空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く敷地南側から外部展示スペースを見る。 photo©太田拓実
空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く西側外観 photo©太田拓実
空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く外部展示スペースから「わら家」を見る。(わら家は、デザイン監修:空間構想、設計:オクタント建築都市研究所) photo©太田拓実
空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く「流れ坂」と屋根 photo©太田拓実
空間構想が設計した、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」です。
屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設です。建築家は、場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停しました。また、屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描いています。施設の公式ページはこちら。
四国の民家を収蔵し後世に伝える、日本有数の屋外ミュージアムである「四国村」の入口と出口をどうデザインするか、というプロジェクトである。民家を目にする機会が少ない現代における四国村の意味とは何か、そもそも建築を建てるべきなのか、建築が必要だとすれば何のためか、という「建築以前」の議論だけで1年以上を費やした。
最終的には、北側に彫刻家・流政之氏の壮大な作品である「流れ坂」、南側には古い民家を移築した「わら家」、東側には神戸から移築した古い洋館である「異人館」という、この場所に存在する数々の資源を結びつける位置に敷地を定めた。設計を始める前提から議論できたことは、建築の質を決める上で非常に重要な過程であった。
当初は別々のものとして存在していたこれらの「敷地資源」を立体的に接続し、この場所の潜在的な価値を空間として現前させるため、まず地形を改変している。具体的には、高低差のある「わら家」と「流れ坂」の間をできる限り緩やかな勾配とし、新たな地形の中に「おやねさん」を新築すると同時に、南に面していた「わら家」の向きを空間的に反転するよう改修し、既存の資源の関係性を空間的に調停しなおした。
さらに、南側は人の出入りに応じて軒の高さを変化させ、北側は流れ坂の勾配に対応する軒の高さとしなくてはならない。
棟の高さと、南北それぞれの軒の高さが変化しながら全て異なるため、47組の木の合掌はRCの梁を支点に勾配や寸法が変化し、シンプルな構造形式でありつつも、全体としては生き物のような有機的なシルエットとなった。
以下の写真はクリックで拡大します
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く鳥瞰 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く鳥瞰 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く「わら家」から見る。(わら家は、デザイン監修:空間構想、設計:オクタント建築都市研究所) photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く敷地南側から外部展示スペースを見る。 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く西側外観 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く「流れ坂」と屋根 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く「流れ坂」と屋根 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く西側外観 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く西側ファサード詳細 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く外部展示スペースから「わら家」を見る。(わら家は、デザイン監修:空間構想、設計:オクタント建築都市研究所) photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く外部展示スペースとチケット売り場 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く南側ファサード photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く1階、ショップ photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く1階、ショップから「わら家」を見る。 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く2階 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く2階から「異人館」方向を見る。 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く2階、夜景 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く外観、夜景 photo©太田拓実
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く配置図兼1階平面図 image©空間構想
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く断面図 image©空間構想
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空間構想による、香川・高松市の「四国村ミウゼアム『おやねさん』」。屋外博物館の入口に建つチケット売場等を備えた施設。場の“潜在的価値”の現前を目指し、周辺の“資源”を繋ぐ様に地形の改変と新築を行い関係性を“空間的に”調停。屋根は表と裏の環境と呼応して“有機的”形状を描く断面詳細図 image©空間構想
以下、建築家によるテキストです。
空間を介した関係性のデザイン
四国の民家を収蔵し後世に伝える、日本有数の屋外ミュージアムである「四国村」の入口と出口をどうデザインするか、というプロジェクトである。民家を目にする機会が少ない現代における四国村の意味とは何か、そもそも建築を建てるべきなのか、建築が必要だとすれば何のためか、という「建築以前」の議論だけで1年以上を費やした。
最終的には、北側に彫刻家・流政之氏の壮大な作品である「流れ坂」、南側には古い民家を移築した「わら家」、東側には神戸から移築した古い洋館である「異人館」という、この場所に存在する数々の資源を結びつける位置に敷地を定めた。設計を始める前提から議論できたことは、建築の質を決める上で非常に重要な過程であった。
当初は別々のものとして存在していたこれらの「敷地資源」を立体的に接続し、この場所の潜在的な価値を空間として現前させるため、まず地形を改変している。具体的には、高低差のある「わら家」と「流れ坂」の間をできる限り緩やかな勾配とし、新たな地形の中に「おやねさん」を新築すると同時に、南に面していた「わら家」の向きを空間的に反転するよう改修し、既存の資源の関係性を空間的に調停しなおした。
敷地は源平の合戦でも有名な屋島の麓にあり、国の史跡・天然記念物に指定されているため基礎を深く掘ることができず、1階部分をRCとして建物の剛性を高めたうえで2階の木架構を構成している。東西で階数が変化する計画であるため、求められる屋根の高さが異なる。
さらに、南側は人の出入りに応じて軒の高さを変化させ、北側は流れ坂の勾配に対応する軒の高さとしなくてはならない。
棟の高さと、南北それぞれの軒の高さが変化しながら全て異なるため、47組の木の合掌はRCの梁を支点に勾配や寸法が変化し、シンプルな構造形式でありつつも、全体としては生き物のような有機的なシルエットとなった。
西側のファサードには、東日本大震災で被災した南三陸の遠藤家住宅の木材を利用している。300年の歴史を有する古材は角が欠けたりして大きさも形も異なるが、時間が生み出した1本1本の個性を利用して光が漏れるステンドグラスとして再生させた。
この建築は、四国村に入る人々に情報を提供すると同時に,出てくる人たちに民家にまつわるエピソードを紹介する場所となっている。
屋外ミュージアムの入口と出口の体験を編集することで、民家を通した四国という文化の理解に貢献したいと考えた。
なお、この建築は、瀬戸内国際芸術祭の作品の1つにもなっており、国内外の多くの方に四国の暮らしを伝える場所となっている。
■建築概要
題名:四国村ミウゼアム「おやねさん」
所在地:香川県高松市屋島中町91
全体計画監修:空間構想
建築設計:空間構想
構造設計:KAP
設備設計:明野設備研究所
広場設計:EAU
施工:鹿島建設 四国支店
敷地面積:54878.23m2
建築面積:377.81m2
延床面積:420.38m2
階数:地上2階
構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造+木造
工期:2021年4月~2022年4月
写真:太田拓実
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題名:「わらや」改修
デザイン監修:空間構想
設計:オクタント建築都市研究所
構造:川﨑構造設計
設備:四電工
施工:藤木工務店