池田隆志+池田貴子 / design itが設計した、京都市の「金閣寺東の町家」です。
京町家を在宅勤務の施主の為に改修する計画です。建築家は、かつての“職住一体の豊かさ”も継承する為、既存空間の“役割”を可能な限り残す設計を志向しました。また、原型を留めない土間だけは新たな場として“モルタルで包まれた”リビングとしています。
金閣寺のほど近く、築95年の京町家を改修した住宅である。
かつて西陣には「織屋建」と呼ばれる織物職人の工房兼住居が建ち並び、この町家もその一つであった。
新しい家主はリモートワークにより自宅を仕事場とするが、近年増えつつあるそんな職住一体の暮らしは、ある意味で西陣と町家の歴史に深く根付く生活文化である。ならば町家の姿形だけでなく、生活と商いが混じり合う賑やかさや豊かさも引き継ぎたい。
したがって基本方針は「残せるものは残す」。それも古い建物の外見を残すだけでなく、かつてのミセノマ(商空間)は仕事場に、ダイドコ(台所)はキッチンに、といったように部屋の役割や町家らしい暮らしぶりも残す。
ただしもと織物工房だった土間だけは老朽化で原型を留めず、新たな場所として捉え直す必要があった。西陣町家の象徴である背の高い織機を置くために掘り下げられた土間。この半地下空間をそのままモルタルで包み、リビングと呼ぶことにした。
結果として一階には高さの違う三つの床ができた。床の高さが変われば意外なほど居心地も変わる。
ひとつながりの空間の中に生まれたいくつかの小さな居場所―糸屋格子から光がにじむ書斎、灯りのともる小さな食卓、そして竪穴住居のように掘り込まれたリビング。それらを季節や気分にあわせて渡り歩くような、気ままで懐かしい住まいである。
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以下、建築家によるテキストです。
町家文化を内包する「職住一体」の住まい
金閣寺のほど近く、築95年の京町家を改修した住宅である。
かつて西陣には「織屋建」と呼ばれる織物職人の工房兼住居が建ち並び、この町家もその一つであった。
新しい家主はリモートワークにより自宅を仕事場とするが、近年増えつつあるそんな職住一体の暮らしは、ある意味で西陣と町家の歴史に深く根付く生活文化である。ならば町家の姿形だけでなく、生活と商いが混じり合う賑やかさや豊かさも引き継ぎたい。
したがって基本方針は「残せるものは残す」。それも古い建物の外見を残すだけでなく、かつてのミセノマ(商空間)は仕事場に、ダイドコ(台所)はキッチンに、といったように部屋の役割や町家らしい暮らしぶりも残す。
ただしもと織物工房だった土間だけは老朽化で原型を留めず、新たな場所として捉え直す必要があった。西陣町家の象徴である背の高い織機を置くために掘り下げられた土間。この半地下空間をそのままモルタルで包み、リビングと呼ぶことにした。
結果として一階には高さの違う三つの床ができた。床の高さが変われば意外なほど居心地も変わる。
ひとつながりの空間の中に生まれたいくつかの小さな居場所―糸屋格子から光がにじむ書斎、灯りのともる小さな食卓、そして竪穴住居のように掘り込まれたリビング。それらを季節や気分にあわせて渡り歩くような、気ままで懐かしい住まいである。
■建築概要
題名:金閣寺東の町家
所在地:京都府京都市北区
主用途:専用住宅
設計:池田隆志+池田貴子 / design it 担当/池田隆志+池田貴子
施工:(株)アーキスタイル
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:60.50㎡
建築面積:45.06㎡
延床面積:76.08㎡
設計:2023年1月~2023年6月
工事:2023年7月~2024年1月
竣工:2024年1月
写真:design it