川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、庭(南)より見る。 photo©長谷川健太
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、書斎 photo©長谷川健太
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、手前:食堂、奥:居間 photo©長谷川健太
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、廊下 photo©長谷川健太
川口裕人 / 1110建築設計事務所が設計した、長野・上田市の「101年目の家」です。
築100年の古民家を減築改修する計画です。建築家は、“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向しました。そして、構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担います。
長野県上田市郊外にある築100年の古民家を次の100年に残すべく減築+改修し、東京で働く施主の週末住宅兼・施主のご両親の終の棲家として再生した。
当初は既存建物を解体する予定だったが、現地を訪れて感じた「のどかさ」を引き継ぐこと、ふと見上げた梁に書かれた上棟の日付がちょうど100年目であったことが決定打となり、残された古民家を活かす方針となった。
100年の時間をかけて増改築された古民家はツギハギ状態であったため、生活に必要な面積を割り出し余剰部分は減築し、既存の構造体を確認しながら100年前の骨格をなるべく復元していくように古民家を丁寧にほどいていった。そして、地元の宮大工の知見を借りながら伝統工法による軸組の特性を活かした構造補強を施し、壁の少ない柔構造ならではの開放的なプランを実現している。
将来的には施主の専用住宅兼ゲストハウスや地域に開放される私設ギャラリーとして活用するなど、時間を経てプログラムが変化していくことを想定し、世代を超えて地域に根付く地方集落のコモンズとしての住宅の在り方について模索した。
南北それぞれに異なる魅力を持つ敷地環境に対し、南側にリビングダイニング/北側に書斎を既存躯体をなぞるように配置した。
また、南側の明るくまとまりのある庭/北側の水平に広がる山並みを住宅内に適切なスケールで取り込むべく、南北それぞれの異なるプロポーションの水平連続窓を設けている。
結果として現れた東西にリニアな平面の中央に住宅の新たな背骨となる長い棚壁を挿入している。
この棚は既存躯体の構造補強材という役割だけではなく生活と言う記憶の受け皿でもあり、南北2つの環境を相対化する物差しとして位置付けている。本棚にも水平連続窓を設けて風景を繋ぎ、住まい手のお気に入りのモノたちを通して、住まい手の記憶と南北の環境を融和させるシーンを挿入している。
以下の写真はクリックで拡大します
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、北側道路より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、北側道路より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、北側道路より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、南の庭側より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、庭(南)より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、庭(南)より見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、玄関側を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う外観、玄関部分を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、玄関 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、手前:食堂、奥:居間 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、居間 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、濡れ縁 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、濡れ縁 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、居間、棚壁を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、居間から食堂を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、居間から庭(南)を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、居間 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、左奥:食堂、右手前:居間 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、キッチン photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、食堂から書斎側を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、書斎 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、書斎から庭(北)を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、書斎 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階、食堂から玄関を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階から2階への階段 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階から2階への階段 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階から1階を見下ろす。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、廊下から小屋裏を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、廊下から小屋裏を見る。 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、小屋裏 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、廊下 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階、ゲストルーム photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う東側外観、夜景 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う北側外観、夜景 photo©長谷川健太
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う配置図 image©1110建築設計事務所
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う1階平面図 image©1110建築設計事務所
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う2階平面図 image©1110建築設計事務所
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う南側立面図 image©1110建築設計事務所
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、長野・上田市の「101年目の家」。築100年の古民家を減築改修。“ツギハギ状態”の既存に対して、余剰部分を減築して“100年前の骨格を復元”する様な設計を志向。構造補強としても機能する“長い棚壁”は住人の“記憶の受け皿”の役割を担う断面図 image©1110建築設計事務所
以下、建築家によるテキストです。
地方集落のコモンズとしての古民家
長野県上田市郊外にある築100年の古民家を次の100年に残すべく減築+改修し、東京で働く施主の週末住宅兼・施主のご両親の終の棲家として再生した。
当初は既存建物を解体する予定だったが、現地を訪れて感じた「のどかさ」を引き継ぐこと、ふと見上げた梁に書かれた上棟の日付がちょうど100年目であったことが決定打となり、残された古民家を活かす方針となった。
100年の時間をかけて増改築された古民家はツギハギ状態であったため、生活に必要な面積を割り出し余剰部分は減築し、既存の構造体を確認しながら100年前の骨格をなるべく復元していくように古民家を丁寧にほどいていった。そして、地元の宮大工の知見を借りながら伝統工法による軸組の特性を活かした構造補強を施し、壁の少ない柔構造ならではの開放的なプランを実現している。
将来的には施主の専用住宅兼ゲストハウスや地域に開放される私設ギャラリーとして活用するなど、時間を経てプログラムが変化していくことを想定し、世代を超えて地域に根付く地方集落のコモンズとしての住宅の在り方について模索した。
南北それぞれに異なる魅力を持つ敷地環境に対し、南側にリビングダイニング/北側に書斎を既存躯体をなぞるように配置した。
また、南側の明るくまとまりのある庭/北側の水平に広がる山並みを住宅内に適切なスケールで取り込むべく、南北それぞれの異なるプロポーションの水平連続窓を設けている。
結果として現れた東西にリニアな平面の中央に住宅の新たな背骨となる長い棚壁を挿入している。
この棚は既存躯体の構造補強材という役割だけではなく生活と言う記憶の受け皿でもあり、南北2つの環境を相対化する物差しとして位置付けている。本棚にも水平連続窓を設けて風景を繋ぎ、住まい手のお気に入りのモノたちを通して、住まい手の記憶と南北の環境を融和させるシーンを挿入している。
さらに書斎上部の既存軸組アラワシの小屋裏もひとつの環境として捉え、書斎の天井にも連続窓(アクリル天井)を設け、吹き抜けを介した立体的な繋がりを作り出し、空間に広がりと奥行きを与えている。北側の安定した柔らかな光は書斎のテーブルで反射し、天井の連続窓を通り、小屋裏と書斎天井の間でさらにバウンドし、吹き抜けを介して2階にまで光を拡散する。
また2階からは天井の連続窓と書斎の水平連続出窓まで視線が斜めに貫通し、北庭まで眺めることができ、ここでも生活と環境の融和を図っている。
不要な増築部を減築して元ある姿に戻し、既存躯体の特性を活かしながら構造体を修繕、新たな骨格と多くの水平窓を挿入する。
なるべく単純明快な所作とすること、写真や言葉では表出しにくい汎用性の高い空間とすることで、地域にとって参照しやすい改修モデルとなることを目指した。
■建築概要
題名:101年目の家
所在地:長野県上田市
主用途:専用住宅
設計:川口裕人 担当/武田紗里(元所員)
施工:建築工房市川+有限会社白鳳社寺
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:1,319.5㎡
建築面積:101.0㎡
延床面積:128.4㎡
設計:2020年12月~2021年4月
工事:2021年5月 ~2021年9月
竣工:2011年11月
写真:長谷川健太(OFP)
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
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外装・壁 | 外壁 | モルタル直抑え
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内装・床 | 床 | ラワン合板t12 半割の上、オイルステイン塗装
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内装・壁 | 壁 | ラワン合板 t5.5 オイルステイン塗装
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内装・天井 | 天井 | 構造表し
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