森下陽 AMP/アンプ建築設計事務所が設計した、静岡・菊川市の住宅「山間のねじれ屋根」です。
山間部の集落の敷地です。建築家は、“がけ条例”に対応する“L字擁壁”の計画を起点として、樹木保存と様々な要望に応える“雁行”平面を考案しました。また、全体を覆う“変形寄棟屋根”は室内に大きな気積を作ると共に山並みとも呼応します。
敷地のある菊川市は東海道線の駅の南側に市街地があり、北の山側には茶畑が広がっている。
計画地はその茶畑へとつながる山道にある集落の一角で、北側にはクライアントの妻側の実家と祖母の家があり、畑として使われていた。周辺には10件程の住宅が建っており、集落の中のぽっかりと空いた隙間に娘家族が移り住む計画である。
集落は山間につくられているため、東西に山が広がっている。東西の山のうち西側の山はがけ条例がかかっており、これをクリアすることが必要であった。そこで西側には、土砂を受け止めるL字擁壁かつ目隠し壁としても機能するような基礎と壁を設け、これを手掛かりとして設計をスタートした。
敷地には昔から大事にされてきた梅の木があり、クライアントからの要望で残すことが決まっていた。また特別警戒地域のラインも一部かかっている。これらを避け各要望・要件に必要な面積を確保すると、自然と雁行した平面計画となった。
L字擁壁がかからない北側には機能部をまとめ、擁壁に守られた南側には各室をまとめた。北側の機能部は玄関から物干しデッキまで東西に通り抜ける明確な動線計画とし、実家との緩衝帯としても機能している。また敷地は緩やかに東側へ下がっているため、段差を設け勾配を吸収した。この段差は各室の空間を切り替える役割をはたしている。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地のある菊川市は東海道線の駅の南側に市街地があり、北の山側には茶畑が広がっている。
計画地はその茶畑へとつながる山道にある集落の一角で、北側にはクライアントの妻側の実家と祖母の家があり、畑として使われていた。周辺には10件程の住宅が建っており、集落の中のぽっかりと空いた隙間に娘家族が移り住む計画である。
まずは北側の実家への採光や、農地転用の際の建蔽率の規制を考慮し、平屋での計画とした。
集落は山間につくられているため、東西に山が広がっている。東西の山のうち西側の山はがけ条例がかかっており、これをクリアすることが必要であった。そこで西側には、土砂を受け止めるL字擁壁かつ目隠し壁としても機能するような基礎と壁を設け、これを手掛かりとして設計をスタートした。
敷地には昔から大事にされてきた梅の木があり、クライアントからの要望で残すことが決まっていた。また特別警戒地域のラインも一部かかっている。これらを避け各要望・要件に必要な面積を確保すると、自然と雁行した平面計画となった。
L字擁壁がかからない北側には機能部をまとめ、擁壁に守られた南側には各室をまとめた。北側の機能部は玄関から物干しデッキまで東西に通り抜ける明確な動線計画とし、実家との緩衝帯としても機能している。また敷地は緩やかに東側へ下がっているため、段差を設け勾配を吸収した。この段差は各室の空間を切り替える役割をはたしている。
雁行した平面や段差のある断面は、変形した寄棟の屋根で覆い全体を統合した。この変形してねじれた屋根は、内部では大きな気積と一体感を与え、外部では勾配の変化で山と呼応し周囲に溶け込んでいる。
■建築概要
題名:山間のねじれ屋根
所在地:菊川市
用途:住宅
設計:AMP/アンプ建築設計事務所 担当/森下陽
構造設計:高橋俊也構造建築研究所 担当/高橋俊也
施工:杉浦建築店
構造:木造
規模:平屋建
敷地面積:320.00㎡
延床面積:79.91㎡
竣工:2021年8月
写真:長谷川健太