馬場兼伸 / B2Aarchitectsが設計した、東京・武蔵小金井市の店舗「高架下のベーカリー」です。
高架下整備の一環として細長い敷地に計画されました。建築家は、長大な文脈全体を対象とした創造を目指し、高架と付帯物の関係性と同様の“質”を備えた建築を志向しました。そして、一般建材が“場当たり的”に貼り付いている様な外観を意図的に作りました。店舗の場所はこちら(Google Map)。屋号は「キィニョン 武蔵小金井ののみち店」です。
JR中央線武蔵小金井駅と東小金井駅間の高架下に建つ地元ベーカリーの工場と店舗。
鉄道の高架化で生まれた新たな場所の開発は専門の会社が担っていて、駅近傍では商業中心ですが、駅間では地域との関係を重視した柔軟な取り組みを行って、かつて南北に断絶を生んでいた鉄軌道を地域に寄り添う場所とするため、周辺環境に応じた機能を誘導し、合わせて遊歩道やポケットパークの整備を進めています。
敷地は高架下なので奥行き10m×長さ100mほどと細長く、東側は交差点、北側が道路、南側隣地では新市庁舎建設の計画が進んでいました。交差点に面してポケットパークの整備が決まっていて、西側は搬入の車寄せになるため、どの面にも裏表が定めづらく、東西にはどこまでも高架下が続いているという状況でした。
ここでの「高架」は全てに先立つ絶対的存在。
俯瞰すれば全体的にスカスカで、色々なものがそこに取り付いたり挟まったり転がったりしているように見えます。建物にこのような質を生みだす設計ができれば、巨大な高架と小さな建物という対比を避けられるし、この長大なコンテキスト全体を対象にできるのではないかと考えました。
設計に当たっては、プレファブ工法と呼ばれる軽量鉄骨造の架構を標準モジュールに忠実に、かつ高架に対して勝ち負けがないように配置して、周辺でよく使われている建材(ALC版、角波鋼板、一文字葺き鋼板、大波鋼板)がそこに場当たり的に貼り付いているような見え方を目指しました。
屋根を3分割して勾配を南北にスイッチしたり、外壁を架構からずらして動きを作っていますが、これによって南北に裏表が生まれず、売場へのアプローチや広場とつながるデッキ、お客さま用の駐輪スペース、従業員用のエントランスなどを上手く作ることができました。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
入れ子の架構とスキマだらけの全体
JR中央線武蔵小金井駅と東小金井駅間の高架下に建つ地元ベーカリーの工場と店舗。
鉄道の高架化で生まれた新たな場所の開発は専門の会社が担っていて、駅近傍では商業中心ですが、駅間では地域との関係を重視した柔軟な取り組みを行って、かつて南北に断絶を生んでいた鉄軌道を地域に寄り添う場所とするため、周辺環境に応じた機能を誘導し、合わせて遊歩道やポケットパークの整備を進めています。
敷地は高架下なので奥行き10m×長さ100mほどと細長く、東側は交差点、北側が道路、南側隣地では新市庁舎建設の計画が進んでいました。交差点に面してポケットパークの整備が決まっていて、西側は搬入の車寄せになるため、どの面にも裏表が定めづらく、東西にはどこまでも高架下が続いているという状況でした。
ここでの「高架」は全てに先立つ絶対的存在。
俯瞰すれば全体的にスカスカで、色々なものがそこに取り付いたり挟まったり転がったりしているように見えます。建物にこのような質を生みだす設計ができれば、巨大な高架と小さな建物という対比を避けられるし、この長大なコンテキスト全体を対象にできるのではないかと考えました。
設計に当たっては、プレファブ工法と呼ばれる軽量鉄骨造の架構を標準モジュールに忠実に、かつ高架に対して勝ち負けがないように配置して、周辺でよく使われている建材(ALC版、角波鋼板、一文字葺き鋼板、大波鋼板)がそこに場当たり的に貼り付いているような見え方を目指しました。
屋根を3分割して勾配を南北にスイッチしたり、外壁を架構からずらして動きを作っていますが、これによって南北に裏表が生まれず、売場へのアプローチや広場とつながるデッキ、お客さま用の駐輪スペース、従業員用のエントランスなどを上手く作ることができました。
このベーカリーは多摩地域で6店舗を展開する人気店なのですが、本計画で移転した国分寺市の本店は一号店でターコイズブルーに塗装した外壁や、歴代スタッフがDIYをかさねた販売棚やポップ、手縫いのランプシェードなど細やかに手が加えられ続けて生まれた魅力的なお店でした。
こういった質が生まれ育まれる場となるように、色やパターンを継承しながら、2次的3次的な仕上げを喚起し、受け入れ、引き立てるように、しっかりしたルールとラフさ、そして愛らしさを兼ね備えた内装にすることを意識しています。
売場の什器には素焼きタイルや現場研ぎのテラゾーなど、パンの製造工程を意識した素材を選びました。売り台のタイル目地からはスチールフラットバーを立上げてフレームが組まれていて、コロナ対応のアクリルガードやPOP受けとして活用されています。ちなみにこの収まりは南側の外壁にも採用していて、市庁舎の完成後にアートワークを取り付ける予定です。
■建築概要
作品名:高架下のベーカリー
所在地:東京都武蔵小金井市緑町5-4-35
建築主:株式会社JR中央ラインモール(本体)、株式会社キィニョン(内装)
意匠設計:ビーツーエーアーキテクツ株式会社 担当/馬場兼伸、徳竹美月
電気設備設計:有限会社EOS plus
機会設備設計:ジーエヌ設備計画
施⼯:立川ハウス工業株式会社(本体)、タツミ建設株式会社(内装)
家具:ニュウファニチャーワークス
カーテン:オンデルデリンデ
サイン:高い山
構造:軽量鉄骨造
階数:地上1階
敷地⾯積:797.29 m2
建築⾯積:287.19m2
延床⾯積:277.94 m2
設計:2019年1⽉~2020年3⽉
施⼯:2020年4⽉~2020年11⽉
竣工:2020年11月
写真:山岸剛