中村堅志 / 中村建築が設計した、鳥取市の「あたらしい家」です。
“中山間部”集落の住宅の建替計画です。建築家は、増築が重なる状況を整理し“光と風”を取り込む為、“中庭”や“隙間”の生成を意図した平面構成を志向しました。また、景観にも配慮して“明るく落ち着いた住空間”を作り出す事も意図されました。
敷地は鳥取市の中山間部の集落内にある。
広い敷地の中で母屋と改修したハナレのほか車庫や蔵など増築を繰り返して一体化し密集した建物群に2世帯7人で住んでいた。両親はハナレへ移り、母屋を取り壊し子世帯家族5人のための住宅を計画することになった。
通りに面した母屋を解体し明るくなった敷地の中心に、通りからひと繋がりであるが少し奥まった「中庭」を据え、ここを2世帯がつながるためのスペースとした。親世帯も新しいLDKで食事や家族団欒の多くを共に過ごすため、親世帯の住居となるハナレの玄関と渡り廊下を、さらには接客空間などパブリックな用途として使用する和室を中庭に面して配した。
今回の計画では周囲の景観を逸脱しないようなボリューム検討と無駄を省いた最小限の空間提案を重ね、通りに面しては開口部のない板壁と軒下空間によりプライバシーを確保し、建物配置を通りから90度ふり南面させることで、集落の中に明るく落ち着いた住空間を作り出そうとしている。
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以下、建築家によるテキストです。
集落における新しい建て替え方
敷地は鳥取市の中山間部の集落内にある。
広い敷地の中で母屋と改修したハナレのほか車庫や蔵など増築を繰り返して一体化し密集した建物群に2世帯7人で住んでいた。両親はハナレへ移り、母屋を取り壊し子世帯家族5人のための住宅を計画することになった。
最初に、この地方の多雨多雪を避けるために出来上がったと思われるこの一体化した建物群を切り離して隙間をつくり出し、敷地全体に光と風を取り入れたいと考えた。また子世帯のための新しい住まいは落ち着いた生活の場となるように、集落内での緩やかなプライバシーの確保を図った。
通りに面した母屋を解体し明るくなった敷地の中心に、通りからひと繋がりであるが少し奥まった「中庭」を据え、ここを2世帯がつながるためのスペースとした。親世帯も新しいLDKで食事や家族団欒の多くを共に過ごすため、親世帯の住居となるハナレの玄関と渡り廊下を、さらには接客空間などパブリックな用途として使用する和室を中庭に面して配した。
また2階部分は片流れ屋根により作られたロフト空間を持つ家族5人のための独立した寝室群とした。風と光を取り込むための「隙間」は中庭や駐輪場・通路などにあてられ、雨と雪を避ける軒下空間がそれら隙間に寄り添うような構成としている。
地方の集落内における建て替えが、乱暴的で無意識に行われることを度々目にしてきた。「法規制のゆるさ」と「立派である事=大きい事」からくる過度なボリュームを求められたことがこの無秩序を生み出していると考えている。
またこの集落では、慣習的に以前のプランを踏襲した建て替え例が多く見られ、そのどれもが通りに並行した建物配置による陽当たりの悪さや、カーテンで閉ざされた開口部をそのままに引き継いでいる。
今回の計画では周囲の景観を逸脱しないようなボリューム検討と無駄を省いた最小限の空間提案を重ね、通りに面しては開口部のない板壁と軒下空間によりプライバシーを確保し、建物配置を通りから90度ふり南面させることで、集落の中に明るく落ち着いた住空間を作り出そうとしている。
慣習的な家構えによる閉塞感や雨雪から身を守るように閉ざした以前の暮らしから、外とのつながりや天気の移ろいを感じられる新しい暮らしへ。この新しい家がここでの建て替え方のひとつの提案になればと思っている。
■建築概要
題名:あたらしい家
所在地:鳥取県鳥取市
主要用途:専用住宅
設計監理:一級建築士事務所 中村建築
担当:中村堅志
構造設計:正木構造研究所
施工:秀建
主体構造:木造在来工法
基礎:ベタ基礎
階数:地上2階
軒高:6.893mm
最高高さ:7.351mm
地域地区:非線引都市計画区域
道路幅員:西側4.3m
敷地面積:127.74㎡(全体407.96㎡)
建築面積:65.02㎡
延床面積:106.30㎡
1F面積:56.62㎡
2F面積:49.68㎡
設計期間:2020年11月~2021年7月
工事期間:2021年8月~2022年7月
写真:平井広行