architecturephoto®

  • 特集記事
  • 注目情報
  • タグ
  • 建築
  • アート
  • カルチャー
  • デザイン
  • ファッション
  • 書籍
  • 展覧会
  • コンペ
  • 動画
  • テレビ
  • すべてのタグ

建築求人情報

Loading...
2022.7.21Thu
2022.7.20Wed
2022.7.22Fri
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図

889.65河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図

architecture|feature
きまたこはるミヤザキリノベーション佐藤建設工業図面あり店舗建材(内装・壁)建材(内装・床)建材(内装・照明)建材(内装・設備)愛知河部圭佑阿部航太
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる

河部圭佑建築設計事務所が設計した、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」です。
運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジムの計画です。建築家は、地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画しました。そして、内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図しました。店舗の公式ページはこちら。

愛知県大府市に設計したお店です。
この地域の地域性を建築によって象徴すること、現代建築における装飾とその可能性を模索したプロジェクトです。
本テクストの後半では、ポストモダニズムを代表する建築家ロバート・ヴェンチューリの著作「ラスベガス」を引用しながら、近代以降の建築の象徴性について考察します。

建築家によるテキストより

プログラムについてです。
敷地ほど近くにある至学館大学で講師を務める管理栄養士の方が施主で、彼の「食育」研究の実践の場所として計画されました。

1階は、栄養食や健康食を提供するレストランで、健康づくり、スポーツ、ダイエットをする人や高齢者など幅広い人に合わせてそれぞれ考案されたメニューがあります。2階は、それに付随したトレーニングジムで、食事による栄養摂取と身体づくりとを共に学ぶことのできる、主にジュニアアスリート向けのスクールが開かれています。
1階と2階は外部階段によって繋がっているので、それぞれを単独で使うことも、連続したプログラムとして使うこともできます。

建築家によるテキストより

街に向かって降りてくる屋根に、大きなイラストレーションを設けました。イラストレーターのミヤザキさんが作成、グラフィックデザイナーの阿部航太さんがイラストディレクションを行いました。

「走る人」の抽象的な表象によって、上述したこの街の地域性を象徴しようとしました。
前面道路の角度に合わせて北側の外壁ラインと屋根が斜めに切り欠かれていますが、ちょうど地面を蹴る方の脚が、屋根の切り欠きにかかるようにイラストを配置しています。屋根の切り欠きを、陸上競技の踏切板=スターティングブロックと見立てています。建築物としての意匠と、サインとしての表象が、相互作用を持つような関係性を目指しました。

濃いグレーの背景に、白くて太い線で描かれたラインは、アスファルト上の路面標示の意匠を引用していて、街を構成する土木的なものの一部となるようにと考えました(配置図)。その方が、専有物ではなく共有物のような佇まいになると思ったからです。傾きの大きな屋根(八寸勾配)なので、離れた所から見ると壁画のように見えます。

イラストは一点物としてイラストレーターによって描画されました。お店のロゴやその他発信ツールとは別個の存在です。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 image©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 image©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 image©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 image©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図 image©河部圭佑建築設計事務所

以下、建築家によるテキストです。


愛知県大府市に設計したお店です。
この地域の地域性を建築によって象徴すること、現代建築における装飾とその可能性を模索したプロジェクトです。
本テクストの後半では、ポストモダニズムを代表する建築家ロバート・ヴェンチューリの著作「ラスベガス」を引用しながら、近代以降の建築の象徴性について考察します。

先ずプログラムについてです。
敷地ほど近くにある至学館大学で講師を務める管理栄養士の方が施主で、彼の「食育」研究の実践の場所として計画されました。

1階は、栄養食や健康食を提供するレストランで、健康づくり、スポーツ、ダイエットをする人や高齢者など幅広い人に合わせてそれぞれ考案されたメニューがあります。2階は、それに付随したトレーニングジムで、食事による栄養摂取と身体づくりとを共に学ぶことのできる、主にジュニアアスリート向けのスクールが開かれています。
1階と2階は外部階段によって繋がっているので、それぞれを単独で使うことも、連続したプログラムとして使うこともできます。

愛知県大府市は「健康都市」というテーマを掲げ、福祉・健康・スポーツ・子育て等を大切にする地域づくりに取り組んでいます。例えば、大府市は街の中を楽しく散策できるウォーキングコースを作成しています。このお店はちょうどそのコース沿いに位置するため、子供からお年寄りまで様々な人たちが散歩やランニングで通りかかります。

お店から近隣にある至学館大学へは徒歩5分ほどです。
至学館大学は、健康スポーツ科学や栄養科学、子どもの健康や教育に関する学科を設置し、また金メダリストを輩出するような部活動も盛んです。大学から最寄りのJR共和駅への通学路にあり、近隣に下宿している大学生も多くいるため、スポーツウェアを着た至学館大学生がこの辺りをよく歩いています。

このように今回設計したお店のプログラムは、この街の文化やネットワークと連続しており、地域性を共有しています。

1996年に竣工した鉄骨造2階建の建物を改修し、お店をつくりました。
敷地は、木造2階建の住宅が立ち並ぶ住宅地の角地で、大通りに面しており、街の中でもひときわ目立つ場所にあります。

既存のスケルトンは、元々1階が店舗であった鉄骨ラーメン構造で、切妻の流れ屋根など周辺の木造住宅に似た佇まいがありましたが、ややスケール感が大きく、似て非なる印象を受けます。外周部の6本の柱によって支えられ、内部空間がワンルームになっていることも特徴的です。また、近隣の住宅と軒高を揃えるように屋根がかけられたと推察でき、その結果として40°近い大きな勾配(八寸勾配)の屋根が街に向かって降りてきます。

街に向かって降りてくる屋根に、大きなイラストレーションを設けました。イラストレーターのミヤザキさんが作成、グラフィックデザイナーの阿部航太さんがイラストディレクションを行いました。

「走る人」の抽象的な表象によって、上述したこの街の地域性を象徴しようとしました。
前面道路の角度に合わせて北側の外壁ラインと屋根が斜めに切り欠かれていますが、ちょうど地面を蹴る方の脚が、屋根の切り欠きにかかるようにイラストを配置しています。屋根の切り欠きを、陸上競技の踏切板=スターティングブロックと見立てています。建築物としての意匠と、サインとしての表象が、相互作用を持つような関係性を目指しました。

濃いグレーの背景に、白くて太い線で描かれたラインは、アスファルト上の路面標示の意匠を引用していて、街を構成する土木的なものの一部となるようにと考えました(配置図)。その方が、専有物ではなく共有物のような佇まいになると思ったからです。傾きの大きな屋根(八寸勾配)なので、離れた所から見ると壁画のように見えます。

イラストは一点物としてイラストレーターによって描画されました。お店のロゴやその他発信ツールとは別個の存在です。屋根に施されているものの、お店に専有されないパブリックな存在になるようにクレジットをしました。

1階部分の外壁は、屋根を相対的に浮かび上がらせるために、白く仕上げました。
お店に近づいて行くとだんだん屋根は見えなくなり、今度はガラス越しに店内が見えてきます。店内のアイレベルより低い部分は、外壁の白い一階部分がそのまま反転したような、抽象的な空間になっています。一方、アイレベルより高い部分は、かつての店舗のインテリアである木の化粧を残していたり、構造体や設備機器をむき出しにしていたり具象的です。H型鋼の梁は、白と対比的に黒く塗装し、その存在を強調しています。そのため、色々なプログラムが実現できるよう設えた大きなワンルームの空間ですが、場所によって少しずつ雰囲気が異なります。

それぞれの場所に合わせて、家具の木材の色味を変えています。木の化粧が残るエリアはそれと同色の少し赤みがかった木材の家具、白い壁面と一体化するカウンターは木目を残しながら白く染めた木材、ダイニング中央のどっしりとした大きなテーブルは少しダークに染めた木材になっています。

中央の大きなテーブルでは、バックヤードとの間の間仕切り壁にプロジェクションをしながら、レクチャーやワークショップ、スポーツチームのミーティングも行えるようになっています。
カウンターはアイレベルより低い部分に来るので、内壁と同様、抽象的な収まりにしています。天板のナラ集成材をボルトで直接アンカーに固定することで、片持ちの天板のみが突き出すようにし、控え壁などの構成要素・構成部材を極力消去しました。腰壁の高さは床から1100mmと低く、キッチンに立つ店主とカウンターに座る客とがコミュニケーションを取りやすくしています。これは食事をしながら健康や栄養についての相談をしやすくしたいという施主の要望によるものです。

鉄骨ラーメン構造のワンルーム空間の中に、キッチンとダイニングを緩やかに仕切る垂れ壁、カウンター、高さ1800mmの間仕切り壁が立体的に交差しています。中等教育の幾何学の基礎で学ぶ「ねじれの位置」の関係になっていて、部屋として明確に分節するのではなく、あくまでもワンルームの空間にムラをつくって行くように計画しています。

照明は、場所に合わせて壁付けだったりペンダントだったりしますが、全て直径100mmの裸電球を同じ高さで、平面的にもグリッド状に配置しました。ここでも、アイレベルより下を抽象的で均質な空間、アイレベルより上を具象的でムラのある空間にすることを意図しています。

ファサードデザインから、プランニング、家具のディテールに至るまで様々なレベルで意図しているのは、街の体験と建築の体験とを連続させるということです。

設計中、頭に浮かんでいたのは、ロバート・ヴェンチューリというアメリカの建築家が著した『ラスベガス』という本のことです(鹿島出版会/SD選書143ラスベガス/ロバート・ヴェンチューリ他=著/石井和紘、伊藤公文=共訳/1978年)。原題である「Learning from Las Vegas : The Forgotten Symbolism of Architectural Form」を直訳すると「ラスベガスから学ぶこと:建築の形態における忘れられた象徴主義」になります。

そこには「あひる(duck)」と「装飾された小屋(decorated shed)」という言葉があるのですが、「あひる」とは「それ自体が象徴である特別な建物」のことで、「装飾された小屋」とは「象徴で装飾された普通の建物」のことです。ヴェンチューリは「その両方とも正当である」と述べてから、両者のイメージを比較していきます。
文脈によると、今回設計したお店は「象徴で装飾された普通の建物」で、「装飾された小屋」であると言えます。

ヴェンチューリはこの本の中で、

「近代建築は、空間、構造、平面上の純粋な建築的要素を執拗に分節化(articulate)することに没頭した挙句、その表現は空虚でつまらなく、無責任でさえある無味乾燥な表現主義になってしまった。皮肉にも、近代建築は、明白な象徴を用いることや、軽薄なアップリケのような装飾を拒否しながら、実は建物全体を歪め、ひとつの大きな装飾と化してしまっているのである。装飾を『分節化』(articulate)にとって代えることで、近代建築は自らあひる(duck)となってしまったのだ。」

と近代建築の合理性の内に隠された表現主義を批判します。衝撃的な指摘です。
さらに近代建築が象徴する内容についての批判を続けます。

「古典的オーダーが『ローマの黄金時代の再現』を象徴するものだとしたら、近代のI型鋼は、言うならば『空間を作る近代技術の素直な表現』というようなことを象徴しているのだ。」

「しかし、ここで注意すべきは、ミースによって象徴化されたのは、産業革命の『近代』技術であって、最新の電子技術ではなく、また今日の建築の象徴主義の源泉となっているのも、依然として産業革命的技術だということである。」

ヴェンチューリの指摘を考えると、近代建築や近代都市は建築の象徴性を自らの内側に向け、他者へ語るのを止め、沈黙してきたように思われてきます。これはある程度、現代を生きる私たちの実感としてもあるのではないでしょうか。街歩きをして楽しい、住んでいて喜ばしい、その感覚が自らの生活を肯定的に捉えることにつながるかもしれません。しかし、そのような街は減っている、という実感です。若い人を中心に都市生活に疲弊し田舎暮らしへの憧憬が強くなる、あるいは旅行という非日常の体験でそれを充足しようとする傾向があることは、ヴェンチューリの指摘を考えると納得できます。

ヨーロッパの中世の都市を訪れると、建物に施された彫刻などの装飾に圧倒され美しいと感じます。しかし、中世に生きていた人にとってその装飾は別の意味を持っていたようです。建物に施された装飾の連続が、古くから共有されてきた神話や街の物語、歴史を人々に伝えていたようなのです。建物の連続がメディアになっていて、街全体が住民や訪問者に語りかけていました。街を歩きながら、大人は子供に装飾が象徴する内容を説明し、共同体が重要としていることを伝えていくことができました。街全体が子供の教材にもなっていました。

これからの街における建築の象徴性について、建築や建築の連続が住民や訪問者に語りかける言葉について再考することは有意義だと考えます。
あらゆる建築が公共性を持ち、象徴性あるいは何かを象徴するポテンシャルを持つと仮定し、さらに建築の象徴を、何かから何かへのメッセージだとすると、その象徴の“内容・主体・対象”が一際重要な建築の主題になってきます。

そして、このプロジェクトにおいて、ひいては現代にとって重要だと考えたのは、象徴の所有(主体と対象)がある特定の個人のものではないということです。「ラスベガス」に登場するカジノやストリップ劇場の装飾が象徴するものは、ある特定の施設が発信するコマーシャルなメッセージでした。一方で、記念碑=モニュメントという建築物もあります。それらが象徴するものは国家や都市といった巨大な主体が発信するメッセージで、時に権威的でありました。パリの凱旋門は、革命軍と帝政の軍隊の栄光を象徴していました。今では、フランスという国家を象徴しています。

今回目指したのは、前者と後者の間にあるローカルな象徴、地域性の象徴です。メッセージは不特定の人たちに共有されています。
お店自体は戸建住宅と同じくらいのサイズでそれほど大きくはないのですが、象徴するものはより開かれていて、集団への帰属意識、場所への愛着、地域のコミュニティ、に貢献するものになっていくことを期待しています。

作品タイトルの「八寸勾配の見世」には、「店」ではなく大和言葉の「見世」という表記を使っていて、世を見せる:地域性を象徴する、というニュアンスを含めています。

■建築概要

作品名:八寸勾配の見世
所在地:愛知県大府市北山町
主用途:店舗
階数:地上2階
構造:鉄骨造
設計:河部圭佑建築設計事務所
イラストレーション:ミヤザキ
イラストディレクション:阿部航太
施工:佐藤建設工業
敷地面積:178.08㎡
建築面積:111.94㎡
延床面積:121.39㎡
竣工:2021年3月
写真:きまたこはる

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
内装・床床

長尺シート(LIXIL)

内装・壁壁

壁紙(LIXIL)

内装・照明照明

モーガルソケット(青山電陶)

内装・照明照明

ペンダントソケット(青山電陶)

内装・設備空調

天井カセットAC(DAIKIN)

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

あわせて読みたい

河部圭佑建築設計事務所による「くしゃくしゃ構造の『洞窟』」
  • 889.65
  • 0
  • 12
  • 0
  • 3
きまたこはるミヤザキリノベーション佐藤建設工業図面あり店舗建材(内装・壁)建材(内装・床)建材(内装・照明)建材(内装・設備)愛知河部圭佑阿部航太
2022.07.21 Thu 08:05
0
permalink

#建材(内装・設備)の関連記事

  • 2022.12.26Mon
    竹口健太郎+山本麻子 / アルファヴィルによる、京都・上京区の住宅「New Kyoto Town House 4」。国内外を活発に移動する施主家族の家。高密度化する都市で求められた“外部空間”を作る為に、傾いた軸の“立体的に配置された坪庭”を考案。四方へ広がる空間を感じさせ“新しい表情”を切り取る
  • 2022.12.19Mon
    加藤渓一 / スタジオピース+HandiHouse projectによる、東京・あきる野市の住宅「道と門型と雑木林」。緑豊かな林に面する敷地。環境が“そのまま立ち現れた”空間を求め、敷地内に林へ抜ける道を通して“門型フレーム”を架ける建築を考案。少ない手数で“素材の味を活かした美味しい料理”の様に作る
  • 2022.12.15Thu
    吉田豊建築設計事務所による、広島市の「宇品御幸の家」。戦後築の低層住宅が並ぶ地域に計画。外部に“伸びやかに連続する”建築を目指し、敷地半分を“空地的な余白”とする構成を考案。“空隙”に生活空間を開いて“私”を守りつつ“広がり”も生み出す
  • 2022.11.17Thu
    小林宏輔 / KOKO+による、神奈川・相模原市の「東林間のアパート」。郊外の木造賃貸集合住宅。長期の安定した入居者確保を目指し、意匠での“競争力”を意図して特徴的な外観が多様な居場所も作る建築を考案。防耐火性能を満たして軒裏と天井の木架構の現しも実現
  • 2022.11.01Tue
    天野寛志建築計画事務所による、静岡・浜松市の「まつばこども園」。住宅に囲まれた変形敷地に計画。街並みへの応答と近隣への環境変化を考慮し、道路沿いに高さを抑えた建物を配置して中庭型の園庭を形成。庭側に吹き抜けた遊戯室を設けて内外の繋がりも作り出す
  • 2022.10.31Mon
    藤井亮介建築研究所による、東京・墨田区の集合住宅「プライムメゾン浅草イースト」。都心の賃貸ワンルームマンション。住空間での滞在時間増加を踏まえ、キッチンの窓際配置と作業空間等の確保で“居場所を選択できる”構成を考案。近接した街との関係は“ブリーズソレイユ”で調整
  • 2022.9.29Thu
    後藤周平建築設計事務所による、静岡・浜松市の美容院「onde」。地域性が残る住宅街に計画。“美容院にみえない”空間という要望に、周囲を様々に反射する“鏡らしくない”鏡を考案して屋号とも呼応する揺らぎのある空間を構築。未来を想像し再移転の可能性を考慮した設計も志向
  • 2022.8.29Mon
    菊嶋かおり+永澤一輝 / knofによる、東京・墨田区の飲食店「PENITENT」。コロナ禍で計画。在宅が叫ばれる中でのカフェの意義を模索し、個人の営為の尊重と他者と時間等を共有する喜びが併存する空間を志向。“ビッグテーブル”で様々な活動を許容し“アートスクリーン”で不均一な体験を作る
  • 2022.8.01Mon
    マイケル・シプケンス+エステバン・オチョガビア / OSOによる、神奈川・鎌倉市の住宅「K HOUSE」。線路沿いの住宅密集地に計画。地域本来の暮らしの復元と騒音等への対応を目指し、“スカイライト”の採光と傾斜屋根を組み合わせて多様で落ち着いた空間を構築。建物の形状は周囲の景観との呼応も意図
  • 2022.7.05Tue
    宮本雅士建築設計による、東京・品川区の集合住宅「フタバソウ」。住居兼事務所の使用も想定した計画。地域や住人に愛着の醸成を求めて、交流を生む“小路”の在り方を継承する空間を考案。全体ヴォリュームを住戸単位に分節し環境調和や“家”としての愛着向上も意図
  • view all
view all

#愛知の関連記事

  • 2023.2.07Tue
    川本達也建築設計事務所による、 愛知・尾張旭市の「旭ケ丘の家」。“将来的に除却可能な構造”の規制がある傾斜地に計画。一般解の“RC造”でない方法を求め、施工にも寄与する“幅15m”の量塊が跳ね出す“木造”建築を考案。諸機能を公道側に集め設備の合理性も高める
  • 2023.1.23Mon
    studio36による、愛知・岡崎市の美容室「ie」。商業ビルの1室に計画。“場所に潜む豊かさ”を引き出す空間を目指し、機能を集約した円形什器を用いた“気配や環境の変化”が感じられる構成を考案。“ワンアクションの介入”で改修の在り方も問う
  • 2023.1.13Fri
    大山純矢+大山真司 / studio kiviによる、愛知の住宅改修「とよたの家」。3世帯の家が集まる場の一軒を改修。環境配慮と現在の暮らしへの対応を目指し、生活導線や開口部に手を入れる“調節”と“変更”を意識した設計を志向。未来の生活に応える改築も予定して計画を立てる
  • 2022.12.20Tue
    今津康夫 / ninkipen!による、愛知・名古屋市の複合店舗「24PILLARS」。高架下を敷地としたカフェ・ギャラリー・工房。既存の高さ6mで長さ72mの“都市のカテドラル”の様な空間を活かす為、気積と余白や連続性を活かす設計を志向。“都市の隙間”に様々な人と物が集まる場を作る
  • 2022.10.28Fri
    川本達也建築設計事務所による、愛知・長久手市の住宅「丁子田の家」。造成された住宅地に計画。将来的に子供が受継げる普遍性を目指し、既存擁壁から跳ね出す“3枚の壁”で敷地全体を活かす為の“構え”を構築。ファサードのT型の梁で街との繋がりも操作
  • 2022.9.12Mon
    篠元貴之 / rhymedesignによる、愛知の、歯科医院運営の相談室「Garnish / パセリの役割」。交差点に面する区画の内装。敷地特徴の活用と要求機能の適切な配置を目指し、都市空間の“付け合せ”と言える“植栽帯”を参照した空間を志向。外を内に取り込む事で場の高揚感を導入し用途間の関係性も整理
  • 2022.9.07Wed
    葛島隆之建築設計事務所による、愛知・西尾市の住宅「7部屋のコートハウス」。SNS等で多くの情報を集める施主の為に計画。様々な期待の具現化と街との繋がりの両立を目指し、要望を考慮した7つの部屋が周辺環境の成り立ちとも呼応する構成を考案。余白としての中庭は様々な距離感や領域の形成にも寄与
  • 2022.8.24Wed
    吉村真基建築計画事務所|MYAOによる、愛知・名古屋市の「やまさと保育園増築棟」。職員の執務空間等の計画。敷地奥の園舎と擁壁に囲まれた場を建築地に選び、屋根を掛けた上に小屋が載る構成を考案。要求機能に加えて建物同士を繋ぐハブ空間の役割も与え園全体の動線を再編
  • 2022.8.19Fri
    大嶋励+小阿瀬直+山田優 / SNARK Inc.による、愛知の、ショールーム「CREATORE with PLUS 名古屋」。オフィスの構築全般を業務とする企業の施設。現代の多様な働き方に応える展示空間を目指し、異なる特徴を持つエリアが連なり風景となる構成を考案。施主の工場の廃材を利用する等サステイナブルも意識
  • 2022.8.17Wed
    二俣公一 / ケース・リアルによる、愛知の店舗「イソップ名古屋栄店」。二つの開口面のある区画に計画。自然の延長に文化がある事を提示する建築を目指し、空間構成の素材として“土”を選択し壁面等に使用。平面形状の特徴を活かし性質の異なるエリアを並存
  • view all
view all

建築求人情報

Loading...

 

    公式アカウントをフォローして、見逃せない建築情報を受け取ろう。

    52,072
    • Follow
    69,551
    • Follow
    • Follow
    • Add Friends
    • Subscribe
    • 情報募集/建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
      More
    • メールマガジン/ メールマガジンで最新の情報を配信しています。
      More

    この日更新したその他の記事

    イランイランによる、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」。閑静な住宅街に計画。日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向。五感で繊細に感じる住宅をつくる

    757.82 イランイランによる、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」。閑静な住宅街に計画。日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向。五感で繊細に感じる住宅をつくる

    architecture|feature
    イランイランナカサ&パートナーズ住宅八原建設名古屋図面あり大谷宗平建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(内装・床)建材(外装・その他)建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(外装・床)愛知藤川祐二郎近藤道太郎金瑛実
    イランイランによる、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」。閑静な住宅街に計画。日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向。五感で繊細に感じる住宅をつくる photo©ナカサ&パートナーズ 大谷宗平
    イランイランによる、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」。閑静な住宅街に計画。日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向。五感で繊細に感じる住宅をつくる photo©ナカサ&パートナーズ 大谷宗平
    イランイランによる、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」。閑静な住宅街に計画。日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向。五感で繊細に感じる住宅をつくる photo©ナカサ&パートナーズ 大谷宗平

    藤川祐二郎+金瑛実+近藤道太郎 / イランイランが設計した、愛知・名古屋市の住宅「K house 4」です。
    閑静な住宅街に計画されました。建築家は、日々の移り変わる感覚を許容する空間を求めて、素材の選択や諸室の配置で対照的な要素が共存する設計を志向しました。また、五感で繊細に感じる住宅をつくる事も意図されました。

    敷地は愛知県名古屋市緑区。閑静な住宅街の計画である。
    日本の文化には相反する事柄を両立かつ調和させてきた「二項共存」の精神がある。静と動、光と影、乾と湿などを移ろう時間の中で、五感をつかって繊細に感じ取ってきたのである。

    今回の計画でも、二項のバランスを保ち、居心地良い空間を創ることを心掛けた。

    建築家によるテキストより

    生活をつかさどるLDKを北側、お風呂、トイレ等の利用時間が短い水回りを隣地が密接している南側に持ってきた。その対照的なゾーンの中間領域に吹き抜け階段スペースを設けて、緩やかにつなげた。

    建築家によるテキストより

    明るさと広がりを持たせたLDKの隅には狭小で暗い雰囲気の和のスペースを配置した。
    ここへの開口を小さくすることで違和感を排除し、陽と陰の両立を表現した。またLDKは部屋の中心からモルタル床ラインを施し、4つのグリッドを作成した。その対でダイニングキッチンとリビングの天井高さを変化させ、均一とズレを共存させた。

    建築家によるテキストより
    • 残り20枚の写真と建築家によるテキスト
    • 757.82
    • 0
    • 14
    • 0
    • 0
    イランイランナカサ&パートナーズ住宅八原建設名古屋図面あり大谷宗平建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(内装・床)建材(外装・その他)建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(外装・床)愛知藤川祐二郎近藤道太郎金瑛実
    2022.07.21 Thu 17:23
    0
    permalink
    水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる

    1,108.50 水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる

    architecture|feature
    milliondotsRGB STRUCTURETree to Greenおもちゃ美術館コミュニティ施設ハンドアンドデザインモトモト図書館図面あり大洋アレスコ山森建築設備設計事務所建材(内装・壁)建材(内装・床)建材(外装・壁)建材(外装・床)建電橋本組水野建築事務所水野芳康環設備設計事務所美術館・博物館長谷川健太青島ポンプ工業静岡
    水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる photo©長谷川健太
    水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる photo©長谷川健太
    水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる photo©長谷川健太
    水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」。駅前商店街の並びに建つ施設。地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案。半屋外を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる photo©長谷川健太

    水野芳康 / 水野建築事務所が設計した、静岡・焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」です。
    駅前商店街の並びに建つ施設です。建築家は、地域の賑わい創出を目指して、人の流れを受け入れる配置の芝生広場や街との関係を作る雁行ファサードを考案しました。また、半屋外空間を各所に設けて内から外へ活気を連鎖させる事も意図されました。施設の公式サイトはこちら。

    敷地は焼津駅から伸びる駅前商店街の突き当りに位置する。

    1階2階に絵本を中心に閲覧できるこども図書館を、3階4階に様々な木のおもちゃで遊ぶことのできるおもちゃ美術館が整備された焼津市ターントクルこども館は、焼津市が子育て環境のより一層の質的向上と量的拡充を図るため、乳幼児から小中高生までが集い・遊び・学べる子育て支援施設として構想された。

    駅と計画地の延長線上に位置する焼津市庁舎の建て替え計画も同時期に進行していたため、点から線へ、さらには面的なまちの賑わいの創出を期待された。

    建築家によるテキストより

    外からのアプローチとしては、まちとの連続性をつくりだし、建物の賑わいが伝播するような配置計画を検討した。
    駅からまっすぐに伸びる駅前商店街道路は、丁度この敷地の位置で鈍角に曲がっているため、軸線が敷地の対角線を横切る形となる。そこで、建物を対角線に沿って配置し建物と反対側を芝生広場とすることで、駅前商店街をまっすぐ歩いていくと芝生広場に行きつく計画とした。まちの流れに沿わせた建物の配置とすることで、まちに溶け込んだ建ち方となる。

    また、芝生広場側のファサードは面を雁行させ、まちに対する影響範囲を増やすことで賑わいが伝わりやすい計画としている。

    建築家によるテキストより

    内部からのアプローチとしては、1、2階のこども図書館は、プログラムに対する空間の変化を建築が拾い骨格を変形させていく操作をしている。たとえば、床に座ったり寝転がったりして絵本を読む「読み聞かせスペース」は、段状に掘り下げ、天井高も低く抑えることで落ち着きのある空間としている。それに伴い2階部分の階高が低くなりスキップフロアのような空間構成となっている。

    一方で3、4階のおもちゃ美術館は、企画された遊びの空間は遊具などで造られることで、テーマパーク的な世界観をつくりだしているため、極力建築的な操作は見せないフラットな空間として提供した。しかしながら、施設全体の連続性や空間のつながりをつくるために中央に貫く吹き抜け空間を設けることとした。1階のこども図書館に居ながら、3,4階に行ってみたくなるような誘う効果を意図している。

    建築家によるテキストより
    • 残り30枚の写真と建築家によるテキスト
    • 1,108.50
    • 0
    • 19
    • 0
    • 1
    milliondotsRGB STRUCTURETree to Greenおもちゃ美術館コミュニティ施設ハンドアンドデザインモトモト図書館図面あり大洋アレスコ山森建築設備設計事務所建材(内装・壁)建材(内装・床)建材(外装・壁)建材(外装・床)建電橋本組水野建築事務所水野芳康環設備設計事務所美術館・博物館長谷川健太青島ポンプ工業静岡
    2022.07.21 Thu 13:37
    0
    permalink
    2022.7.20Wed
    • 【ap job更新】 吉祥寺を拠点とし、様々な建築を手掛ける「佐久間徹設計事務所」が、事務所を共に発展させてくれる設計スタッフ(各種経験者・既卒)を募集中
    • 山田誠一建築設計事務所による、静岡市の「西千代田町の家」。住宅地に建つ設計者の自邸。伝統を尊敬した上での更新と“これからの日本の家”を求め、厳密な寸法体系で部材と空間を統率し空間を構築。銀色の外壁は一部が開閉し街と家との多様な関係を作る
    • トラフ建築設計事務所のデザイン監修、東急電鉄と交建設計の設計監理による、東京の「東急池上線長原駅」。商店街の築50年駅舎の改修計画。街とに繋がる親しみある存在を目指し、県産木製ルーバーを用いて軒下空間から改札内への連続性を構築。壁等の基本色は利用者の安心感への寄与を考慮
    • 【ap job更新】 エリア再生・既存ストック再生に特化した「再生建築研究所」が、設計スタッフ(経験者・既卒・第二新卒)を募集中
    2022.7.22Fri
    • スティーブン・シェンク+服部大祐 / Schenk Hattoriによる、ベルギーのインフォメーションセンター。大戦の過去を持つ自然保護区に計画。ランドマークでエリアの動線の明確化や展示と集いも担う建築の要望に、構造ユニットが微細にずれながら連続する構成を考案。奥行の変化が軒下に動線であり広場でもある空間を作る
    • 元木大輔 / DDAAによる、東京・千代田区の、期間限定のショールーム「WABARA LABORATORY TOKYO」。滋賀が拠点のバラ園の為に計画。バラの存在の“ドレスダウン”と新たな面の提示を目指して、工業製品を極力“無加工”で組み合わせた什器による空間を考案。コスト面や会期後の移動や再利用も考慮

    Subscribe and Follow

    公式アカウントをフォローして、
    見逃せない建築情報を受け取ろう。

    「建築と社会の関係を視覚化する」メディア、アーキテクチャーフォトの公式アカウントです。
    様々な切り口による複眼的視点で建築に関する情報を最速でお届けします。

    52,072
    • Follow
    69,551
    • Follow
    • Follow
    • Add Friends
    • Subscribe
    • 情報募集/建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
      More
    • メールマガジン/ メールマガジンで最新の情報を配信しています。
      More

    architecturephoto® News Letter(β)

    メールマガジンで更新情報を配信を予定しています。
    ただいま事前登録受付中。

    • ホーム
    • アーキテクチャーフォトについて
    • 特定商取引法に関する表記
    • 広告掲載について
    • お問い合わせ/作品投稿

    Copyright © architecturephoto.net.

    • 建築
    • アート
    • カルチャー
    • デザイン
    • ファッション
    • 書籍
    • 展覧会
    • コンペ
    • 動画
    • テレビ
    • 特集記事
    • 注目情報
    • タグ
    • アーキテクチャーフォト ジョブボード
    • アーキテクチャーフォト・ブック
    • アーキテクチャーフォト・プロダクト
    • ホーム
    • アーキテクチャーフォトについて
    • 特定商取引法に関する表記
    • 広告掲載について
    • お問い合わせ/作品投稿

    メールマガジンで最新の情報を配信しています

    この記事をシェア
    タイトルタイトルタイトルタイトルタイトル
    https://architecturephoto.net/permalink
    -1
    -1
    -1
    -1

    記事について#architecturephotonetでつぶやいてみましょう。
    有益なコメントは拡散や、サイトでも紹介させていただくこともございます。

    architecturephoto®
    • black
    • gray
    • white