SHARE 長坂大 / Megaの設計による、京都市左京区岩倉の分譲住宅「composition colors iwakura」の特設サイトが公開。個々の住宅の豊かな居住環境の構築に加えて、街区全体の美観等も考慮したプロジェクト。サイトでは計画の詳細や設計者のインタビュー等を掲載。資料請求・来場予約・オンライン相談も可能
長坂大 / Megaの設計による、京都市左京区岩倉の分譲住宅「composition colors iwakura」の特設サイトが公開されています。個々の住宅の豊かな居住環境の構築に加えて、街区全体の美観等も考慮したプロジェクトです。またリンク先のサイトでは建築計画の詳細や設計者のインタビュー等が掲載されています。加えて、資料請求・来場予約・オンライン相談も可能です。本プロジェクトの事業主は京都を拠点とする山中商事です。【ap・ad】
長坂大 略歴
1960年 神奈川県生まれ、1982年 京都工芸繊維大学住環境学科卒業 松永巌・都市建築研究所、1985年 アトリエ・ファイ建築研究所 原広司(建築家/東京大学名誉教授)に師事、1989年 京都工芸繊維大学造形工学科助手、1997年 学位論文「漁村集落における屋外空間の研究」 博士号取得(東京大学) 日本建築学会会員、2003年 奈良女子大学人間環境学科准教授、2008年 京都工芸繊維大学デザイン・建築学系 教授 現在に至る
受賞
1990年 SDレビュー 90(1席)鹿島賞、1992年 環境芸術大賞 92(1席)環境芸術大賞、1996年 ふるさとの顔づくり設計競技(1席)建設大臣賞、2003年 作品選集2003、2006年 作品選集2006、2009年 神奈川建築コンクール 一般建築物部門 優秀賞、2010年 神奈川建築コンクール 住宅部門 優秀賞、2011年 第36回北海道建築奨励賞 作品選集2011、2012年 京都デザイン賞 京都市長賞 作品選集2012、2014年 作品選集2014、2015年 第13回関西建築家大賞
各住戸のプランにおいては、隣家との相互関係を中心に、敷地境界の塀や植栽の扱い方、居室の窓の位置関係、比叡山への眺望、風の通路、バックヤードの確保等々を共通事項として提案している。ここではその中から、以下の2つを説明しようと思う。
「南北の庭」
日本の多くの家が「南の庭」最優先で建てられているが、温暖化が進む現状も踏まえ、もう少し北側その他の庭を検討して良いように思う。今回の敷地はすべて第三種風致地区に属し、建ぺい率は40%なので、必然的に一定面積の庭が生じる。そこでこの計画案では、全ての住宅に南北二つの庭を設けて植栽を施し、南北の室内から四季の移ろいが感じられ、風が通り抜けるようなプランを提案した。北側に庭を取ることで、その北側隣家の南側環境条件も格段に良くなっている。「駐車場」
住宅のファサードは駐車場という状態をいかに避けるか、これも現代住宅の課題だろう。2台の駐車場を前提としながら、駐車の向きや高木との位置関係を十分吟味し、道路沿いにできる限り緑陰が与えられるように計画した。庭の奥行きと駐車場との関係も十分検討されている。車は1台でよいという施主ならさらに豊かな庭や緑地が得られるだろう。
以下の写真はクリックで拡大します
長坂大 / Megaによる「composition colors iwakura」の解説
京都・岩倉に建設予定の14戸の「売建て住宅」計画である。
「建売り」や「売建て」という呼び名は、どちらかというと質のよくない住宅を指すイメージがあるが、これらは本来販売形式だけを示す言葉であって、質の良し悪しとは関係ない。一方、そのような先入観のせいで、「建売り」や「売建て」という形式の長所は見落とされているように思う。個別の施主が宅地を購入して自分の都合だけで住宅を建てていくより、事業主が街全体を見渡して、建物の形状や開口部、庭等の関係を相互に配慮しながらバランスよく設計して建設したほうが、全居住者の満足度も高く、事業主の利益率も高い住宅地となる可能性がある。
「composition colors iwakura」は合計3308㎡の元京都市営住宅用地を事業主が取得してスタートしたものである。一般的な「売建て住宅」の条件からスタートはしているが、以下のような前向きな提案ができたと思っている。
「南北軸の区画割り」
切妻屋根のように一部が高い屋根形状を採用する可能性がある地域では、敷地が南北軸と傾いていると北側斜線制限との関係で不利になる。この街区も南北軸と約8.5度振れているため例外ではない。このことと、新興住宅地の街並みが、区画割りの単調さによって多様性が失われがちになることを同時に打開する手法として、南北軸を基本とする区画割りを試みた。結果的に発生する様々な台形敷地のかたちは、長方形よりメリットのある住戸プランとして活用され、そのことから生じる各住戸の相違性は街区全体の豊かさに繋がっている。
各住戸のプランにおいては、隣家との相互関係を中心に、敷地境界の塀や植栽の扱い方、居室の窓の位置関係、比叡山への眺望、風の通路、バックヤードの確保等々を共通事項として提案している。ここではその中から、以下の2つを説明しようと思う。
「南北の庭」
日本の多くの家が「南の庭」最優先で建てられているが、温暖化が進む現状も踏まえ、もう少し北側その他の庭を検討して良いように思う。今回の敷地はすべて第三種風致地区に属し、建ぺい率は40%なので、必然的に一定面積の庭が生じる。そこでこの計画案では、全ての住宅に南北二つの庭を設けて植栽を施し、南北の室内から四季の移ろいが感じられ、風が通り抜けるようなプランを提案した。北側に庭を取ることで、その北側隣家の南側環境条件も格段に良くなっている。
「駐車場」
住宅のファサードは駐車場という状態をいかに避けるか、これも現代住宅の課題だろう。2台の駐車場を前提としながら、駐車の向きや高木との位置関係を十分吟味し、道路沿いにできる限り緑陰が与えられるように計画した。庭の奥行きと駐車場との関係も十分検討されている。車は1台でよいという施主ならさらに豊かな庭や緑地が得られるだろう。
最後にもう一つ「販売条件」について付言しておきたい。一般的に「売建て」住宅は、施主の要望に応じて設計案を適宜変更できるところにメリットがある。しかしこの計画では、一つの住戸に大きな変更を加えると隣家や街区全体のバランスが崩れてしまう恐れがある。そこで事業主と私たちはこの件について相談し、各住戸の外形をはじめ、塀の建て方、植栽の考え方等、近隣との相互関係が重要なものについては、一定の制限を設けることにした。建築協定のような強い規制ではないが、結果的に入居者の居住環境が守られる内容であることを丁寧に説明することにしたのである。
2023年9月、モデルハウスとなる2軒が着工した。