秋山隆浩建築設計事務所と森山ちはる / サイドバイサイドが設計した、東京・荒川区の「町屋高架下保育園」です。
鉄道高架下を活用する計画です。建築家は、近年の傾向と異なる“街に開かれた園舎”を目指し、諸室の分散配置で半屋外空間を多く設けて園の活動を街に表出しました。また、土木スケールを緩和する“大屋根”が守られる安心感も与えています。
東京の下町、荒川区町屋の鉄道高架下に設けられた保育園である。
1931年に建設された高架橋の下には商店や住まいが建ち並び、生活が街路に溢れ出す下町的な景観を形づくっていたが、高架橋の耐震補強のために立ち退きとなった。耐震補強後は長らく空地となっていたが、保育園の計画を皮切りに再活用が始まった。
近年の保育園は街に対して閉鎖的で園児と街の人達が疎遠となっている。我々は街に対して開かれた園舎をつくることで、街の人達が園児の成長を楽しみに見守れるような保育園をつくりたいと考えた。
街を横断する古い高架橋は高さが低く、桁下で約3.9m、スパンも約6mと小さく重々しい。そこで土木的な高架橋のスケールと保育園のスケールを調和させるために長さ70mの大きな屋根を架けた。水平に伸びる屋根が街に対して保育園の構えをつくる。内側においては高架橋と屋根を重ね合わせる事で、駅近くの喧騒から柔らかく守られた保育の空間を形成した。
保育室及び調理室、事務室は大屋根の下、大小2つの園庭を挟んで3つのまとまりに分散して配置した。各室は街路に沿った半屋外の軒下空間で結ばれている。この長さ39mの軒下を軸として各高架柱の間に洗い場、ネット遊具、滑り台、駐輪場、エントランスポーチが設けられており、保育園の活動は街へ現れる。
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以下、建築家によるテキストです。
東京の下町、荒川区町屋の鉄道高架下に設けられた保育園である。
1931年に建設された高架橋の下には商店や住まいが建ち並び、生活が街路に溢れ出す下町的な景観を形づくっていたが、高架橋の耐震補強のために立ち退きとなった。耐震補強後は長らく空地となっていたが、保育園の計画を皮切りに再活用が始まった。
近年の保育園は街に対して閉鎖的で園児と街の人達が疎遠となっている。我々は街に対して開かれた園舎をつくることで、街の人達が園児の成長を楽しみに見守れるような保育園をつくりたいと考えた。
街を横断する古い高架橋は高さが低く、桁下で約3.9m、スパンも約6mと小さく重々しい。そこで土木的な高架橋のスケールと保育園のスケールを調和させるために長さ70mの大きな屋根を架けた。水平に伸びる屋根が街に対して保育園の構えをつくる。内側においては高架橋と屋根を重ね合わせる事で、駅近くの喧騒から柔らかく守られた保育の空間を形成した。
保育室及び調理室、事務室は大屋根の下、大小2つの園庭を挟んで3つのまとまりに分散して配置した。各室は街路に沿った半屋外の軒下空間で結ばれている。この長さ39mの軒下を軸として各高架柱の間に洗い場、ネット遊具、滑り台、駐輪場、エントランスポーチが設けられており、保育園の活動は街へ現れる。
園庭は高架橋と建築を重ね合わせることで生まれた独特の半屋外空間となっている。 夏季の都市気候はヒートアイランド現象により厳しさを増している。高架橋が第一の「屋根」として強い日差しから園庭を守る。建築の屋根は風雨から日常の動線を守り、反射光によって園庭を照らすライトシェルフの働きをしている。高架下特有の暗さが覆され、高架の天井が明るく照らされた夏期にも利用しやすい園庭になった。
構造計画については高架基礎と干渉を避けた位置に柱を配置している。前面道路側をブレースの無い開放的な構成とするために、スパンを6m以内に抑え、計算ルート1-1としてブレース位置の制約を無くした。柱はサッシ方立に近い寸法の角型鋼管75x75を基本とし、梁はH148x100とした。屋根形状は高架梁ハンチと屋根の干渉を避けながらも、天井高さを稼ぐために山型とした。基礎は建物直下の高架基礎に負担をかけない全体荷重10KN/m2以下とし、荷重が均一となるようマットスラブとした。
深い軒を介して保育園と街を繋いだ。軒がつくる安心感の為か、大胆に街に開きながらも不思議と守られた場所になった。園舎に沿って植えられた四季折々の草花を楽しみにしている街の人も多い。道を歩けば絵巻物のように保育園の日常が垣間見え、自然とコミュニケーションが交わされる下町的な距離感の保育園が生まれた。
■建築概要
題名:町屋高架下保育園
所在地:東京都荒川区荒川
主要用途:保育所
園児定員:60名
設計監理:秋山隆浩建築設計事務所+サイドバイサイド一級建築士事務所
担当:秋山隆浩、森山ちはる
建築施工:塚本建設
担当:北山正美、金子守
内装施工:アミックス
担当:重森謙彰、船渡川功
構造設計:TECTONICA
担当:鈴木芳典
設備設計:環境エンジニアリング
担当:成田賛久、川村光
植栽:温室
担当:塚田有一
カーテン:NUNO
担当:堤有希
遊具:中村製作所
担当:金子勤 岩満恭大
構造:鉄骨造
階数:地上1階
敷地面積:737.79m2
建築面積:460.46m2
延床面積:397.81m2
設計期間:2016年11月~2017年6月
施工期間:2017年8月~2018年1月
竣工年月:2018年1月
写真:石田篤、伊藤嘉朗、秋山隆浩建築設計事務所
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外構・床 | 床 | 樹脂デッキ
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外装・壁 | 壁 | ガルバリウム鋼板 t0.5[角波 720型 h15]
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外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板 t0.4 立平葺
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外装・屋根 | 軒天 | ヒノキ化粧合板 t12木材保護塗装
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外装・建具 | 建具 | アルミサッシ[EXIMA 31](YKK AP)
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外装・その他 | 柱 | 耐火塗装[SKタイカコート](エスケー化研)
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外装・その他 | 金網 | ひし形金網[アルミ合金メッキ鉄線](小岩金網)
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内装・床 | 保育室床 | 複合フローリング t12
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内装・壁 | 保育室壁 | 桧ストランドボード不燃タイプ t6.3 ST塗装(エスウッド)
ウッドチップ壁紙デュブロン塗装[オガファーザーDFFGスモール](イケダコーポレーション)
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内装・天井 | 保育室天井 | シナ合板 t5.5
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内装・床 | 事務室床 | 複合フローリング t12
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内装・壁 | 事務室壁 | ビニルクロス(リリカラ)
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内装・天井 | 事務室天井 | ビニルクロス(リリカラ)
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内装・床 | 調理室床 | ビニル床シート
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内装・壁 | 調理室壁 | ケイ酸カルシウム板 t6 AEP
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内装・天井 | 調理室天井 | ケイ酸カルシウム板 t6 AEP
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