関谷涼太 / タソ建築アトリエが設計した、愛知・知多郡の住宅「素材暮らし」です。
庭のある家で育った施主家族の為に計画されました。建築家は、住み手と共に“変化し育っていく庭”を追求し、茶室における“寄付”の様な公私が混在する庭園空間を持つ建築を考案しました。また、内と外の一般的な在り方を反転させて一体感も生み出すことも意図されました。
敷地は公営の森林公園に面する。
奥に行くにつれてせり上がったこの森林は、広葉樹と針葉樹が乱立した季節の感じられる豊かな環境。
そのすぐ隣には保育園があり、送迎の時間帯には手を繋いだ親子の姿が樹々の下に賑わう。
施主は設計当初より、庭を求めた。
庭のある家で育ち、自らの子の成長にもまたその思い出を重ねる施主の姿から、 家族とともに変化し育っていく庭の在り方として、石と木の素材による空間を提案した。
アプローチから樹木による目隠しを介してそのまま中庭へと続く。
考えたのは、茶室で言うところの「寄り付き」のようなプライベートとパブリックが混在する空間。
文字通り家族や友人が寄り付く姿を想像しながら、座る・歩く・置くといったそれぞれの用途になる縁側や石を計画した。可能な限り素材そのままの姿を尊重し、樹脂等の変化する様の異なるものは排除した。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は公営の森林公園に面する。
奥に行くにつれてせり上がったこの森林は、広葉樹と針葉樹が乱立した季節の感じられる豊かな環境。
そのすぐ隣には保育園があり、送迎の時間帯には手を繋いだ親子の姿が樹々の下に賑わう。
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施主は設計当初より、庭を求めた。
庭のある家で育ち、自らの子の成長にもまたその思い出を重ねる施主の姿から、 家族とともに変化し育っていく庭の在り方として、石と木の素材による空間を提案した。
アプローチから樹木による目隠しを介してそのまま中庭へと続く。
考えたのは、茶室で言うところの「寄り付き」のようなプライベートとパブリックが混在する空間。
文字通り家族や友人が寄り付く姿を想像しながら、座る・歩く・置くといったそれぞれの用途になる縁側や石を計画した。可能な限り素材そのままの姿を尊重し、樹脂等の変化する様の異なるものは排除した。
構造接合部では金物使用は避け、込栓鼻栓といった技術を現した。
庭に落とした柱は石にひかりつけ、素材が強調される美しいディテールを求めた。
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石は三重県の集石場まで何度も足を運んだ。
当初、探していたのは目を引く面白みのある石。
空を隠すほどに高く積み上げられた石をよじ登りながら一つひとつ探していった。 いくつかピックアップしたところで、理屈で求めていた石と実際に選ぶ石、自らの感覚にギャップがある事に気がついた。
選んでいたのはわかりやすい面白さではなく、普遍的で2回3回見ないとその良さがわからないような控えめとも言える個性を持つ石ばかりだった。想像と自然物の違いを学んだ。目を引く面白みのある石の力を利用して建物を特徴づけたところで、それは強欲なことのように思えた。
結果、空間のスケールと建物の素材に合う姿形の石を集めることができた。
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道路からの視線をカットしながら、前面に広がる豊かな森林を取り込むことができる条件を探った。
森林の中でも視界に入れたい樹木をいくつか決め、その正確な位置と高さを測量して平面・断面と照らし合わせながら適切な開口部を設計した。道路に面する真壁には桁下に連続する開口が設けられ、それらが森林を切り取り、屋内からの視界に緑の帯となって現れる。
大屋根の開口部からは高さのある樹木が覆い被さってくる環境を感じる。
設計には角度とレベル差、距離感を利用した。
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外と内のつながりについて、天井や床を揃えるといった寸法的な手法というよりは、素材の扱いによってまた別の、情緒的な関係性を作れないかと考えた。
きっと誰もが元々持っている「外=荒」「内=穏」といったイメージに対して、それを部分的に逆にしたらどんな繋がりや錯覚が生まれるのか。
「当たり前に荒々しいけどふいに少し穏やかな外」と「穏やかで静かだけどどこか荒々しい内」という矛盾同士を隣接させることで、互いの矛盾を引き込み合い、庭と室内に一体感のようなものが生まれることを期待した。
木材は全て杉だが、「外=岐阜県産赤身」「内=屋久島産白黒源平」とした。屋久島の杉は岩盤の油分を吸い上げ育ち、黒くたくましい表情が特徴。張り方も変え、「外=定尺張・真壁横張」として自然界にはない規律性を、「内=すだれ張」としてブツっとした荒っぽさを、それぞれに役割を担わせた。
素材それぞれの経年変化が今後どう反応してくるのかも楽しめるように思う。
■建築概要
題名:素材暮らし
所在地:愛知県知多郡
主用途:住宅
設計:関谷涼太 / タソ建築アトリエ
施工:株式会社ライフタップ
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:140.67㎡
建築面積:69.45㎡
延床面積:110.02㎡
設計期間:2022年7月~2023年1月
工事期間:2023年2月~2023年10月
竣工:2023年10月
写真:楠瀬友将
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺
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外装・壁 | 外壁 | 杉材
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外装・建具 | 外部建具 | 杉材製作
複合サッシ
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内装・床 | 床 | 杉材・モルタル金鏝仕上
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内装・壁 | 壁 | 杉材
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内装・天井 | 天井 | 杉材・桧合板
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内装・建具 | 内部建具 | 杉材製作
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外構・床 | 床 | 石
洗い出しコンクリート
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