大村聡一朗+中村園香 / OHMURA NAKAMURA ATELIERが設計した、東京・多摩市の「連光寺の家 改修 / 二つの十字と四畳半」です。
若い家族の為に木造家屋を改修です。建築家は、居室と廊下が分かれた既存平面を刷新し、“十字壁”の配置で等価な“四畳半”空間が連続する構成を考案しました。そして、生活変化も受け入れる緩やかな“分断”と“接続”の状態を作る事を意図しました。
多摩市の住宅街に建つ戸建住宅の改修である。この住宅は若い夫婦と生まれたばかりの双子のための住まいである。
改修設計では、まず、耐力壁を除く内壁及び天井をすべて取り払い、短手方向に1:1、長手方向に1:1:1の位置にグリッドを設定した。そうすることによって、居室空間と移動空間の主従関係を消失させ、等価な四畳半の連続する空間が立ち現れる(実際には隅部の二カ所は敷地形状に対応して切り欠かれているが)。そして、連続する四畳半の交点に二つの十字の壁を配置した。他とは異なる素材を配した十字の壁は「空間の輪郭」と「モノ」の間のような存在を目指した。
家族の関係性は時間を経るにつれて変化する。特にこの住宅に住む若い夫婦と双子という4人の家族の関係性は子供の成長に伴って日々変化していく。
例えば、子供が大きくなり、勉強のためのスペースが必要になるかもしれない、家族間でのプライバシーの必要性が出てくるかもしれない。そのような変化に対して、この住宅では、二つの十字が示すグリッドに沿って建具や壁を配置し、一つの独立した四畳半空間とすることを想定している。
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以下、建築家によるテキストです。
多摩市の住宅街に建つ戸建住宅の改修である。
この住宅は若い夫婦と生まれたばかりの双子のための住まいである。
既存住宅について
既存の戸建住宅は所謂3LDKの住宅である。玄関を入り廊下空間があり、そこからLDK、トイレ、二階へとアクセスできる。また、LDKから脱衣室、浴室へとつながっている。二階に上がると廊下を通して、三つの個室、トイレへと接続される。廊下の一部を除いてすべての天井はフラットになっている。廊下と(一階では)LDK、(二階では)三つの個室を仕切る壁を境に、移動空間と居室空間が分断され、各空間は独立している。また、その壁は建築の短手方向に2:1の位置に配置され、居室空間と移動空間の主従関係を明確に表している。
改修設計について
改修設計では、まず、耐力壁を除く内壁及び天井をすべて取り払い、短手方向に1:1、長手方向に1:1:1の位置にグリッドを設定した。そうすることによって、居室空間と移動空間の主従関係を消失させ、等価な四畳半の連続する空間が立ち現れる(実際には隅部の二カ所は敷地形状に対応して切り欠かれているが)。そして、連続する四畳半の交点に二つの十字の壁を配置した。他とは異なる素材を配した十字の壁は「空間の輪郭」と「モノ」の間のような存在を目指した。
一階では、二つの十字の一部は開口が穿たれ、切り欠かれている。二階では、二つの十字は純粋な形で存在している。これらの二つの十字によって連続する四畳半空間は緩やかに分断(接続)され、時には空間を横断して使用され、時には独立した空間として使用される。二階の天井は屋根勾配をそのまま表すように勾配天井とした。
既存の架構は必要最低限のもの以外は撤去し、一部構造補強を行っている。二つの十字と勾配屋根によって生まれた空間の形とずれた既存の断片的な架構は塗装を施され、表しにされている。時には独立した物体として、時には家具の一部として現れる。
住宅の時間について
家族の関係性は時間を経るにつれて変化する。特にこの住宅に住む若い夫婦と双子という4人の家族の関係性は子供の成長に伴って日々変化していく。
例えば、子供が大きくなり、勉強のためのスペースが必要になるかもしれない、家族間でのプライバシーの必要性が出てくるかもしれない。そのような変化に対して、この住宅では、二つの十字が示すグリッドに沿って建具や壁を配置し、一つの独立した四畳半空間とすることを想定している。
一度完成した建築の形は容易に変更することはできないが、二つの十字と四畳半を拠り所に、日々変化する家族の関係性を長い時間、受け入れられる住まいになることを期待する。
■建築概要
作品タイトル:連光寺の家 改修 / 二つの十字と四畳半
住所:東京都多摩市
主要用途:専用住宅
設計:大村聡一朗+中村園香 / OHMURA NAKAMURA ATELIER
施工:水雅
構造設計:辻拓也 / DIX
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:118.85㎡
建築面積:41.13㎡
延べ床面積:82.26㎡
竣工年月:2021年12月
写真:川崎璃乃