が一休みしているような様子を連想してしまいます。そのように、部材を組み合わせたというよりは、撫でてみたくなったり、体温が感じられたり、自分の思い通りにならないところがある、生き物のような建築を考えてみるところから、建築を捉え直せないでしょうか。
建築が自らの意志を持ってそこに佇むような、寛容であたたかく、多くの人が自然と巻き込まれる「愛される建築」の可能性を、ともに考え、深めていくことが本展示の狙いです。
愛される建築とは
分節的というよりは、有機的
組み立てるというよりは、生まれ育っていく
美しいというよりは、愛おしい
アノニマスというよりは、個性がある
人工物というよりは、生き物のような
「ある」というよりは、「いる」
大西麻貴(おおにし・まき)
1983年 愛知県生まれ、2006年 京都大学工学部建築学科卒業、2008年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2008年より「大西麻貴+百田有希/o+h」を共同主宰。
2016年~京都大学非常勤講師。2017年~横浜国立大学大学院YGSA客員准教授。2022年~横浜国立大学大学院YGSA教授
主な作品「シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)」(2022年)、「多賀町中央公民館 多賀結いの森」(2019年)、「Good Job! Center KASHIBA」(2016年)、「二重螺旋の家」(2011年)など。
主な受賞に、第2回日本建築設計学会賞大賞(2018年)、JIA新人賞(2018年)、日本建築学会作品選奨・新人賞(2019年)など。
■展覧会概要
第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 全体概要
会期:2023年5月20日(土)~11月26日(日)
会場:ジャルディーニ地区(Giardini di Castello)、アルセナーレ地区(Arsenale)など
総合ディレクター:Lesley Lokko
総合テーマ:The laboratory of the Future
公式ウェブサイト:http://www.labiennale.org