小原賢一+深川礼子 / ofaが設計した、岡山・真庭市の「湯原ふれあいセンターリノベーションプロジェクト」です。
公共施設の機能移転等の再整備計画です。建築家は、地域の現状との齟齬や利用率向上を求め、其々の用途が空間の一部を共用して繋がる“まちの居間”の様な場を志向しました。そして、“縮小”や“転用”を豊かさに繋げ価値を生み出す事が意図されました。
既存庁舎の老朽化にともない、市の地域振興局事務所を隣接する築35年の「ふれあいセンター」(町民ホール)内に移転し、機能を複合して整備する計画です。既存建物にはホール(800人)と会議室、和室、図書館がありましたが、いずれも地域の現状と空間や機能が合わなくなり、利用率が低下していました。
本プロジェクトではホールを今の地域の人口規模や催し物の想定に合わせてコンパクトに整理し、図書館を拡大、新しい振興局と交流スペースを組み合わせて全体をゆったり作り直しました。それぞれは空間を一部共用してゆるくつながり相互の連携や住民と来訪者の交流など面積以上の効果が生み出せる、「まちの居間」のような豊かな空間へ仕立て直すことを目指しました。
デザインにおいては、大きなホールと細切れの部屋をいったんひとつにし、その中に具体的な活動を想定する「プレイス」を配置し、その間を多様な居場所と交流を生む「スペース」として設えました。空間は稼働率を上げられるよう、活用にあわせて使いやすい大きさに調整しています。
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以下、建築家によるテキストです。
ふつうの建物を「まちの居間」に仕立て直すプロジェクト
既存庁舎の老朽化にともない、市の地域振興局事務所を隣接する築35年の「ふれあいセンター」(町民ホール)内に移転し、機能を複合して整備する計画です。既存建物にはホール(800人)と会議室、和室、図書館がありましたが、いずれも地域の現状と空間や機能が合わなくなり、利用率が低下していました。
本プロジェクトではホールを今の地域の人口規模や催し物の想定に合わせてコンパクトに整理し、図書館を拡大、新しい振興局と交流スペースを組み合わせて全体をゆったり作り直しました。それぞれは空間を一部共用してゆるくつながり相互の連携や住民と来訪者の交流など面積以上の効果が生み出せる、「まちの居間」のような豊かな空間へ仕立て直すことを目指しました。
プレイスとスペースで作る共存の空間
デザインにおいては、大きなホールと細切れの部屋をいったんひとつにし、その中に具体的な活動を想定する「プレイス」を配置し、その間を多様な居場所と交流を生む「スペース」として設えました。空間は稼働率を上げられるよう、活用にあわせて使いやすい大きさに調整しています。
「スペース」は異なる活動のバッファーになるとともに、活動間で共有することで時間や状況によって使い手や使い方を変えるフレキシブルな空間です。多様な居方を受け入れ、異なる活動が共存できる空間が、居合わせた人同志の交わりのきっかけをもたらせると考えました。また、旭川沿いの環境を活かし、建物から部分的に外へ居場所を拡張するようにテラスと庇を張り出し、外部や街との関係をつくりだしています。
ホールの魅力的なコンパクト化
ホールは客席数を減らし、地域の方が利用しやすい親密な雰囲気のサイズとしました。包み込まれるような曲線の平面形状に、地域産の杉をふんだんに使って壁面にリブをつくり、音を柔らかく受けるとともに、木の色合いを見せる真庭らしい表情の魅力あるホールです。
ホールのドアは開放可能なつくりとして、扉を開けたまま展示会などの利用も想定しています。ホールと振興局、大会議室が共有する待合スペースは落ち着いた色あいとし、既存の高い天井を活かして空間にボリュームを持たせました。イベント時にはホワイエとしても使える、華やかさを備えた空間です。
行きたくなる、居たくなる図書館
図書館は本と共に過ごす時間を大切に考え、ゆっくり居たくなる、行きたくなる雰囲気です。滞在スペースは、静寂閲覧室や集中できるカウンター席、旭川を望むデスク、テラス席など、閲覧や勉強、くつろぎのスペースとしても利用を想定しています。
キッズスペースは靴を脱いで上がり、そのままテラスまで出られるように設えました。共有スペースから、小さな明かりを変化のあるリズムで連続させ、全体のつながりを作っています。キッズスペースの書架は地域産ヒノキで製作しました。一般書架は、他の図書館で使わなくなった書棚にサインや展示パネルを付けてデザインを統一し、木の優しい手触の図書館としました。
活動の幅の広がる交流スペース
交流スペースには大きな掲示板とキッチンを設けました。水周りがあることで、カフェ等活用の幅が広がります。交流スペースも外部へ拡張するテラスと庇を作っています。ふれあいセンター内部の活動がまちへひろがり、外からもよく見え、人を招く、シンボルとなる場所です。
断熱や空調の工夫による室内環境の向上
雪の多い地域のため、新設窓には断熱性の高いLow-eペアガラス、既存の窓には同様の内窓を追加し外壁には必要に応じて断熱を補強しました。空調の工夫と合わせて、緩くつながる一室空間でも過ごしやすい快適な室内環境をつくっています。
地域と共にこれからを考えてつくる
設計と並行で、住民活動支援として地域住民や中学生とのワークショップを企画実施しました。4回のワークショップを経て、地域の声を聞き、みなさんの「やりたい」「楽しそう」な企画案をもとに、次の活動を後押しするプロジェクトとしても取り組みました。
本体竣工後、旧振興局を解体し、敷地全体が整備されました。倉庫でふさがれていた旭川に向かう視線を開き、テラスを川側へ展開することで、川との間に豊かな環境を再生、向上しまた。イベントやマーケット等の催しが、建物から外へ展開できるようになりました。
竣工後、交流スペースではポップアップカフェや、図書館・ホールでの催しとの連携イベントが頻繁に行われるなど、多様な活用がなされています。全国で公共施設再編が課題となる中、普通の建物のリノベーションにおいて、「縮小」や「転用」「共有」を、活動の出会いや空間の豊かさにつなげるデザインで、地域に新しい価値や希望につなげるプロジェクトです。
■建築概要
題名:湯原ふれあいセンターリノベーションプロジェクト
所在地:岡山県真庭市
主用途:市役所振興局(事務所)、図書館、ホール、交流スペース
建築主:真庭市
設計監理:株式会社ofa 小原賢一+深川礼子
構造設計:有限会社桃李舎
設備設計:株式会社アイ設計
照明デザイン:株式会社加藤久樹デザイン事務所
ワークショップ協力:納屋工房
施工:梶岡建設株式会社、有限会社カネサダ設備
構造:S造
階数:地上2階
敷地面積:9730.35㎡
建築面積:1792.22㎡
延床面積:1899.39㎡
改修面積:1785.83㎡
増築面積:S造、平屋建、93.37㎡
設計:2018年8月~2019年3月
工事:2019年9月~2020年3月
竣工:2020年3月
写真:鈴木研一