川久保智康建築設計事務所が設計した、東京・板橋区の集合住宅「板橋本町の長屋 CASABELLA」です。
第一種住居地域の高低差のある不定形な土地での計画です。建築家は、様々な与件に対し、敷地形状の“オフセット”と“天空率”で床面積と気積を確保する“スキップフロア”の建築を考案しました。また、本体から小さな量塊を拡張させ窓辺空間も作られました。
計画地は環状七号線から少し入った閑静な住宅街の一角にあります。
このあたりは第一種住居地域で建蔽率が60%程度、概ね2~3階建ての建物が並び、それほど広くない通りからのセットバックで、少しだけスカイラインが低く抑えられて続いています。
都市計画図にて定められたヴォリュームに対して、斜線規制の緩和措置である天空率を駆使することで、少しだけであってもその枠の外に拡げることができる。そしてそれがこのまちのなかで、個性的な姿として認識されるのではないかと考えたりしました。
不等辺五角形の高台地は南北の高低差が約2mあり、三方を道路で囲まれていました。複数の道路斜線によって斬り込まれる不利な状況は容易に想像できました。このような場所で賃貸住宅を考えるとき、変形地の有効利用や高低差のある接道状況から、スキップフロアによる長屋には様々な可能性があるように感じました。長屋なら住戸のエントランスを長い接道面に分散させた独立性の確保や逆に路面に開いた環境もつくりやすいと考えました。
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以下、建築家によるテキストです。
計画地は環状七号線から少し入った閑静な住宅街の一角にあります。
このあたりは第一種住居地域で建蔽率が60%程度、概ね2~3階建ての建物が並び、それほど広くない通りからのセットバックで、少しだけスカイラインが低く抑えられて続いています。
都市計画図にて定められたヴォリュームに対して、斜線規制の緩和措置である天空率を駆使することで、少しだけであってもその枠の外に拡げることができる。そしてそれがこのまちのなかで、個性的な姿として認識されるのではないかと考えたりしました。
不等辺五角形の高台地は南北の高低差が約2mあり、三方を道路で囲まれていました。複数の道路斜線によって斬り込まれる不利な状況は容易に想像できました。このような場所で賃貸住宅を考えるとき、変形地の有効利用や高低差のある接道状況から、スキップフロアによる長屋には様々な可能性があるように感じました。長屋なら住戸のエントランスを長い接道面に分散させた独立性の確保や逆に路面に開いた環境もつくりやすいと考えました。
建築物内部の面積をなるべく大きく確保しようとすれば、敷地形状をそのままオフセットした平面形状とすることが最も有効です。また、三方からの道路斜線を受けて上階が斬り込まれる不利な状況を解消するため、天空率計算による道路斜線の緩和制度を活用する必要がありました。
敷地形状のオフセット寸法と天空率計算による斜線緩和の2つを変数として、幾度となく繰り返し調整して計算することで、内部空間を少しずつ押し出すように拡大していきました。そして最終的には根幹となるヴォリュームに拡張して得たヴォリュームが張り出した様な形状に収束しました。ちなみに、この操作によって容積率はその限度に対して96.2%にまで迫っています。
そうして拡張された幾つかの小さなスペースは、窓辺での過ごし方の提案でもあります。それらはそれぞれ住まい手のライフスタイルが表れる場となり、さらにスキップフロアにより高い開放性と自由度をもって繋がることで、単なる住居としてだけでなく、スモールビジネスの拠点、店舗、アトリエなど、それぞれの個性を街に向けてアピールする空間となったら良いなと期待しています。
(川久保智康)
■建築概要
題名:板橋本町の長屋 CASABELLA
所在地:東京都板橋区清水町
主用途:長屋
設計:川久保智康建築設計事務所 担当/川久保智康、杉原由樹子、高野慧、近藤康之
構造:久米弘記建築構造研究所 担当/久米弘記
施工:有限会社山田建築
構造:RC造
階数:地上3階地下1階
敷地面積:98.85㎡
建築面積:62.40㎡
延床面積:225.81㎡
貸付面積:A住戸(地下1階・1階) 50.40㎡、B住戸(地下1階・1階) 60.19㎡、C住戸(2階・3階) 49.62㎡、D住戸(2階・3階) 52.45㎡
設計:2021年2月~2022年3月
工事:2022年4月~2024年1月
竣工:2024年1月
写真:傍島利浩