水野芳康 / 水野建築事務所が設計した、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」です。
駅前商店街の並びに建つ施設です。建築家は、地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案しました。また、半屋外空間を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる事も意図されました。施設の公式サイトはこちら。
敷地は焼津駅から伸びる駅前商店街の突き当りに位置する。
1階2階に絵本を中心に閲覧できるこども図書館を、3階4階に様々な木のおもちゃで遊ぶことのできるおもちゃ美術館が整備された焼津市ターントクルこども館は、焼津市が子育て環境のより一層の質的向上と量的拡充を図るため、乳幼児から小中高生までが集い・遊び・学べる子育て支援施設として構想された。
駅と計画地の延長線上に位置する焼津市庁舎の建て替え計画も同時期に進行していたため、点から線へ、さらには面的なまちの賑わいの創出を期待された。
外からのアプローチとしては、まちとの連続性をつくりだし、建物の賑わいが伝播するような配置計画を検討した。
駅からまっすぐに伸びる駅前商店街道路は、丁度この敷地の位置で鈍角に曲がっているため、軸線が敷地の対角線を横切る形となる。そこで、建物を対角線に沿って配置し建物と反対側を芝生広場とすることで、駅前商店街をまっすぐ歩いていくと芝生広場に行きつく計画とした。まちの流れに沿わせた建物の配置とすることで、まちに溶け込んだ建ち方となる。
また、芝生広場側のファサードは面を雁行させ、まちに対する影響範囲を増やすことで賑わいが伝わりやすい計画としている。
内部からのアプローチとしては、1、2階のこども図書館は、プログラムに対する空間の変化を建築が拾い骨格を変形させていく操作をしている。たとえば、床に座ったり寝転がったりして絵本を読む「読み聞かせスペース」は、段状に掘り下げ、天井高も低く抑えることで落ち着きのある空間としている。それに伴い2階部分の階高が低くなりスキップフロアのような空間構成となっている。
一方で3、4階のおもちゃ美術館は、企画された遊びの空間は遊具などで造られることで、テーマパーク的な世界観をつくりだしているため、極力建築的な操作は見せないフラットな空間として提供した。しかしながら、施設全体の連続性や空間のつながりをつくるために中央に貫く吹き抜け空間を設けることとした。1階のこども図書館に居ながら、3,4階に行ってみたくなるような誘う効果を意図している。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は焼津駅から伸びる駅前商店街の突き当りに位置する。
1階2階に絵本を中心に閲覧できるこども図書館を、3階4階に様々な木のおもちゃで遊ぶことのできるおもちゃ美術館が整備された焼津市ターントクルこども館は、焼津市が子育て環境のより一層の質的向上と量的拡充を図るため、乳幼児から小中高生までが集い・遊び・学べる子育て支援施設として構想された。
駅と計画地の延長線上に位置する焼津市庁舎の建て替え計画も同時期に進行していたため、点から線へ、さらには面的なまちの賑わいの創出を期待された。
建築設計は水野建築事務所が担当し、コンテンツデザインはプロポーザルで選ばれたディスプレイデザインチーム(milliondots・おもちゃ美術館・ハンドアンドデザイン・モトモト共同事業体)が担当することとなり両者のコラボレーションにより環境をつくっていく過程で、まちの賑わいをつくりだすための外からのアプローチと、プログラムを機能させるための内からのアプローチを同時進行で決めていく必要があった。
外からのアプローチとしては、まちとの連続性をつくりだし、建物の賑わいが伝播するような配置計画を検討した。
駅からまっすぐに伸びる駅前商店街道路は、丁度この敷地の位置で鈍角に曲がっているため、軸線が敷地の対角線を横切る形となる。そこで、建物を対角線に沿って配置し建物と反対側を芝生広場とすることで、駅前商店街をまっすぐ歩いていくと芝生広場に行きつく計画とした。まちの流れに沿わせた建物の配置とすることで、まちに溶け込んだ建ち方となる。
また、芝生広場側のファサードは面を雁行させ、まちに対する影響範囲を増やすことで賑わいが伝わりやすい計画としている。さらに、階ごとに雁行ラインをずらすことでピロティやテラスなどの半屋外空間をつくりだし、建物内部の賑わいが外部に滲み出すことを期待した。
建物内部から半屋外空間へ、そして芝生広場から商店街へと段階的に賑わいが伝播していくように計画した。
内部からのアプローチとしては、1、2階のこども図書館は、プログラムに対する空間の変化を建築が拾い骨格を変形させていく操作をしている。たとえば、床に座ったり寝転がったりして絵本を読む「読み聞かせスペース」は、段状に掘り下げ、天井高も低く抑えることで落ち着きのある空間としている。それに伴い2階部分の階高が低くなりスキップフロアのような空間構成となっている。
一方で3、4階のおもちゃ美術館は、企画された遊びの空間は遊具などで造られることで、テーマパーク的な世界観をつくりだしているため、極力建築的な操作は見せないフラットな空間として提供した。しかしながら、施設全体の連続性や空間のつながりをつくるために中央に貫く吹き抜け空間を設けることとした。1階のこども図書館に居ながら、3,4階に行ってみたくなるような誘う効果を意図している。
駅前商店街の駄菓子屋から流れてきたこどもたちが芝生広場を走り回り、傍ら絵本ラウンジでゆっくりと時間を過ごす親子の姿がある。カフェと2階テラスでは中高生が勉強をしているのが見える。こどもを中心とした居心地のいい空間を求める人によって賑わう風景があたらしいこの場所の日常として定着することを願っている。
■建築概要
題名:ターントクルこども館
所在地:静岡県焼津市
主用途:子育て支援施設
階数:地上4階
構造:鉄筋コンクリート造
設計:水野建築事務所(建築設計)
milliondots・おもちゃ美術館・ハンドアンドデザイン・モトモト共同事業体(ディスプレイデザイン)
担当:建築設計 / 水野芳康 安藤尚基(水野建築事務所)
ディスプレイデザイン:伊藤大貴(milliondots)吉原裕美(おもちゃ美術館) 古川哲也(ハンドアンドデザイン) 松本健一(モトモト)
施工:橋本組(建築)、建電(電気)、大洋アレスコ(空調)、青島ポンプ工業(給排水)
協力:構造設計 高田雅之(RGB STRUCTURE)
機械設備設計:山森繁(山森建築設備設計事務所)
電気設備設計:山本晋也(環設備設計事務所)
遊具デザイン:小瀬木隆典 佐藤圭(Tree to Green)
敷地面積:1,614.90㎡
建築面積:988.86㎡
延床面積:2,753.96㎡
設計:2018年5月-2019年6月
工事:2020年1月-2021年6月
竣工:2021年6月
写真:長谷川健太