高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、東側道路より見る。左:江戸長屋、右:明治棟(登録有形文化財) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭を見る。(建築家による解説:現わしになった既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続して見える) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラス。(建築家による解説:既存から延長した形状の立体的なフレームに植物やカフェ席、日除け布などが絡まる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図俯瞰、西側より見る。(建築家による解説:谷中霊園の緑に囲まれた地域に開かれた庭) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureが設計した、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」です。
歴史ある花店を改修した文化的拠点の計画です。建築家は、文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向しました。また、新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図されました。店舗の場所はこちら(Google Map)。
また、本プロジェクトについての書籍『note。 花重リノベーション』の情報も末尾に掲載します。
谷中霊園の入口にある150年の歴史をもつ老舗花屋の改修計画。
経営難に直面していた歴史ある花屋を地元企業が運営ごと買取り、地域に開いた文化的拠点として蘇らせた。
登録有形文化財を含め、歴史的な佇まいや履歴を残しながら、これからも変化し続けることを許容する「動的な保存」によって、地域の文化を未来につなぐことを目指した。
「花重」は、営みと建物がともに残る数少ない事例である。計画にあたっては、何を残し何を変えるのかを概念的に整理した。
建築を生きた状態のまま保存するために、新旧という概念ではなく時間軸で構成を捉え直し、「核となる基本的な骨格」と「変化し続けるもの」が同時にある状態を目指した。
これまでの保存再生はオリジナルな状態を最上として復原・再現をする手法や、これまでの履歴を含んだ今の状態を維持する凍結保存などが多く行われてきた。特に石積みの文化においては、石のもつ時間軸の長さ故、対立的な表現を用いて新しく手を加える部分を明快にする手法が多く取られる。一方木造軸組建築は、木という材料の耐久性や加工のしやすさから、その時々のニーズに合わせて変わっていくことが出来る。
「花重」は江戸から昭和にかけての増改築の中で、古いものと新しいものが二項対立ではなく、オーバーラップしながら共存している状態を常に続けてきた。古くなった建築を壊して昔の姿のまま復元するでもなく、真新しい建築につくり変えるでもなく、その間の状態をキープしながら営みと建築が動き続けてきた。今回の改修計画も、これまでの動きの中の一つの段階であり、これからも生き続けていく状態を目指して「動的な保存」として計画した。
以下の写真はクリックで拡大します
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鳥瞰、西側より見る。(建築家による解説:奥に見える緑は谷中霊園) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図俯瞰、西側より見る。(建築家による解説:谷中霊園の緑に囲まれた地域に開かれた庭) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、東側道路より見る。左:江戸長屋、右:明治棟(登録有形文化財) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、1階、花店のスペース。(建築家による解説:中央のテーブルはフラワーアレンジメントの舞台にもなる) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、1階、つなぎ棟越しに戦前棟のカフェを見る。(建築家による解説:緑が映り込むガラス床下には大谷石積みの地下倉庫が見える) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図左:つなぎ棟、厨房、右:明治棟 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭を見る。(建築家による解説:現わしになった既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続して見える) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭側を見る。(建築家による解説:既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続する) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図屋外テラス。(建築家による解説:フレームの中で植物、床、階段、手摺など様々なエレメントが自由に振る舞う) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図屋外テラス。(建築家による解説:右手の戦前棟から外に出ることができ、カフェの屋外席として犬連れも楽しめる) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレームとスラブの詳細。(建築家による解説:テラスは上からボルト接合し、梁の上に載っているだけのような意匠とした) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図柱の足もとを見る。 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレーム越しに2階への階段を見る。(建築家による解説:曲線を描く手摺は地上に降りるとつる性植物の拠り所となる) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラス。(建築家による解説:既存から延長した形状の立体的なフレームに植物やカフェ席、日除け布などが絡まる) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラスから1階の屋外テラスを見下ろす。(建築家による解説:植物や人の居場所が混在している) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレーム・階段・テラスの詳細 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、フレームと戦前棟を見る。(建築家による解説:戦前棟と鉄骨フレームが連続する) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、2階、客席(建築家による解説:吹き抜けには日除け用の布がかかる。テラスの手すりが室内まで続いている) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図庭側から前面道路を見る。(建築家による解説:街へつながる路地) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、2階、従業員の為のスペース。(建築家による解説:既存を活かしながら復原的整備をした。窓の外に江戸長屋の屋根が見える) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図配置図(改修後) image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図1階平面図 image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階平面図 image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図断面図 image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鉄骨フレームダイアグラム image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図配置図(改修前) image©MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図改修前、東側全景 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図改修前、(建築家による解説:つぎはぎ状態の戦前棟外観。敷地奥に建っていた建物の解体後の様子) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図ジャッキアップ中の明治棟外観 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図接合部のモックアップ(梁と梁受け) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図接合部の原寸スタディ模型 photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図柱頂部の接合面の機械加工の様子。(紀陽工作所) photo©関拓弥
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鉄骨接合部(建て方試験時)。(建築家による解説:柱、梁受け、梁が誤差 0.1mmの精度で接合している) photo©関拓弥
以下、建築家によるテキストです。
谷中霊園の入口にある150年の歴史をもつ老舗花屋の改修計画。
経営難に直面していた歴史ある花屋を地元企業が運営ごと買取り、地域に開いた文化的拠点として蘇らせた。
登録有形文化財を含め、歴史的な佇まいや履歴を残しながら、これからも変化し続けることを許容する「動的な保存」によって、地域の文化を未来につなぐことを目指した。
「花重」は、営みと建物がともに残る数少ない事例である。計画にあたっては、何を残し何を変えるのかを概念的に整理した。
建築を生きた状態のまま保存するために、新旧という概念ではなく時間軸で構成を捉え直し、「核となる基本的な骨格」と「変化し続けるもの」が同時にある状態を目指した。
敷地には複数の建物があり、本計画が始まった時点では全7棟があった。今回の計画では計4棟を保存再生している(登録有形文化財の明治棟、その隣の江戸長屋棟、奥にあるつなぎ棟と戦前棟)。その他の棟は調査を踏まえて解体し、庭として地域に開いた。
時代の変化に合わせて辿ってきた履歴は、柱や梁に刻まれた痕跡として残っており、かつての空間構成が辿れるものとして保存した。また、各建物は時代ごとに異なる架構を持っているが、すべて寸尺の木造的寸法体系であり、建物群に通底する長い時間軸をもつ「核となる基本的な骨格」として架構を現すこととした。
これまでの保存再生はオリジナルな状態を最上として復原・再現をする手法や、これまでの履歴を含んだ今の状態を維持する凍結保存などが多く行われてきた。特に石積みの文化においては、石のもつ時間軸の長さ故、対立的な表現を用いて新しく手を加える部分を明快にする手法が多く取られる。一方木造軸組建築は、木という材料の耐久性や加工のしやすさから、その時々のニーズに合わせて変わっていくことが出来る。
「花重」は江戸から昭和にかけての増改築の中で、古いものと新しいものが二項対立ではなく、オーバーラップしながら共存している状態を常に続けてきた。古くなった建築を壊して昔の姿のまま復元するでもなく、真新しい建築につくり変えるでもなく、その間の状態をキープしながら営みと建築が動き続けてきた。今回の改修計画も、これまでの動きの中の一つの段階であり、これからも生き続けていく状態を目指して「動的な保存」として計画した。
時代ごとに分断されていた各棟をひとつながりの空間として連続的に感じられる構成にした。また、既存の架構を連続させるようにして新たな架構を庭へと伸ばした。新たな架構は鉄骨で既存木架構よりも現代的なプロポーションとした。
既存の建物群と隣接するにあたって、仮設的、暫時的なものではなく、時代を越えていく強度のある存在であることが必要だと考え、木造の仕口や継手のように組まれる乾式のボルト接合を採用している。かつての伝統的な木造架構が技術の粋を集めてつくられたように、現代の技術を駆使した極めて精度の高い機械加工による継ぎ手を実現することとした。
新たに加えるカウンターやカフェテーブルなどは、各時代を横断的につなぐ存在として設え、人や植物の居場所となる。これらの架構に取り付くエレメントが加わっていくことによって、新旧や屋内外、人と植物といった二項対立がなくなり、全体が連鎖的につながることを実現した。
■建築概要
題名:花重リノベーション
所在地:東京都台東区谷中
主用途:花屋、カフェ
設計:MARU。architecture
担当/高野洋平、森田祥子、諸星佑香、朝日啓仁(元所員)
施工:ヤマムラ(既存部)、雄建工業、紀陽工作所、ビーファクトリー(新設部)、アゴラ造園(外構)
構造:川端建築計画(既存部)、テクトニカ(新設部)、東京芸術大学
保存:たいとう歴史都市研究会
家具:藤森泰司アトリエ
照明:加藤久樹デザイン事務所
外構:SfG landscape architects
構造:既存部 / 木造(竹小舞土壁、補強部は荒壁パネル)、新設部 / 鉄骨造
階数:地上2階、一部地下1階
敷地面積:329.58㎡
建築面積:134.97㎡
延床面積:193.11㎡
設計:2020年11月~2021年12月
工事:2022年4月~2023年5月
竣工:2023年5月
写真:関拓弥
MARU。architectureによる書籍『note。 花重リノベーション』
以下の写真はクリックで拡大します
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 image courtesy of MARU。architecture
マル・アーキテクチャによる改修プロジェクト「花重リノベーション」における、その時々で「note。」という形でまとめた彼らの思考の断片を、1冊の書籍の中に散在させたドキュメント。
解体前から工事中、完成に至るプロジェクトの変遷を追った写真、協働者や同時代を生きる建築家との対話を通して、批評を取り込み、自分たちの思考を多面的に浮かび上がらせることを試みている。マル・アーキテクチャが目指す「変化し続ける動的な建築」について、その可能性を彼らが模索する様子が描かれた一冊。
note。 花重リノベーション
MARU。architecture
2024年7月17日刊行
著者:高野洋平+森田祥子
発行:マル・アーキテクチャ
写真・編集・デザイン:関拓弥
対談:平田晃久、山田紗子+鈴木心、金田充弘+鈴木芳典、藤森泰司+石橋亜紀、大野暁彦
寄稿:たいとう歴史都市研究会
定価:3200円+税
判型:B5判
頁数:360頁|全カラー