T/H 樋口耕介+瀧翠が設計した、東京・渋谷区の「小杉湯原宿・チカイチ」です。
商業施設“ハラカド”の地下階での計画です。建築家は、誰に対しても開かれた“公衆の場”を目指し、人々が同じ環境を共有して関われる“屋外の様な雰囲気”の空間を志向しました。そして、銭湯の各要素を分解して“道”を介して繋がる構成を考案しました。施設の場所はこちら(Google Map)。
原宿・神宮前の一等地に建つ商業施設に銭湯を作る。
その背景には、非日常な演出により消費される場ではなく、地域の日常に紐づいた体験の場が求められている。私たちは、来る人を選ばず、誰に対しても閉じない、公衆の場と呼べるような場所を作りたいと考えた。
拡散光に満ちた上空のようなものを広げる。頭上から豊富な光が降り注ぐ環境は、地下にありながら屋外のような雰囲気を醸し出す。居合わせた人々はお風呂に浸かりながら同じ環境を共有し、軒下の雨宿りのように刹那的な人とのつながりを生み出す。銭湯の諸要素は細かく切り分け、その間に道を通す。区画全体が銭湯のようにも見えるし、銭湯とその周りの町のようにも見える
この「どちらとでも取れる」という性質はこの場所全体に広がっている。屋外的な上空と屋内的な地上の設え、グレーの壁面に浮かぶ抽象的な光の窓や昔ながらの下駄箱、高い(ように感じる)天井や人に馴染む10cm角のタイルなど大小様々なスケール、多彩なテクスチャーが統一された色調であること。ばらばらな性質が、訪れた人それぞれの指向や記憶と共鳴し、きっかけとなって、この場所との結びつきを支えていく。