守谷僚泰+池田美月 / OBJECTAL ARCHITECTSが設計した、長野・小布施町の店舗兼住宅「S House」です。
景観条例も掛かる農地の多い地域に計画されました。建築家は、風景に属しつつ“象徴性”も備えた存在を目指し、各部屋へ片流れ屋根の付与を決めて“パズル”の様に組上げるプロセスで外観を構築しました。また、内部は部屋毎に異なる空間が展開する様に作られました。
長野県小布施町に建つ、小さなカフェを併設した住宅である。
敷地は市街化調整区域の一角で、周囲を山、栗畑、ビニールハウス、農家住宅に囲まれた密度の低い農地の中に位置している。小布施町は景観条例により勾配屋根の連なる伝統的な集落の保存を図っており、建築形態と色調への配慮が求められた。その一方で、カフェという、敷地周辺の文脈に新たに加わることとなるプログラムに相応しい象徴性を与えることが必要だと考えた。
風景を構成する屋根の連続体に属しながらも、その大きなシステムに生じたノイズのような建築を目指したいと考えた。そしてその風景との連続/断絶の体験が、内部空間における体験とつながっているような、そんな建築の生成の在り方がないか模索した。
具体的には、住宅を構成する一つ一つの部屋に片流れの屋根を与え、3×3のグリッドの上で回転させながら寄せ集めることで全体を作ることにした。それぞれの部屋には異なる幾何学、表層や開口を与え、部屋から部屋へと移動するごとに異なる空間が展開するような構成とした。
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以下、建築家によるテキストです。
長野県小布施町に建つ、小さなカフェを併設した住宅である。
敷地は市街化調整区域の一角で、周囲を山、栗畑、ビニールハウス、農家住宅に囲まれた密度の低い農地の中に位置している。小布施町は景観条例により勾配屋根の連なる伝統的な集落の保存を図っており、建築形態と色調への配慮が求められた。その一方で、カフェという、敷地周辺の文脈に新たに加わることとなるプログラムに相応しい象徴性を与えることが必要だと考えた。
風景を構成する屋根の連続体に属しながらも、その大きなシステムに生じたノイズのような建築を目指したいと考えた。そしてその風景との連続/断絶の体験が、内部空間における体験とつながっているような、そんな建築の生成の在り方がないか模索した。
具体的には、住宅を構成する一つ一つの部屋に片流れの屋根を与え、3×3のグリッドの上で回転させながら寄せ集めることで全体を作ることにした。それぞれの部屋には異なる幾何学、表層や開口を与え、部屋から部屋へと移動するごとに異なる空間が展開するような構成とした。
風景からモチーフを切り取り、編集し、パズルのように組み上げていく。無邪気な操作により立ち上がった建築は、周囲と緩やかに関わりながらも、同時に異質な空気感で場を変容させる。参照する対象に敬意を払いながらもその解釈の解像度を意識的に操作することで、緊張感のある対話を場所と取り結ぶことができたのではないかと思う。
■建築概要
題名:S House
所在地:長野県上高井郡小布施町
主用途:住宅・飲食店
建築設計・監理:OBJECTAL ARCHITECTS 担当:守谷僚泰、池田美月
構造設計:株式会社KAP 担当:濱野友徳
施工:株式会社鎌倉材木店 担当:浦野肇
厨房設計・施工:テクノ・フードシステム株式会社 担当:赤松茂利
構造・規模:木造、地上2階
基礎:ベタ基礎
最高高さ:8.00m
軒高:7.80m
地域地区:市街化調整区域、景観形成重点地区
道路幅員:北6.0m
敷地面積:474.78㎡
建築面積:78.07㎡
延床面積:104.01㎡
建蔽率:16.44%(許容60%)
容積率:31.46%(許容100%)
設計期間:2021年~2021年12月
工事期間:2022年4月~2022年12月
竣工:2022年12月
撮影:楠瀬友将